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健太の日記  作者: 蔓草登上
74/111

鬼空のカリスマ化

挿絵(By みてみん)


寿樹が赤城家へ戻る

健太は苦い想いを抱いたままだったが

寿樹がまた、来ると言ったから

信じて待つことが出来た。

2020/10/17


 鬼空が講話術で若い女性から人気が立ち、神社のお守りやお札が売れ行きを伸ばした。

コロナの為、御朱印の受付は、書置きのみとなっていたが、講話の後に参加者へ直に筆入れをしている。それが人気を呼び、今では 数か月先の講話が予約でいっぱいだ。


「なんで鬼空の時こんな人気になるの?」

予約帳を付けて健太が不思議がる。

「もう少し、講話を増やしたらいいかな?」

「コロナだしね、 少ない人数で こまめに講話が望ましいと思うよ。」


その言葉から、鬼空の講話数が増え、御朱印も期間限定なんてモノを作って郵送も行っていた。


 健太が、講話の様子を一部始終見守る事にしたら、鬼空が御朱印を手渡す後に若い女の子達から一緒に写真撮りを頼まれていたのを見た。


「ちょっと、写真撮る意味がわからないんだけど……。」

仕事終わりに鬼空に聞いてみた。

 

 清羅きよらがホームページを上げてくれて、そこで宮司の情報が流れたらしい。

「ふーん」

といって、慌てて自分の神社のホームページを確認する。


 誰かが撮ってくれている、鬼空の姿が映った写真が何枚か映っている。

鬼空が、のぞき込んで言う。

「売り上げ伸ばしてしてるから いいだろう?」

一通りホームページを確認すると

「良いか悪いかの前に 僕に許可とって下さい。」

「いつも、パソコン見てるから、知ってるかと思った。」


 寿樹が女性の崇敬者が多いのは知っていた、鬼空になってから若い女性に人気が集中し始めた。

これは、鬼空の中身が「男」であるから、何か男臭みたいなものがあるのだろうかと考えた。


 それからも、鬼空の独断行動は止まらなかった。

健太は、鬼空が若い女の子を口説いてないか 監視するのに精いっぱいだった。

それでなくても、寿樹が赤城家あかぎけへ行ってしまったから、コンタクトを取りたいのに……暇がない。


 鬼空の要望どおり、庭掃きのアルバイトと巫女さんを増やした。それも、コロナ宿坊で仕事を失った人に限定して雇うと国からお金が落ちるので、健太が手続きを行う。

巫女さんは、健太の妻、望を日曜日に手伝いに来てもらっている。

ここまで、切り詰めているのに鬼空は経理を知らず、お金を使う人間だった。


 健太が精神的に疲れて来ている時、鬼空が美容師を呼んで美容から髪結い・着付けのフルセットを

お抱えにしている事を知って、健太がまた怒った。


「なに?…そのお金はどこからでるっていうの?」

すると、宗教法人だから売り上げは経費で落とさないといけないと、まっとうな意見を述べて来た。

本当は、修繕費にまわして、少しでも冬の極寒の寒さから身を守りたいと、ガラス戸の導入に貯金したかったのだ。


「また、今年も寒い部屋で寝泊まりするのはごめんだからね!」

プンプンに怒った健太に、わからないといったリアクションをする鬼空。


 寿樹だったら、こういった内容理解できるのにな……。

寿樹が恋しくなってスマホを手に握る。




 ある日、いつもの美容師が二人で来た。

アシスタントらしい。

 顔の美容から髪結いまで美容師の野菊さんが行って手本を示す。

「スマンナ野菊、側近が無駄遣いだとうるさいのだ。」

「いいですよ。代わりにこの子雇ってもらえるなら。」

とい言ってアシスタントの大人しい男の子を紹介する。

短大を卒業したばかりといった感じの初々しいアシスタントだった。

値段は野菊の半額以下だった。

「野菊、いくらなんでも安過ぎないか?」

「お店でアシ断られてね、行くところがないの、でも経験積まないと次受けられないし、協力してあげて。」

「あぁ」

なんだか解らず了解してしまったのが、後悔先に立たずだった。


 美容のフェイスマッサージが丁寧すぎてかれこれ1時間かかる。厳密には鬼空のほうからもういいよと断って終らせたのだが。

髪結いも、永遠と髪をとかし続ける強者だった。

かれこれ1時間。

たまらなくなって鬼空は野菊へ連絡した。

「あいつ何なん?いつもの4倍時間かかるんだけど。」

適当に、ストップをかけて欲しいといわれる。

四国から来て、身寄りがなく、美容師目指して頑張っているという話だ。

「そういう情熱があるのは良いけど、俺のところに要らないから。」

付き返すと、お金はいらないから経験だけでも積ませて欲しいと言われた。

「時間を決めてやらせればいいのだな。」

タイマーをセットして、時間を決める事になった。


 実務時間を増やす為に毎日やって来るアシスタント。名前は十字架くろす 弥生やよいまだ22~3といったところだ。 

十字架くろす?」

苗字の漢字に聞き返す鬼空。

「はい、珍しい苗字だって言われます。」

「お前の親は キリスタンだったのか?」

「違います。」

「日本人?」

「はい、二人とも日本人です。」

「そうか、勘ぐって悪かったな。髪結いは15分以内でやってくれ。」

「はい。」

しかし、弥生の手は遅かった。

15分と言われたらその倍かかる子だった。


「鬼空、何やってるの?講話の時間だよ!」

健太に言われてハッと目を覚ます鬼空。

手が遅いため、すっかり寝てしまったのだ。

「タイマー鳴ったか?」

「はい、鳴りました。」

「それ、それどーした?」

「止めました。」

沈黙が走る。

鬼空が怒りながら着替える。

「髪はもういいから斎服持って来てくれ。」

健太が手配する。

「少し延長してもらってるから。」

気が利く健太に感謝する。


弥生君は着替えも担当範囲だが、手が出せずに見守っている。

健太が手早く袴の後ろを持って手伝う。

一人でも着替えられる鬼空だが、今は手伝った方が早く終わると思ったからだ。

「いくよ。」

「おう。」




鬼空の講話は、予約の若い女性のみで終わり、最後に宮司と一緒に写真を撮るというスタンスになっているから噂とは怖いものだ。


「鬼空、まるでアイドルみたい。」

「これがカリスマ性といってくれ。」

清羅きよらちゃんとファンクラブとか作ったりしてないでしょうね?」

「ファンクラブ、いいなぁ。」

ローカを歩いていると玄関付近で弥生がお辞儀をして待っていた。


「なんだ、まだいたのか?」

「挨拶をして帰ろうと……。」

「弥生君偉いね、待たせて悪かったね。今度からはああいった場合、挨拶なくて帰って大丈夫だから。」

「待たせて悪かったな。」

「いいえ、こちらこそ。では失礼します。」



「弥生君って野菊さんのアシスタントだった人?」

「色々あってな……。」

「ふーん。」

「なんだよ。」

「大丈夫なのかなって思って。」

「タイマー鳴ったのに気が付かなかった。」

「本当に鳴ったの?」

「そうだよな、鳴ったら起きるよな。」

「まぁ、今度から遅刻しないように気を付けてよ。」

「あぁ……。」


玄関の先に10月の風が、葉っぱと一緒に吹き込んだ。







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