こんな時にラブレター
健太がノートパソコンを開いていたので
寿樹が覗くと パタッと閉めた。
健太は 寿樹が悪い気を起こさないように先に喋った。
「御影さんと最近、連絡とってる?」
「いや。」
全くやり取りは無かった。
「ごめん、仕事のメールが来たらと思って、寿樹のパソコンのメールと連動させてもらってる。」
それで、先ほどパタッとノートパソコンを閉めたのか?
「御影がなんと?」
「いや、多分仕事とかの件じゃないと思うんだ。」
健太がノートパソコンを開けて見せる。
「肩書と、文章が固い言葉だったから 読んでしまったのだけど……。」
寿樹にメールの内容を見せる。
「これって、難しいこと言って 寿樹を口説いてるよね?」
健太からそんな 話が出るとは思わなかった。
しかも、赤城家のドタバタで 御影の事など 微塵も考えたことがなかったからだ。
「私が ほったらかしにしたのが いけなかったか?」
「いいと思うよ ずっとほったらかしで。」
健太の口から珍しく冷たい言葉が出る。
「それでは、今までお世話になっていたのに 申し訳立たぬだろう。」
「だって、この文面だと、炎天下の中、寿樹様を歩かせてしまった自分が許せません。お詫びにGOTOトラベル予約しましたって内容だよ。こんなの 僕が許さないよ!」
健太がキレる。
後ろから笑い声が聞こえた。
「恋文か?面白い。」
鬼空が弦賀を連れてやってきた。
「男性の心を掴む寿樹さま 隅におけませんね。」
弦賀が 奉納金と共に入っていた文を寿樹に渡した。
「これは?」
「寿樹様を連れ戻しに行った時の メンバーたちですよ。」
「前略、その後 寿樹さまはいかがされておいででしょうか?一同心配をしております。またお元気なお顔を拝見出来たら嬉しく思います。敬具」
鬼空が読み上げる。
「健太、礼文返しておいてくれ。」
健太がしーんとする。
鬼空が可笑しそうに口を挟んだ。
「健太が引き連れたメンバーなのに 健太が奴らと縁を切ってるんだよ。 音沙汰なくなったメンバーは直々に屋敷まで来て、奉納金と共に置いていったのさ。」
「なぜに 縁を切る?」
寿樹が聞くと
「だって、あれ以来。ずっと寿樹と合わせてくれとか 寿樹と交流会作ってくれとか そんな話ばかり要求してくるんだもん。」
「まぁ、健太にとって 敵は落とすしかないからな。」
鬼空が笑いながら言う。
「自分がかき集めたメンバーなのに……。」
寿樹が落胆して言う。
「みんな、寿樹が女だって知ったから 健太が妬いてるんだよ。」
鬼空が健太の気持ちを代弁する。
「まぁ、一度皆を集めてくれ。私が話をする。」
「ダメ!ダメだよ!」
健太が止めに入る。
健太は寿樹を連れ戻したかった。
赤城家から連れ戻したら、今度は助けに行ったメンバー一同と寿樹の取り合いになるような事はまっぴらだったからだ。
「寿樹を独り占めしようとするズルい根性だなコイツ。」
鬼空が健太の脇腹を摘まむ。
「あっ」
と身体をよじらせる。
もう片方も摘まむ。
「あんん」
変な声出したと鬼空に頭を叩かれた。
寿樹はひるがえして、部屋へ行く。
「あっ寿樹!勝手に連絡とって GOTO行っちゃダメだよぉ。」
健太が鬼空に遊ばれながら叫ぶ。
ため息をついた寿樹。
「帰ったら帰ったで やる事があるな。」




