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健太の日記  作者: 蔓草登上
71/111

やっぱり健太が好き

挿絵(By みてみん)


♪「Myra-From THE FIRST TAKE」Tani Yuukiさんの曲を聴きながらおススメします。

真正家しんせけにて




 鬼空きくうの女体化について、アドバイスに来たカタチとなった寿樹じゅき


弦賀つるがは寿樹に礼を言った。

「ありがとうございます。わざわざ遠いところからお越し頂いて、赤城家あかぎけではまたの外出大丈夫でしたか?」

「大丈夫ではない、恭司郎きょうしろうが嫌で出てきてしまったのだ。」

「なんと!」


「案ずるな、お互い子供ではないからわかっている。」

「寿樹様の方は大丈夫ですか?何かあったのではないですか?」

「……大丈夫だ。それより鬼空は?」

「あ、はい。昨日、少し騒動を起こしまして。」

弦賀が昨日の事を話始めた。

「お主らも大変だったな。」

寿樹は真正家しんせけが荒れている事に驚いた。


「鬼空様は寿樹様のお部屋でパソコンをお使いになられてるかと思います。」


鬼空は、インターネットで生理の事を調べていたらしい。

ため息をつきながら、閲覧していた。

「何をため息ついておる?」

鬼空は寿樹を見上げると

「そういう寿樹も、悲壮感出てるではないか。」

「赤城家が嫌で 出てきてしまった。」

「そんな感じだな。こっちは お前のモノに当たってしまった。悪い。」

鬼空が謝る。

「そうか、私もそなたのような腕力があったなら恭司郎を殴って来ておった。」

「私が代わりに、行ってやろうか?」

「よしなさい。身体が女性化して来ているのに」


「困ったものよ。」

「私とて、同じことよ。さて、お主の当たったモノとは何処におるのか?」

鬼空が 部屋の後ろを指した。

「裏の山道だ。」




 苔むした山の香りがイオンと共にやって来る小道。

杉の木々が太く真っ直ぐに連なり、奥まで続くその黄土色おうどいろはだはまるで参道を案内しているように光って見えた。

その下にまさろうと生える草木もむなしく、緑力しいこけが目にしみいるほど生えている。

あぁ、こんな美しい環境下に居たのに、自分は何故に嫁いでしまったのだろう と考えさせられた。


健太はその参道のくだりを 砂利を踏みながら軽快に降りるところだった。

寿樹は前に立つと

目を凝らしてこっちを見る健太が「寿樹?」と伺った。

「ああ」

健太が走って近づいて来てくれる。


直ぐに手を取って抱きしめて欲しかった。

でも、健太の顔が思っていたより腫れあがっていて

「健太、そんなに……」

でも何て言えばいいか言葉がわからないでいると。

その様子を見た健太は、

手をぱんぱんと叩いてズボンで拭くと、寿樹の手を取ってそのままグイっと自分の方へ引き寄せた。

「顔は腫れてるだけで、見た目ほど痛くはないよ。」


引き寄せた手は離され 大きく手を広げると本当に直ぐに抱きしめてくれた。

健太の手ギュッと身体にしみいる程嬉しかった。

「おかえり、寿樹。」

震えて、言葉にならなかった。

寿樹は嬉しくて健太の背中に手を回した。

その行動に健太が言った。

「向こうで何かあったの!?」

「………。」

涙が出そうになって 顔を背けた。


寿樹が腕を回してくれるとは思わなかった健太。何か赤城家であったと推測した。


「寿樹が幸せかどうかが大事なんだよ!ちゃんと言って!」

そうだ、確かにそうだ。

清一郎の兄に手籠めに遭いそうになって出て来たなんて軽々しく言えない。

探る健太に寿樹が必死で隠そうとしても、健太に嗅ぎつかれてしまう。


何かあったなと思う健太が寿樹の顔を覗き込むと

「はい、時間切れ!」と言って 同時に唇を奪った。

驚いた寿樹。

温かく包んでくれる健太の腕と唇に全身の力が抜けた気がした。


恭司郎に襲われた時、健太の顔が浮かんで助けを求めていた自分がいた。

それ以外でも健太の顔がちょくちょく浮かんでいたのだ。

知っている、自分は健太が好きなのだ。


健太も寿樹のお香の香りに心を落ちつかせた。

寿樹は今まで足りなかった物を補ってくれるのが健太だと思った。


「僕わかっちゃったよ!寿樹は向こうで幸せじゃないってこと」

健太は寿樹の両手を握った。

「向こうで何があったの?口に出せない位 酷いことされた?」

凄い感の鋭さだ。

「まて、健太早まるな!私はまだ何も……」

「言わなくても態度でわかるよ。どうせ、清一郎の兄に何か悪いことされたんだ。あいつだけはどーも昔から許せない……。」

健太に正直に話すと大変な事になるので、ここは隠す寿樹。

「寿樹は今が幸せじゃない事に気づいてないだけだ!」

健太が怒る。

「そうかもしれないな。」

まんざらこの光景は嫌いじゃない。

むしろ懐かしくて愛おしいくらいだ。

やっぱり、寿樹はここが落ち着くのだと確信した。





「僕ね、ずっと寿樹の事考えてたよ。」

道中、歩きながら話した。

「私もそうだ。」

「え!本当に!?……いたた。」

喜びすぎた健太の顔にお昨日の痛みが走る。

寿樹は笑った。

「まず、その腫れを冷やさせてくれぬか。」

健太は幸せに満ちた。



 ソファーの上で寿樹に頬を冷やしてもらっている健太。

弦賀がお茶を出して

「今日は健太さんは その顔で外へ出ないで下さいね。」

ジョーダン混じりに言う。

「はい。」

鬼空がやってきて

「いいな、健太は 私のお陰で寿樹に看病してもらえて。」

「鬼空のせいででしょ。」

と笑う。

「私が、代わりに仕事をやろう。」

「寿樹様は お客様です。健太さんの看病してあげて下さい。」

と気を遣う弦賀。

「その顔で 出られたら困るから 見張り番だ。」

という鬼空。

「出ませんよ。」

健太がふくれて言う。

こういったやり取りの生活が、楽しかったと思える寿樹。




 寿樹はやっと繋がった清一郎と電話をした。

しきりに弦賀さんが心配そうにしていたが、何やら話し合いをして落ち着いたようだ。

鬼空も寿樹に生理の時の話を懸命に聞いて納得しているし、夕飯も一緒に食べた。

懐かしい、楽しい。

「今日は泊まっていけるの?」

「ああ、もう遅いし泊まってきた方がいいと清一郎が」

「ものわかりいいね。清一郎さん。」


清一郎は良いのだが、問題は恭司郎にあった。

それを清一郎も重々解っている。

仕事が官僚なだけに 直ぐに家に帰って来てくれて、かばってももらえない。

寿樹が安全なのは 真正家に居るときだと 清一郎は解っていた。




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