白いワンピース
2020/08/20
―健太の威圧―
あつい・・・それは暑い。
気温31度の雨が降らない2週間目を迎えていた。
まっ黄色なヒマワリがうだるように咲き乱れる畑通。
寿樹が珍しく外出をした。
知人の知識を借りに一人で外出した。
知人の千影さんは 寿樹が来て その姿に驚いた。
それもそのはず、女性らしい柔らかなラインに 白いワンピース姿がまぶしかったからだ。
千影さんとの面識は、もちろん中性的な時の姿でしか会っていない。
汗でまとわりついた白いワンピースが、千影の目を奪った。
「メールでの件だが、千影の力を貸して欲しい。」
健太が側近になってから、色々な分野の知識が必要になっていた。
寿樹はより携わる知識人と会って書類を完成させようと試みたのである。
健太と「命令書」で交わした約束事もあるので、一応出かける旨を伝えて出てきた寿樹。
「御師様ですか?」
「そうだ。いや、今は降板になった。鬼空が御師を務めている。」
「では、鬼空様が御師をお勤めになって、寿樹様が権宮司という訳ですか?」
「ウチには権宮司たるものは存在しないので、私はただの居候だ。」
「いや、それはないですよ。実権をおにぎりになられたのですね。それより、以前と だいぶお違いになられまして……」
「一応女になった、これで安定してくれれば良いが。25年以上も…長いことかかったものよ。」
「そうですか、25歳で安定すれば、歴代早い方です。」
千影の書籍の並んだ部屋へ案内された。
「そうか?25で安定は早い方なのか?」
「一生、中性の方が多かったはずです。安定が速ければ、それだけ心の定着も早いと思われます。」
「心の定着か……。」
本だらけで日差しがさえぎられているせいか、なんとなくひっそりと涼しくも感じる。
寿樹は千影の家で、勉強をした。
「おぬしの知識がためになったぞ。」
「恐れ多いです。」
千影は寿樹の身体をちらちら見ながら緊張していた。
「また、問題等があればいつでも いらしてください。」
寿樹が帰ろうとした時、千影が寿樹の手を取り 止めに入った。
「もしかして、また歩いて戻られるのですか?この炎天下でやられてしまいますよ。」
千影は自分の原付バイクを出して、山の上まで送ると申し出た。
「うちの山里はコロナ患者の受け入れだぞ」
「招致しております。寿樹様を熱中症にさせる訳にはいきません。」
千影は寿樹を屋敷まで送って行った。
屋敷の玄関口に来ると、健太が慌てて駆け付けた。
「寿樹!!どこ行ってたんだよ!あれだけ一人で出かけちゃいけないって言ったじゃないか!!それにその恰好!!熱中症にでもなりたい気!?」
勢いに任せた健太の心配が弾丸のように口から出て、送りに届けた千影がビックリして謝った。
「スミマセン。」
「千影が謝る事ない。」
寿樹が千影をかばった。
「教えてもらいに私から出向いたものの、千影が送ってくれたのだ。感謝しろ健太。」
「千影さん、お気使いありがとうございます。」
「いえ、・・・ぼくは・・もう帰ります。」
寿樹がお礼を言う前に 千影は慌てて帰ってしまった。
「あっ……。」
寿樹はあっけにとられる。
本当は帰りの会話で今度景色の良い場所へ一緒に行きましょうと話していた途中だったからだ。
日時も決めずに帰ってしまったと思う寿樹。
健太は寿樹のしっとりと汗でにじんだ腕を引っ張ると、シャワーを浴びるように促す。
寿樹はわかったとシッシと手を振った。
寿樹が冷たいシャワーを浴びていると、タオルを持ってきた健太が寿樹のワンピースを見て言った。
「どうしてこんな白いワンピースを着ていくかな?」
健太が文句を放ち、ワンピースを洗濯機へ入れる。
「しかたなかろう、暑いのだから」
「暑くても、身体のライン見えるようなワンピースは着ないでね。寿樹の身体は女性になっても気持ちは女性の自覚無しだよ。」
グサッと胸にくることを言われた寿樹。
「お前だって、酷い剣幕でまくしたてるじゃないか!千影が怖がっていたぞ。」
「うそ?」
「おまえ、気が付いておらんのか?」
そういえば、寿樹の外出につい怒ってしまった。千影さんもビビッて帰ってしまってたし。
「おかげで千影にちゃんと礼が言えなかったぞ。」
「申し訳ない・・・」
頭を冷やす健太。
最近、寿樹が女体化し、服装が女性らしくなるごとに、神経が昂り始めていると自覚するのである。
どうしたんだろう?いつもの自分らしくないかも。




