鬼空の身体の秘密
2020/07/18
雨が降りそうで降らない
じめっと 嫌な暑さ
たまに鳴る 風鈴の音だけが 涼しそうに聞こえる
弦賀が夕飯を食べるようにと 健太に誘った
健太が手伝おうと向かうと 今夜は出来上がっていて もう出すだけだから と言われた。
寿樹が風呂に入っている間
鬼空と縁側で蚊取り線香をたきながら お互い缶ビールでゆっくりと話していた。
健太は、昨日の事を 深く考えていた。
「寿樹と鬼空を知らなかったあの頃の僕には、性別は必要なかった、男でも女でもって事。ただ、側にいてくれる友達がいるだけで救いだったんだ。」
「ちょうど母親を亡くした時だったな」
「寿樹と鬼空が居なかったらグレてただろうね。だから、寿樹と鬼空が困っていたら力になってあげたいんだ。」
笑って見せる健太。
無言で缶ビールを飲む鬼空。
「僕、そんなに頼りにならないでしょ。だから助けられる時に助けたいっていつも思う。」
「偉いですね、健太さんは。」
弦賀が食事を運びながら健太を褒める。
「で、今日は何の謝罪だ?」
「鬼空が男だと思っていた 謝罪…。」
「ない事をか?」
「そうだね、ないとは知らなかったから。」
弦賀が片隅で笑う。
困り果てた健太が話題を切り替える。
「彼女さんは鬼空の身体の事知っているの?」
「ああ、知っているよ。」
「納得したうえで?」
「納得できないだろうな、彼女は子供を欲しがっているから。」
「じゃあ、別れて来たの?」
鬼空は鼻で笑った。
「ロスでは、お前みたいにいつまでも待ってる奴はいないよ。」
「僕は待ってる側なの?」
「寿樹の事をな」
鬼空に頭をグシャグシャねじられた。
いつもより 力を込められて。
「僕は寿樹も鬼空も力になりたい」
「俺の身体がどーなっているか興味があるだけだろ?」
「そんなんじゃない!」
「中学のはじめから弦賀の研究所に入れられ。測定、採血、バイタル、MRI、細胞採取。思春期に裸で性器の検査。アメリカの学者がわざわざ俺を見にくるんだ。まるで見世物で人権なんてあったもんじゃなかった。」
「それで中学の頃荒れてたのかな?」
「性格悪かっただろう。」
「勉強も運動も出来るのに、ひねくれてて扱いにくかった。」
寿樹が風呂から出てくる。
「鬼空、プールは行かれないけど一緒にお風呂は入れるよ。」
「そんなに人の身体が見たいのか!」
「ジョーダンだよ。弦賀さんも寿樹も知ってるの?」
寿樹は髪の毛をドライヤーで乾かし聞こえない。
「いいか、健太。俺には産まれたときは穴があった。」
「あな」
「女の子のな…」
「穴ね」
「万が一の乳房が膨らむ前に、ホルモン注射を受けてペニスを付ける準備をしていた。」
「鬼空も女の子になろうとしていたの?」
「いいか健太、人間ってのはな女にないりやすいんだ。ペニスを付ければ、膣も次第になくなっていくと思っていた。しかし、無くならなかった両性具有になってしまった。」
「鬼空様は両方の性を持つことに負担がかかりすぎてしまったんです、後々取り外してしまいましたけど。」
弦賀が合間に注釈を入れてくれる。
「鬼空の性的欲求はどっちだったの?」
「染色体が男だから、男だ。」
「それはお気持ち次第だと思いますけど」
弦賀が言う。
「じゃあ、女の子が好きだったんだね。」
「性欲のはけ口がわからないまま、情緒不安定になってしまった。」
「かわいそう。今も鬼空はペニスが無い状態だよね、どーやってその……解消しているの?」
鬼空が健太に顔を近づけて言った。
「な・・い」
健太は驚いてひきつった。
「無理だよ僕だったら生きてらんない」
「弦賀から薬を出してもらってる。」
「何の?」
「性欲が収縮する薬だろう」
カプセルを見せる。結構おおきなカプセルだった。
「僕も欲しいな」
鬼空が笑った。
「おまえにはやらん」
弦賀がやってきた。
「健太さんはお飲みにならないで下さいね。それは女性ホルモンの薬ですから。」
「え!」
「え!!」
健太より大きな驚きをしたのは鬼空。
「聞いてないぞ弦賀!どーゆーことだ」
「鬼空様が効かないから何度も薬を変えましたでしょう?もう他に薬が無くなってしまって、それでも何か出せとおっしゃられましたから女性ホルモンのお薬をお出ししました。」
「なんてことだ」
「一番落ち着いてらっしゃるのでそれでよろしいかと」
弦賀がさっさと寿樹へ料理を運びに行く。
「クソ!」
「鬼空大丈夫?」
鬼空のショックが隠しきれない。
「そういえば、最近ヒゲも薄くて丸くなった気がするね」
健太が顔を近づけて見る。
鬼空は固まったままだ。
「一緒にお風呂入る?」
とアクションをつけてみた。
「入る訳ねーだろ!そのジョーダン2度と言うな!!」
鬼空はプンプン怒って風呂場へ消えていった。
「あいつ、気が付かなかったのか?」
寿樹が食事しながら弦賀に聞いた。
「とりあえず、身体が安定したことに喜んでいましたからね。」
「女になるんだな」
「うーんどーでしょう」
健太も食席について夕飯をいただく。
なんて会話なんだと思いながら。




