健太の地雷
2020/07/25
健太の地雷
雨が降っている。
縁側で足をぷらーんとする健太。
夕飯終わり、後かたずけも終わり、みんなの入浴終わりを待つ健太。
鬼空が髪を拭きながら健太の所へ近寄る。
「涼しいな」
顔を上げる健太。
「鬼空がお風呂上りだからだよ」
健太が言う。
「健太はいつも愛されているんじゃないか?」
鬼空が 縁側に座りながら言う。
「のぞみの事?」
「松下望。あの子はすごいだろ?健太の子だからと母体を受け入れたんだぜ。」
寿樹の体内に着床したが子宮が狭くて発育できなかった、何度も受精しては流れてしまう赤ちゃん。
そんな寿樹を不憫に思って松下望は健太と寿樹の子供を自分のお腹を貸して育てるとかって出てくれたのだ。
「感謝している。」
健太は浮かない顔をする。
「でも感謝までだ、僕はある人から愛されたいんだ。」
困った鬼空。
「ある意味愛されてると思うぜ、側近までのし上がって来れてるじゃないか。」
「僕は望より寿樹がいいんだ!好きな人と一緒に居たいんだからしょーがないじゃないか!!」
健太が自分の頭をグシャグシャに引っ掻き回すと そのまま鬼空の服に掴みかかる。
「僕が 決めちゃダメなの!!」
「わかった!!おまえにはもう触れんからそう興奮するな!」
「寿樹と鬼空が好きなんだ。身長の高さや背中、長い髪もお香の香りも一つ一つに想い出が沢山詰まってる!大事なんだよ、僕の人生に色をくれた双子が……。望じゃない……僕が求めているのは……望じゃないんだ。……わかってくれよ。」
健太は鬼空の胸で半べそに泣き崩れる。
珍しい健太に鬼空は何もできず、ただ泣く胸を貸すだけ。
「鬼空は意地悪で……」
「ん?」
「意地張ってるとこ多くて、扱いにくいとこもある。でも僕に悪いことはしないって安心してるから。」
「なんだ、俺の悪口か?」
「頭良くて、スポーツも出来るのに友達作ろうとしないし喋らないし、心配の塊だった。」
「悪かったな。」
「寿樹は冷静でいつも正しい。頭が良いから僕の知らないところでコソコソしてるかも。でも寿樹を見ているだけで幸せになれるんだよ。寿樹はどんなことがあっても、僕を側においてくれる。だから、僕を引き放そうとしないで!ここが居心地がいいんだ。」
「そうだな、寿樹はおまえを側に置いているな、わかったよ。」
鬼空が健太を引きはがすと、健太の頭に手をポンとあて、
「おまえの好きは強くてかなわねえ」と言う。
健太は振り返り後ろ姿の鬼空を見つめる。
鬼空は知っているかな?鬼空から男臭さが消えて、寿樹とおんなじ 匂いがした事を……
夕方過ぎても涼しくならない湿気の多い今日。
7月27日になってもまだ梅雨が明けないなんて、おかしい。いつまで雨が降るんだ?
地方では土砂崩れや冠水災害が出ているというのに
後ろから弦賀の声が聞こえる
「健太さん、お風呂空きましたよ。」
「はーい、ありがとうございます。」
健太は縁側から立ち上がる。
夏の小さな虫が鳴いている廊下を歩いて、風呂場へ向かう。




