おかえりと言ったのは
寿樹が赤城家の門をくぐると、そこに恭司郎が立っていた。
「おかえり。」
なにか意味ありげに不敵な笑みを浮かべている。
本当に気味の悪い奴だ。
でも、横を通り抜けなくてはならない。
案の定、真横に差し掛かった時に、恭司郎が足を掛けて来た。
躓きそうになって、避けようとするとサッと持っていた荷物を盗られた。
「あっ、返せ。」
「お荷物お持ちしましょう。」
と言って離さない。
部屋まで行く最中に、言われた。
「あいつ(健太)面白いな。からかいがあるっていう。」
「健太に何かしたら、ただじゃ済まないからな!」
「あいつの事、好きなのか?」
「好きじゃない!」
「ふーん。ま、どっちでもいいが。」
多分、車から降りた時のやり取りを見られていたようだ。
恭司郎はおもむろに寿樹の荷物を勝手に開けて物色しだした。
バックを素早く引き抜く寿樹。
「失礼極まり無いな!」
あまり、面白そうなものを見つけられない恭司郎は、弟の部屋を見渡し天井から垂れる布を見て言った。
「なんだ?あれは、お前らはあんな布切れ一枚で境界線作っているのか?」
応えもしないうちに笑われた。
「出ていけ!」
恭司郎は、寿樹の咽喉を掴んで後ろの壁にぶち当てた。
ゴンっと大きな音がする。
「大きな口が利けると思うなよ。」
寿樹が咽喉の手を掴むと、恭司郎が寿樹の胸をわしづかみにした。
(痛い!)
寿樹が声に出せない状態で、手を払いのけた。
「本当に女になったんだな。」
恭司郎と出会った頃は、中性な時期だった。
身体つきは少年といった感じで、下腹部は体内に精巣のある女の子であった。
それに興味があるのか、恭司郎はやけに寿樹の後をついて来る。
いつになく、恭司郎の腕力に勝てないから恐怖さえ沸いて来る。
寿樹が本気で怒っているのに気が付くと、天井に張り付いた布を引き抜いた。
「こんなものいつまでもしているから出来ないんだ。お前の身体は普通より赤ん坊が出来にくいんだ、毎日励めよ。」
と言って出ていった。
ホッと胸を撫でおろす寿樹。




