布一枚挟んだ隣で……前編
清一郎の部屋で また布一枚を天井から垂らして寝る二人。
清一郎が明かりを消して床につく。
寿樹は 1日何もしていないが 清一郎は 官僚の仕事をやり遂げて帰宅する。
いつも 疲れて直ぐに寝息が聞こえる。
今夜は、一息大きく深呼吸をしたかと思うと 布団から手だけ出てきて 寿樹の手を掴んだ。
「1日1回は触れないといけなかったですよね。」
そういえば、1日最低1回は、相手に触れて 会話をするよに心がければ お互いを知るきっかけになるのではないかと言った。
別に 眠いのを我慢して 1日1回を実行しろとは 言ってないのに 官僚とはこんなに律儀なものなのか?
「そんな約束したな。」
指先の冷たい 寿樹の手を温めるように覆う清一郎。
「段々 寒くなってきましたね。寒くないですか?」
「大丈夫だ。」
「もう少し 辛抱してくださいね。あと少しで寿樹様のお部屋をご用意出来ますから。」
「私の部屋など 要らぬのに……。母が許嫁の件を破棄してくれた以上 私は自由なのだぞ。」
「それで、いいと思います。お互い合わないまま継続させようとする方が惨いです。ボクはただ、寿樹さんに 心地良い環境を提供したいだけです。」
「多分、……。」
「はい。」
「おおかた私も世間知らずではあろうと思えども。 清一郎のような優しさで相手を受け入れようとする人間も 世に少なかろうとぞ思うぞ。」
「…ありがとうございます。今は 政治も男女の差を無くす時代となっています。
時代は変わって来ているから 寿樹さんの許嫁の話も無くなったのではないでしょうか?」
「あぁ、母も同じこと言っていたよ。」
「そうです、それが世間一般です。」
「お主との 許嫁の縛りが無くなったのだぞ。」
「あ、ボクは寿樹さんが自由に選択できる方がいいと思っていますよ。それは 初めから変わりません。だから ボクにお気遣い無用です。」
「とか言って、一番腹に思っているタイプだろ。」
清一郎は 少し焦ったように。
「兄とは 同じになりたくないと ずっと思ってました。兄の背中を見て 周りの評判を受けて 兄にはなるまいと肝に銘じてきました。」
「それは 良い事だ。」
二人は 笑った。
布団のすれる音がした。
清一郎が 布一枚をくぐり抜けて来た。
「寿樹さんと一緒に会話をするのは 楽しいです。」
そう言うと 布団ごと寿樹を抱きしめた。
「おやすみなさい。」
そのまま離れようとする清一郎を止めた寿樹。
「まて!」
清一郎は 振り返る。
「私にも 抱きしめさせてくれ。」
清一郎は 恥ずかしそうに今度は布団無しの寿樹の身体を抱く。
「スミマセン。」
「謝るな。」
この時、寿樹に清一郎のニオイを感じた。
この男とは 似ているようで 全く違う。
しっくりいくとは この事なのか?
血が近い事を毛嫌いする寿樹と 血が近い純潔を最も尊いと感じる清一郎は 何故か仲が良かった。




