離さないカバン
真正家では、鬼空と健太が話している。
「寿樹がね、僕に言うの。今は、僕に弱いだって。どーゆ事だと思う?」
「そのままじゃないのか?」
鬼空はとぼける。
「寿樹は僕が恋しくなってるんじゃないかな?」
「うーん」
気のない返事をする鬼空。
「ウソでも言ってくれないの?鬼空。」
健太が鬼空の冷たさに若干怒る。
鬼空が天を仰ぎながらため息をつく。
「寿樹は赤城家に嫁いじゃうんだね。」
さみし気に言う健太。
「おまえは精一杯やったんだろ?」
「ちょっとね、」
「何がちょっとだ、(本殿で抱きしめたり、隣合わせに布団敷いたり)」
「でも、死にたい。」
「オイオイ、物騒な事言うなよ。」
「だって、ホントだもん。」
話は、健太が 車で寿樹を赤城家まで送って行った間に戻る。
「では、寿樹さまご無事で。」
「ありがとう、弦賀も元気でな。鬼空も頑張ってくれ。」
車に乗り込む寿樹に挨拶をする。
「いつでも帰ってこいよ。」
鬼空が言う。
「鬼空が仕事していないようだったら指導に来るから、弦賀宜しくな。」
「心得てます。」
「健太、車を早く出してやれ。」
ジョーダン混じりに鬼空が言う。
「僕が安全に送り届けます。」
(おまえが一番安全じゃない)と何人が思ったか知らない。
見慣れた山里を離れると、健太が口を開いた。
「電車だと2時間かかるね、車だとトータル1時間で着いちゃうよ。」
「そうだな。」
「そんなに、離れた距離じゃないんだよ。会いたかったらいつでも迎えに行くから。」
健太が熱く、寿樹の手を握った。
本当は、このまま寿樹を車に乗せて連れ去りたい。
できるものなら、やっている。
でもそれが、寿樹の心まで乗せられるかといったら、そうじゃないのは解っていた。
車は次第に、健太の嫌う赤城家へ近づいて行った。
「もう、この辺でいい。」
健太が車を停めた。
「じゃあ、荷物持って行く。」
「いや、荷物も自分で持って行く。」
「荷物持ちたい。」
「要らぬ、返せ。」
「嫌だ。」
「健太。荷物は自分で持って行く。」
「荷物じゃないんだよ。」
健太は寿樹の荷物を抱えながら泣いた。
「あきらめきれないんだよ……。」
それは、自分もそうだと言いたかった。
決断のついていない自分は、恐る恐る一歩を踏み出して慎重に進んで行くしかなかった。
「お前の気持ちもわからんでもない。」
「これを渡したら、寿樹はサヨナラだ。」
「そうだな…。健太、今の私は、健太に弱い。わかってくれ。」
健太は胸が痛いけど、荷物を前に出した。
寿樹の言葉をしきりに繰り返した。
「それ、どういう事?」
「清一郎は、お前と比べたら部が悪い。わずか1週間ていどだ、何もわからないと思わないか?」
健太は、冷たい更地から、草木の生える大地を踏んだ思いだった。
「僕、待ってるよ。」
健太が荷物を渡した。




