健太の夢
―健太の夢―
雨
止んだと思えば
強風
健太は真成家の簾の隙間から、寿樹が見えるのを
目を凝らして見ていた
強風が味方して寿樹の姿が見えた時はラッキーだった
健太は寿樹の側近を降ろされ、一般客と同じように下からカリスマ寿樹のお出ましをあがめている。
寿樹の側近の替りはまだいない
鬼空が寿樹の影武者をやっていて必要ないらしい
弦賀さんは用事があって姿がない、本当に深刻な用事のようだ。
僕は如月じいが他界して、人手が無くなったから補充として雇われた。
そのうち、側近の名までもらってウホウホして暮らしていたが、それも今日までだ。
僕が寿樹との婚約をしつこく迫るものだから、役職を降ろされてしまった。
いわゆる真正家の敷居をまたぐな的な事だろう。
しょんぼりして、真正家の庭の石を踏むと 一般客の人いきれに押し戻されて前に進めない。
なんだここは、駅地下の繁華街か?
DSDにより、男女どちらとも捉えられる寿樹の性。
昔はそういった人間が神としてあがめられてきたそうだ。寿樹は生まれながらにして神童で、色が白く人形のような顔立ちから今でもカリスマ的な人気が高い。
今日も寿樹は美しい。
簾がフワッと浮く時にチラッと見える見慣れた寿樹の姿。
今日は遠くに映る。
僕はこうやって寿樹を遠くから眺めるのが丁度いいのかもしれない。
風と共に思い出す寿樹のお香の香り。
僕を待っていた時の寿樹の振り向き様とその時の言葉。
もう一度声を掛けられたい。
もう一度掛けられたら、喜んで振り返る。
夏でも春がやって来た気分になって舞い上がる。
僕は寿樹を好きだと思って生きる男。
寿樹を好きで良かった。
と、目が覚めた。
とても深刻で胸の締まる夢だった。
現実に戻ってきて、あれは夢だったんだと振り返る。
そうだよね?念を押して、怖がる。
もし、あれが本当だったらと。
そんな事の無いように、いつまでも寿樹の側に居られるよう全力を尽くそう!嫌だと言われた結婚をいつまでもしつこくしてちゃあ駄目だ。
鬼空が寿樹のところへ来た健太に、二度見をする。
「どうされました?」
弦賀が鬼空に聞く。
「いや、健太が珍しいなと思って。」
「どこかおかしいのですか?」
「いつもは結婚するべきだって押し売りするのに、今日はケロッとそれを忘れちまってるみたいな接し方だ。」
弦賀がクスッと笑った。
「鬼空様も健太さんの事よく見ていらっしゃるのですね。」




