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健太の日記  作者: 蔓草登上
66/111

手を握られただけで 後編

挿絵(By みてみん)

次の日の朝4時30分



 寿樹は、身体が覚えているかのように、目を覚ました。

同じく、鬼空も起きている。

「昨日、健太と一緒に寝たのか?」

鬼空の質問から始まった。

寿樹が恥ずかしそうに眼をそらす。


「そういう所だけは、目ざといな。」

「何かあったのか?」


白衣に着替えながら、興味深々に聞く鬼空。

袴の着替えを手伝う寿樹。


「何もないよ、お前が期待するような事は……。」

「一緒に寝て、何もなかったらダメだろ。」


ダメと言われたら、清一郎とでも同じだと寿樹は思った。


「今日、帰るのか?」

「清一郎には、落ち着くまでゆっくりしてくるようメールをもらったが、もう帰ろうと思う。」

「覚悟は決まったということか?向こうに行ったら式の段取りが始まるぞ。」

「健太と一緒にいたら、引き留められる。」

「そりゃ、そうだろうな。ここが最後の正念場と意気込むのも無理はない。」

鬼空の支度が整って、朝のお勤めに朝霧を切って歩く。

鬼空にとって、朝が早いのは苦痛だが、慣れている寿樹にとってなんてことない。

まるで、監督するように付いて歩く。

「余裕だな。」

「何が?」

「いや、」

前を見て身を引き締める鬼空。

「それにしても、寿樹の気持ち次第だからな。」

「そこが一番困っているのだ。」

私自身、選べるのか?





9月下旬

昨日の事



 弦賀と酒を交わし、健太と一緒に居る事を喜ばしいと思う弦賀を知った。

私が健太に背負わせた、望との結婚を人生の岩と見立てて、今は避けて通れと教わった。

過ぎてしまった事は、後には引き返せないから、進むしかないのだが、背中を押された。


 寿樹が洗面所に居ると、前を健太が通り過ぎた。

自分の部屋を通り過ぎて行ったぞ?

どうしたものかと、後を追うと、寿樹の部屋へ入って行った。

見れば、寿樹の部屋に布団が2組敷かれていた。その横で健太がパソコンを開いている。

寿樹がふすまの前で立ち止まって

「どうして2つあるのだ。」

気が付いた健太は見上げて

「僕の居た部屋、会議用のパーテーション設置しちゃって。」

笑って見せる健太。

「いやいや、おかしいだろう。」

横長の部屋に、縦に敷かれている。

「細かい事は気にしないの!それより、寿樹のパソコン使わせてもらってます。」

「それは、構わないが。話をすり替えたな。」

寿樹が布団を引き出そうとすると

「寿樹、デスクトップに新しいファイル作ったんだけど見てもらっていい?」

内容の確認を行うのに、結局縦並びになった寿樹。


乾燥機に当てた布団がカラッとしていて、気持ちいい。

見慣れた部屋の、聞きなれた健太の声が、疲れた寿樹の身体を癒した。


「寿樹?寿樹?」

返答がない様子に振り返ると、寿樹はスース―寝息をたてて寝ていた。

健太はパソコンの電源を落とすと、共に横になった。

「寿樹は、清一郎と一緒になって幸せ?僕は寿樹の幸せが 僕の幸せだからね。」

健太が隣で眠る寿樹の手を握った。


「朝、目を覚ますと健太が手を握ってた……という訳か。」

鬼空が祠参りを済ませて、本殿へ戻る。


 太陽が昇る前から、鳥たちが囀り始め、今は蝉と合唱をして空に色を付ける。

鬼空が納得いかない顔で、ご神前で祈祷する。

「本殿以外は、まるでなってない。」

「そりゃそうだ、寿樹がいるから 廻った。普段はやらない。」

鬼空のずぼらさが出た。

「それだから、恭司郎になめられる。」


「それよりなんだ!寿樹の方こそ、健太と隣で寝てたくせに 爆睡しおって。一体何しに来たんだ?健太とちゃんと話し合えたのか?」

「あ、それはない。」

鬼空が頭を押さえる。

「寿樹、本当に赤城家の嫁になっていいのか?」

「……。」

鳥たちが 羽ばたき、木々の間から 葉が落ちた。

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