8月23日暴動
―8月23日暴動―
次の日からスマホに連絡が入らなくなった。
寿樹は真上が帰ったとたん、恭司郎にスマホを取り上げられていた。
「久しいのう寿樹。」
恭司郎が無理矢理 部屋へ連れて行き 言った。
寿樹は 恭司郎の用意した部屋へ放り込まれた。
「あれから10年ぶりか、よくのこのこと嫁ぎに来たものよのう。」
「私はお前の妻になる気はない‼」
寿樹は 四つん這いに倒れ込んで 振り返り言い放った。
「お前に気がなくとも、両親が決めたことらしいぞ。」
「そのくらい知っておる。今の時代、許嫁が通るなんてバカバカしい話だと思わないか。」
「許嫁は建て前だ。」
恭司郎が笑った。
「お前の親父が欲しいのは、元妻の家柄。つまり、我が赤城家の繋がりが欲しいのよ。」
寿樹が鼻で笑った。
「これから争いをするでもなく、赤城家との繋がりは一切無用、無意味である。」
「だったら、何故お前はここに来た?」
「…母親の……。」
寿樹が 口ごもった。
「母親が離別する条件だろ!」
恭司郎は真実を知っていた。
「お前は子供の頃から駒あつかいされて来たんだ。」
痛いところを容赦なく突いてくる恭司郎。
さすがに同じ母親の血が流れていると感じる。
「こっちはしょうがなく受け入れてんだ、そこをはき違えるなよ。」
上から目線で物を言う恭司郎。
「こっちも好きで来ている訳ではない!!」
寿樹も反撃した。
直ぐに帰りたかった。
こんな所にいて幸せにはなれない、なれる訳がない。
「だったら、ここで死んでろ。」
恭司郎は部屋を出ると鍵をかけて出ていってしまった。
あいつは、ここで飲まず食わずの餓死をさせる気だ。
あいつのやる事だ、やりかねない。
寿樹は小さな何もない部屋で考えた。
晩の事だった。
ドアの鍵が思ったより早く解放された。
「寿樹さん」
小声で誰かが呼んだ。
清一郎が助けに来てくれた。
「トイレも水もない部屋で酷いですよね。スミマセン。兄がこんな事をして。」
清一郎の部屋へ連れて行ってくれた。
「私の部屋なんで、汚いですが。」
飲み物と食料、トイレにお風呂も提供してくれた。
「寿樹さんがいらしたというのは伺っていました。私は仕事を他でしているもので、帰りが遅くなりました。お久しぶりです真正寿樹さん。」
恭司郎が呼ぶのと清一郎が呼ぶ名前にかなりの差を感じた。
「先日は、屋敷によく来てくれたな。」
「はい、寿樹さんが完全な女性になられたと噂がきましたので。つい、確かめに行ってしまいました。」
清一郎は 照れ臭そうに言った。
「許嫁の話は幼いころから聞いて 知っておりましたが、兄には現在、結婚前提の彼女が出来てしまいました。もしお力になれるのでしたらと思い、つい出すぎた真似を かの真上様にしてしまい申し訳ありませんでした。」
「謝ることはない。して、力になるとはどのような理由なのか?」
「あははっ、小さいころから寿樹さんを見て憧れていました。」
寿樹は清一郎を見つめる。
「私はまだ婚約もしておりませんし結婚する相手も居ないというか、寿樹さんと一緒になれたらな……と勝手に思っておりました。おそれ多くもスミマセン。」
清一郎は照れ臭そうに頭をかいた。
「私を許嫁にというのか?」
清一郎は更にいっそう頭を低くした。
「はい、これは私の勝手な妄想で 初めて寿樹さんにお伝えいたしました。でもそう伝えた直後 真上様にキッパリ断られましたけどね。」
「父は恭司郎と仲良くしておきたいのだ。みんな権力欲しさに醜い。」
「そうですよね。」
清一郎はまだ青臭さの残った顔で肌艶が良い。
真面目に野球を一生懸命やっていたような、そんなどこにでもいる少年ぽさが残っていた。
「寿樹さんは真正家になくてはならない存在です。私にはわかります。寿樹さんを逃がしますので……」
そう言った矢先、ドアがけたたましい音を立てて開いたかと思うと
「おまえか!清一郎、この盗人がー!!」
と大声をあげて恭司郎が入って来た。
清一郎はビクッとして肩をすぼませると、恭司郎が殴り掛かろうとした。
それを見た寿樹は清一郎の前に割って入り、かばった。
恭司郎が一瞬動きを止めた。
が、寿樹の胸倉を掴み上げる。
「やめてください!兄さん。」
と止めに入るが虚しく飛ばされた。
「清一郎おまえはこの女のどこがいいか知らんが、使い古され要らなくなった道具も同然だぞ。」
「どうしてそんなことが言えるのですか?」
「この女は妊娠しないのを良いことに、身を売って生きて来た宗教家だ。」
「うそだ。」
「その証拠に俺はこの女を抱いたことがある。」
清一郎の眉がピクっと動いた。
恭司郎は高良かと笑い 寿樹を持ち上げると 清一郎に投げつけた。
どさぁっと清一郎の上に崩れ落ちる寿樹。
清一郎は慌てて寿樹を抱きとめようとするが勢いで二人とも頭を打ち付ける。
「欲しけりゃくれてやるよ!お前たち二人はお似合いだ。」
恭司郎が出て行こうとした時、ぴたっと足を止めた。
「表の虫がうるさいのだが、寿樹。あいつら法律で訴える事ができるが、どうする?」
庭が何やら 騒がしい。
健太とその知り合いたちが寿樹を連れ返しに来たらしい。
寿樹は起き上がると、
「私の大事な友人たちだ、指一つ触れることは許さん。」
と寿樹が 健太達を守ろうとする。
「大きく出たなぁ。まぁお前はもらわなきゃいけないこっちの身にもなってくれよ。」
にやにや笑うと自分の部屋へ戻って行った。
寿樹は赤城家の門前に集まる、健太をはじめとする仲間たちを説得しに出た。
清一郎は、健太達の興奮冷めやらぬ様子を見て、寿樹に今日の所は帰った方がいいと告げた。
「私の事は気にしないで下さい。ああいった兄の事は慣れてますので」
清一郎は健太達に寿樹を引き渡した。
寿樹は健太達に包まれるかのように保護されて消えていった。
無理やり人員オーバーの車中に押し込まれる寿樹。
「スミマセン寿樹様。若干定員オーバーなもので。」
むさくるしい男ばかりの車中まるでどっちが人さらいか分からないありさまで寿樹は屋敷へ連れ戻された。




