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健太の日記  作者: 蔓草登上
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清一郎の童貞話


 外が真っ暗になってから 清一郎せいいちろうは帰って来た。

部屋に入って来る清一郎に

「おかえり」

と言う寿樹じゅき

「ただいま戻りました。」

どこか ぎこちない清一郎。



「今日は 大丈夫でしたか?」

「あぁ、恭司郎きょうしろうも居ないし 快適だったよ。」


「もっと 真正家しんせけでゆっくりされてくるかと思ってました。」

「あはは、そんなにゆっくりさせて 戻って来なくなると恐れるのは清一郎の方ではないか?」

「それもそうなんですが、寿樹さまが決心された事を 呑もうと思ってましたので……。」

どこまで 優しい男なんだと寿樹は思った。


「それはそうと、私が出て行って 兄に摂関されやしてないか?」

「大丈夫ですよ。あれから京子さん(奥さん)に連れて行かれて 帰ってきていないんです。」

「そうか、それだけが気がかりでな。」

「まさか、そのために早く戻られたんじゃないですよね?ボクの事は気にされず、ゆっくりしてくればよかったのに……。」


「今、ボクと言ったな?」

「はい。以前、寿樹さまが『わたし』ではなく『ボク』でいいではないかとおっしゃられましたので……。」

「その方が言いやすいか?」

「あ、最初はボクだったので、平気ですよ。」


寿樹は、環境に慣れず。清一郎の堅苦しい言い回しに、 『ボク』が主流なら『わたし』を無理に使わなくても良かろうと言ってしまったのだ。

「好きに言ってくれ、スマナイ。」

「いいえ、とんでもないです。」


「それと、重ねて悪いのだが。」

「はい。?」


「私に、さまを付けるのは 可笑しくないか?」

「あー、はい。おおせのとおりです。」

「ボクを使わせて もう少し堅苦しさが取れればと思ったが 逆じゃったな。」

清一郎が スミマセンと謝る。


「夫婦になるのなら 呼び捨てでも構わぬだろう。」

また、清一郎に注文をつけてしまった。

これで もし、清一郎が『寿樹』と呼び捨てで呼んだなら、健太と対等になるような気がしたからだ。

天秤を平等にしたい。


上着とネクタイを外した清一郎が照れながら 寿樹の座るソファーへやって来た。

「寿樹さん……。ですかね。」


寿樹がいまいちな顔をする。

すると清一郎が、寿樹の足もとを見つめて激しく言った。


「寿樹さまっそのまま動かないで下さい。」

清一郎は かがんで寿樹の左足を固定して抑える。

寿樹が動かないのを確認して 左脚横の落ちているピンを拾う。

「いやー、踏まなくて良かった。兄が無理矢理引き抜いたカーテンの画鋲が1つみつからなくて。」

と言って ピンを拾い上げて見せる。


何も言わずそれを見つめていると

「大変失礼しました!気安く触れてしまい スミマセン!」

と謝ったのだ。

ピンを拾うために 脚を動かさないように 触っただけだった。

どこまで 真面目な男なんだと思った寿樹。


「私は お主と結婚することになっているのだよな。」

「あ、はい。」

「……。」

これでは、健太の天秤にすら乗れない ほど遠いと思った。



「あ、あの……。触れても いいんですか?」

「あたりまえだろ、お主の兄にカーテン引き抜かれたぐらいだからな。この先なんと言われるか……。」

それより、先に兄に喰われそうとも思った。


「えっと……どう、触れたら一番いいのかな?」

「お主の触れたい所は あるか?」

清一郎が寿樹の全身を流して見た。


その後 直ぐに恥ずかしそうに眼をそらした。

「お主は 童貞か?」


その様子を見て 寿樹が言うので

清一郎が 立ち直れない位にうなだれた。


「すまぬ、ジョーダンだ。」

寿樹が謝った。


清一郎の直ぐ隣に座りなおして手を取った。

すると、清一郎がもう片方の手とサンドした。

「童貞です。寿樹さんに捧げる為に残しておきました。」


「ウソを申せ。」

隣に来た寿樹との距離はすごく近くなった。

息が お互い感じられるくらい。


「カリスマとして、見て来たボクにとって 寿樹さんは触れる事が出来るだけで嬉しいです。」


この男は誘導しないと 先に進みそうにないなと 判断した寿樹。

「ならば、私は床の間に上げられ拝まれていれば いいのか?」

首を振るう清一郎。

寿樹が半ば怒っているなと感じ取って考えた。


両手で握っていた寿樹の手を解放すると、

その両手を寿樹の肩にまわして


「では、失礼します。」


といって 寿樹を抱きしめた。

と思いきや直ぐに離れて 清一郎が我に返った。


「スミマセン!お風呂まだなので 汗臭いですよね。」


「汗などかかぬ。10月だぞ。」

「男はニオウ生き物なんですよ。」

清一郎がやさしく言う。


「嗅ぎたい」


「ボクのニオイ?ダメですよ。絶対クッサイですから。寿樹さんいい香りしてましたもん。」


「よい。」


寿樹がワイシャツの袖を クイッと引っ張った。

清一郎が シブシブ向き直ると


「知りませんよ 臭くても。」

といって 今度はゆっくり寿樹を包み込む。


寿樹も腕をまわし匂いを嗅ごうとすると 清一郎が首後ろで大きく息を吸い込む音が聞こえた。


「はぁー、寿樹さん いい香りがする。」

そう言うとさっきまで優しく包み込んでいた腕に力が入り、寿樹の胸が押しつぶれるまでギュウっと抱きしめた。


「寿樹さんって、カリスマ的な事を言われるのかと思っていましたが 案外普通な面があるんですね。」


ごたくを並べている間に ニオイの確認をしようとしたが、匂いがわからない事に気が付いた。


ん?ニオイが気にならないぞ?無臭の男なんぞいるものか?


また、息を吸い込む音が耳元で響く。

「こんなことしていると ただじゃ済まなくなりそうです。」

目をつぶって堪能していた清一郎が パッと離れる。


「ニオイどうでした?臭かったでしょ?」

恥ずかしそうに聞いてすぐに笑った。


「しない。」

「え?」

「ニオイがしない。やはり、同じ者同士だからか?」

清一郎は少し考えた。


「やはり、ソコが気になります?いとこに当たりますからね。」


「清一郎は 他の女子と結婚したいと思わないのか?」

「ないですよ。」

寿樹は怖くなった。



「兄はどこの女性かわからない人と一緒になってますが、ボクは違う。ちゃんと伝統を受け継いで、白い肌と黒い髪・均等のとれた美しい顔立ちと・この才能を絶やさず 残していくのが 我々の使命と思っています。」


もしかして、清一郎は一番ヤバイタイプかもしれないと思った寿樹。










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