真上様と御師様あいさつ
2020/09/19
「寿樹様、何故?」
清一郎が赤城家の屋敷内に寿樹が戻ってきている事に驚いた。
その反対側に鎮座しているのは、あの紛れもない真上様だったので、慌てて頭を低くする清一郎。
「おお、清一郎。」
真上が待っていたかのように、声を掛ける。
「これは、挨拶が遅れまして申し訳ありません。」
「そんな事気にするな、ワシが急に来たことじゃ。
それより、お前だったかな。」
「は?」
「寿樹を貰ってくれると申し出てくれたのは…」
突然の真上の言葉に驚く清一郎。
「あっはい。私ですが。兄との約束では……?」
「うーん、その時は恭司郎と約束じゃったがな。20年も昔の事、恭司郎も妻を娶ってな、そればかりはしょうがなかろう。正式に撤回に来たのじゃ。」
「では、許嫁の件は無しと?」
「無しも無しで良いのじゃが、寿樹の方もこうして世帯を持たずに独りでおるからな。」
「僕、いや私でもよろしいんでしょうか?」
ちょっと焦った清一郎。喜びが体からあふれ出しそうだ。
「貰ってくれるなら、こちらとしても安泰じゃ。」
「はい!喜んで。いや、あの寿樹様のご意見は?」
「いいに決まっておろう。な、寿樹。今まで妙な虫を寄せ付けずにこうして来たのだ。我が、真成家と赤城家の繋がりが出来るということだ。よろしく頼むぞ。」
寿樹は黙ったままだ。
それを見ていた恭司郎が口を挟んだ。
「赤城家とは母方の姉妹で繋がっているではないですか」
「いやぁ、あいつは逆に意地悪されかねん。」
二人とも笑った。
「仲がよろしくないようですね。」
清一郎は寿樹の様子をうかがって見た。
寿樹は、父親の顔を見るとモノ申したそうに
「父上、私が権力の駒になるのでしたら婚約は致しません。」
「何を言う。みんなおまえの為なんだぞ。」
恭司郎も父親に乗っかってそうだと言い立てる。
寿樹の話は取り合ってもらえないといった感じだ。
清一郎だけが寿樹を心配して見ていた。
みんな裏がある。寿樹にはわかっていた。
特に真上と恭司郎とは仲が良くて、性分も似ている。
だから、自分の娘を恭司郎にやると手なずけていたが、恭司郎も好きな女性と結婚したかったのだろう。うまくかわして、弟に擦り付けた。
真上もそこは無理に進めない。
恭司郎を大事とし、嫌がることはしなかった。
しかし、本当に清一郎は寿樹の事が気になっていた。
気質は兄と似たところをもつのだが、兄のやり方の悪い所はしない様に心がけていた。




