ケンカみたいなキス
続き
鬼空が健太の唇にキスをした。
「俺の穴貸そうか?」
瞬間背中に雷が落ちたかのように健太は固まった。
「へ?」
鬼空が真っ直ぐ 健太を茶色の瞳で見ている。
「やせ我慢だな」
鬼空が固まったままの健太に言った。
健太は コブシに力が入って握りしめた。
「ちがう……。やせ我慢ってどういう意味?」
「出来そうなこと言って 実は出来ないだろぅ?」
洗濯が終わった 音だけが 長く鳴り響いた。
「洗濯物 干しに行くぞ。」
鬼空は 健太の肩にポンと手をやり通って行く。
健太は ワンテンポ遅れて 洗濯物を手伝う。
「……まって、鬼空は 愛が無くても いいの!?」
「今の無しな!お互いの生活を守ろう。」
鬼空が勝手に約束を立てる。
健太には今の無しがちっとも無しにならなくて、困惑している。
鬼空が自分の洗濯カゴの中身が終わると ため息をついて縁側に腰かけた。
健太のカゴの中にはまだ洗濯物が残っている。
「まだ終わってないよ。」
「知ってるよ。」と返す鬼空。
「お前のカゴは おまえの分だろ、やれよ。」
鬼空が 煙草を出して 口にくわえる。
「ずるいよ鬼空は・・・」
健太が洗濯物を持って鬼空の方へ行く。
鬼空が 煙草に火を付けた。
「俺が洗濯しただけでもマシだろ?」
呆れたセリフが白い煙と共に 鬼空の口から出た時だった
その口をふさいでやりたい衝動に駆られた健太は煙草を取っ払ってキスをし返した。
下唇がほどよい厚みと硬さに思わず噛んでしまいたくなった。
鬼空が驚いて 離れる。
「僕は鬼空が好きだ。だから正式なキスをする。」
健太が胸を張って言った。
「なにドヤァってんだよ!」
とドヤ顔に腹を立てた鬼空が立ち上がって健太の胸倉を掴んで引き寄せた。
「キスぐらい、おまえに教わんなくても出来る!」
と顔を横にしたかと思うと 強引に健太にキスをする。
鬼空の熱い舌を感じた。
胸倉を掴まれながら強引なキスにただただ、鬼空の意地しか感じられない。
離れようと思った。
その時、シルエットが寿樹と重なった。
「目ぐらい閉じろよ!」
鬼空が煙草を取り返すと 胸倉を突き放す。
健太はよろめき、
「キスなのに、ケンカしてるみたいだ。」
ともらす。
「おまえが してきたんだろ……」
言ってハッと気が付く
「……俺が最初だったか」
きびすを返して洗面所へ向かう鬼空。
水道の水で口を洗い流すと、後ろに健太が立ち尽くしているのに気が付いた。
健太が泣いているのに気が付いた。
「何?泣いてん・・・」
言い終わらないうちに健太が部屋へ立ち去った。
「おい、待てよ!」
「鬼空が好きだから キスしたのに‼ ちゃんと愛情あるからキス出来たのに‼」
追いかける鬼空。
自分の部屋に入るなり障子をピシャリと閉めたが、後から追ってきた鬼空が再びその障子を開ける。
いつもそんなに開けられない障子が、この時ばかりは自動ドアより早く開け閉めされた。部屋に入ったとたん健太が叫ぶ。
「洗うくらいなら しなきゃいいのに!!」
健太は背を向けたままだ
「ごめん、洗濯物サボった仕返しかと思って」
「鬼空には、キスが仕返し程度でいいよ!」
「だから、ごめんって」
「今から鬼空の嫌いなところ、ダメなとこ、いっぱい思い出す」
「な、何いってんだ?」
「嫌いなところいっぱい思い出して嫌いになる」
スランプしてる健太の肩を掴んで振り向かせる。
「健太!」
降り向いた健太の顔はくしゃくしゃになっていた。
「ガマンしてガマンしてガマンして、鬼空の事好きにならないようにガマンしてたのに・・・鬼空に心無いキスされたなんてショックだよ。」
「すまんって、たぶん これは性格の違いってやつだよ」
健太の手にずっと握られていた洗濯物(弦賀さんの)に気がついてパっと手から離す。
洗濯物は部屋の隅にパラっと落ちて、弦賀のパンツだとわかる。
健太は再び鬼空から背を向けてうずくまる。
もう誰にも触れられたくないと言わんポーズで。
「健太悪かったって」
鬼空がなだめると
「鬼空はキスを知ってるんですか?」と敬語になる。
「ん?」
「好きな相手のDNAを取り入れたくなるのが好きってことで、それが受け入れられないのが生理的に受け付けないという状態で・・」
鬼空が話を聞く。
「人間の身体はもともと他のDNAを求めているんです。本当は誰のだっていいんでしょうが、僕だって好みはあります。受け入れたいDNAとそうでないDNAは本能的に区別してます。少なくとも鬼空からは僕のDNAは拒否られたって事です。」
背中をさする鬼空。
「細胞レベルで拒否されたんです。一人で落ち込むんでホットイテ下さい。」
放っておきたいがほっとけない。
玄関で足音が聞こえた。寿樹と弦賀が帰ってきた瞬間この時ほど嬉しく感じた時はなかったと思う鬼空。
「洗濯が途中で、一体どこへ行ったんだ?」
寿樹が人気のする方へ歩みよる。
「健太どーした?」
鬼空が寿樹の顔を見てホッとするのと、鬼空がなにか困り果てているのを察知する寿樹。
部屋の隅に落ちている弦賀のパンツは関係ないとわかって、弦賀に洗濯物の指示を出す。
「何故 私の下着がそこに?」
聞いても誰も答えてくれない。
鬼空はたばこを吸いながら 外で寿樹に内容を話す。
納得のいかない弦賀は
「洗濯物干しといてくれ」と寿樹に再度言われ。理解に苦しみながらもとりあえず洗濯物を干しに向かう弦賀なのであった。




