寿樹のOL
2020/9/12
「あー、横になることが、こんなにも気持ち良いものか……」
寿樹が健太の隣で、布団に大の字になると目を閉じたまま動かなくなった。
「お疲れだね。慣れない仕事だからね。」
返答が帰ってこない。
「きっと疲れたんだね…寿樹?」
やはり、返答がない。
耳を澄ますとスース―と寝息が聞こえてきそうな動かない寿樹に
「ちょっとまって、今日は聞いておかないといけない明日の事がまだ残っているんだけど」
寿樹を無理やり起こそうとする。
目が開かない寿樹。
「明日、NHKから取材が入るから」
ゆさぶる健太。夏に着るケタの襟元が大きく開いて、健太の目がクギ付けになる。
「寿樹。起きてよ。」
肌が暖かく、柔らかく、寿樹がそこにいることを実感して嬉しかった。
幸せってこの事なんだよ、と一人かみしめる。
寿樹は僕と一緒で幸せを感じてくれてるかな?
失うもの諦めるもの、僕は覚える。
でも僕は成功者じゃないから、寿樹はやっぱり君の道を羽ばたいて行っていいんだよ。
寿樹は僕の星だから、君が輝くなら僕はそれを望みます。
寿樹がムクッと起き上がった。
「健太の内容はいつも重すぎる。」
あれ?
僕喋ってないけど。
「声に出てた?」
なんだろう、前にも同じようなことがあった。
寿樹は僕が口に出してない事をあたかも聞いてたかのような行動をする。
「なんだ!鳩が豆鉄砲食らったような顔をして」
「ちがうよ。寿樹は不思議な能力があるよね。」
「どんな?」
「人の考えてることがわかっちゃう…」
寿樹は笑った。
「NHKがなんだって?」
なんだ、NHKの事か…。
「えっとー、11時から打ち合わせで一応寿樹からの許可を貰っておこうと思って…。」
寿樹は僕の頭をクシャっと撫でた。
「お前の性格はホントにいいよな。」
「どーゆこと?」
「そーゆーとこ、憎めん。」
「性格で言わないで…」
「おまえの願いを叶えてやりたくなるというか、なんというか、可愛いやつだ。」
寿樹からの誉め言葉にドキッとした。
いつも、褒めた事ないのに。
「また鳩が豆鉄砲喰らった顔しておるぞ」
照れる健太。
「さ、明日の段取り始めようか。」
さっきとは打って変わってしっかり起きてる寿樹。
もしかして、あの一瞬寝てスッキリしてるのかな?




