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健太の日記  作者: 蔓草登上
51/111

側近をして分かった真正家の事実

挿絵(By みてみん)

続き




 寿樹じゅきがラフな普段着で風呂場から出ると、奥の間で鬼空きくうがなにやら嫌味いやみを吹き込んだ。


「いいなぁ自由で」


「情けないぞ鬼空、影としても仕事をまっとうせず……。」

鬼空が自ら御師の役に声を上げた割に、仕事が出来ないので寿樹が怒った。

「……。」

御師おんしとなってもやはり何もできんではないか。」


鬼空は髪をかき上げて視線をそらした。

寿樹とまともにやりあって勝てたためしは無い。


「今日は無理でしょ!こんな暑い猛暑に出かける方がバカってもんだ。」


「それでも、この屋敷のために出て行ったのだ」

寿樹が少し膨れて言う。

「健太の資料集めのためだろう、なんだかんだ健太に優しいもんな。」


「健太には感謝している。やつのお陰でもあるからな。」


健太が耳をダンボにして聞こうとしていた。


「あー、俺が言いたかったのは、服装が自由でいいなっていったの。」


「俺というな」

御師になったら、自分の事は『わたし』で統一されている。

「はーい!」



「なんか、こんな関係がうまくいってる気がする。鬼空が床の間に座って、僕が経理をして、寿樹が裏で動いてる。今までと変わらないように見えるけどそれぞれの仕事のポジションに着いたって感じがする。」

健太が話を聞いて、やって来た。

「俺が床の間って……」

「わたし」

注意される鬼空。


「これも健太が経理を出来た事が意外だったからな。」

「素直に褒めてよ。」

「わるかったな。」

寿樹が褒めて有頂天になる健太を 嫌気がさすように見つめる鬼空。









―文部科学省あてー



  健太の部屋でパソコンを開く健太。寿樹はそこで髪を乾かしている。

「寿樹やっぱり凄いや」

「何がだ?」

「鬼空が御師になっても、やっぱり実権は寿樹は握っているって感じだもんね。」

「まだ引継ぎだから仕方ない」


「いつも着物姿しか見ていないけど、寿樹の洋服姿もとっても似合っているね。」

健太がさっきから短パン姿をまぶしそうに眺めている。

「それはそうと、お前の手元を見ないで打ち込む能力は知っているが、画面を見なくても良いのか?」

「あっ」

寿樹に見とれてパソコンを打っていたのがバレた。

寿樹がパソコンの画面をのぞき込む。

「凄いな、ピアノみたいに打てるのか?」

「そんなことないあっあっ、間違ってる」

寿樹が笑った。

「席を外そうか?」


「あ、いやいいんだ。これは単なる僕のミスだから。寿樹には居てもらわないと困るんだ。」

「どこに必要だ?」

「そうだね、ここの文書の宛先を教えてくれたら送信するよ。」

「そこは送信じゃないな。郵送だ。」

「わかった、印刷するよ。で、どこの住所だい?」


「国立研究開発法人、中央合同庁舎7号」

「ん?……それって文部科学省じゃないの?」

「フム、我ら宗教法人はいつもそこじゃ。」

「そこじゃって……一般人はあまり携わらないようなとこだよ。……もしかして、弦賀さんは文部科学省の人とかいう?」

「やつも、そこに出入りはしておるぞ。」


「やっぱり、寿樹と鬼空のDSDを調べている機関って国の研究開発だったんだ!」

「金はみんな父親が牛耳っている。」

「どうりでお偉いさんばかり来る神社だなと思ったんだ。総理が来た時はチビッタよ。」

健太が苦笑いした。


 内心、礼儀正しくて守りが厳しい家柄だと思った健太。こんなお偉い方と結婚なんて寿樹が許しても親族が絶対許さないだろうな……一体どこの馬の骨か分からないって塩まかれるのは当然だな。


「何ぶつぶつ言っておるのだ。」

「聞こえた?」


寿樹は髪を乾かし終えたのか休憩なのか両手を後ろにのけぞってストレッチをしている。


やはり、寿樹は遠い人のような気がする。昔から仕来しきたりが多くて不思議な家系だと思っていたけど……ふっと頭をよぎった。

「もしかして、寿樹のお父さんの仕事、官僚をしているとか言わないよね?」

のけぞってストレッチをしていた寿樹が返ってきた。

「父は、政治には直接関与はない。宗教法人の包括活動をしている為、官僚と会話をするという機会はたまにあるらしい。」

「それじゃ、寿樹はお偉いさんと政略結婚させられちゃうんじゃないの?」


「あながち、間違ってないかもしれぬ。」

「え!!嫌だよ!!そんな事あったら、僕が頑張ったところで何にもならなくなっちゃう。」

「お前はもう、望と一緒になっただろう。」

「あれは、ハメられたんだ。」

まんまとはめられた健太。

後戻りできない寿樹の父親の

怖い罠だ。


「寿樹の許嫁いいなずけって誰か決まってたの?」

「赤城家だ」

従弟いとこだって言ってなかった?」

「母親の血に近いのは事実だが、離婚をしたのでな」

「そこをまた血族で統一したい父親の神経がわからないね。」

「我々の親族は、昔から近親婚きんしんこんがあって、それを誇りに思っているのが父親なのだよ。」

「それで、赤城清一郎がお顔を出したって訳なんだね」



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