寿樹の子供じゃないの?
2020/06/10
―寿樹の子供じゃないの?―
雨が降って、
雨が止んで、
雨が降って、
雨が止んで……。
健太が 側近となって 住み込みで 働いていたが 真正家へ しばらく行かない日があった。
それは……
寿樹が僕を拒否したからだ。
「胸が痛い……」
健太は仕事帰りに真成家に寄る。
「本当は自分が一番辛くないかい?」
寿樹に聞く
「そんなことはない、早く家に帰って子供の面倒をみてやりなさい。」
固いセリフを言う寿樹に疑問を持つ健太。
「僕は寿樹が心配だからここに居る。」
沈黙が続いた。
寿樹がため息をついてきびすを返す前に健太が言った。
「娘の!子供の事をよく気にかけてくれるね。最近、娘も大きくなって……寿樹に似てきたように思うんだ。」
「思い違いだ。」
「大きくなって 気が付いたんだ」
寿樹が席を立とうとする。
「待って!寿樹は何か知っているの?」
寿樹の着物の袖を掴む。
「僕の髪の毛は天然パーマだ。でも、娘の髪はストレートなんだよ。
望も本当はかなりのくせっけで それを隠してストレートパーマをかけている。どういうことなんだ?ねえ、望も寿樹も本当は知っているんでしょ?」
着物の袖を引き寄せる手に力が入った。
寿樹はよろけるように体制を崩し パッと健太を睨み見る。
「おまえに話す事などない」
握られた袖を振りほどき、きびすを返す寿樹。
健太は振り絞って言った。
「寿樹の子どもじゃないの!!」
瞬間、寿樹の身体がこわばった気がした。
健太はその異変を見逃がさなかった。
「……もしかして、僕と寿樹の間の子?」
健太と寿樹の間に子供が出来ていたとしても おかしくはなかった。
逆に子供が出来ない方がおかしいくらいだった。
健太はいじらしくなって寿樹をぎゅっと抱きしめた。
「自分で何でも抱えないで、僕は頼りにならないけど、ずっと支えたいし支えていく。
寿樹の背負っている御師の役目がどれだけ大きいものでも、僕は君の影になっていくつもりだよ。一人で抱えないで、寿樹は僕を受け入れてくれた、やさしい人だよ。」
昔からそうだった。
寿樹が針の先のように過ごした中学時代を 健太はいつも温めてくれた。
気を使いつくしてくれた。
だから健太は今でも御師の助手として必要とされた。
それでも 御師の運命はそう変えられるものではなかった。
性別のない神童をして カリスマ的な信仰を集め、収入源の大事な一つとされ 父親に大事に育てられた。寿樹は一人で 神職以上の大きなものを抱えていた。
「言いたくないなら何も言わなくていいよ。ただ、寿樹はむかし、神童として奉られただけの理由があったの?双子も何か理由があるの?」
産まれながらに性器を二つ持って生まれてくることは全米にもまれにあることだ。しかし、寿樹と鬼空のように双子で性器の両持する赤ん坊は研究室に入れられるほど貴重な存在だ。
父親は双子を隠し、一つの赤ん坊を御師に奉った。鬼空は研究室で預かられ 資料にされる期間が続いた。
健太は その夜 寿樹にDSD疾患の話を ほんの一握り話してもらった。
その時の 健太には まだ その内容がハッキリつかめなかった。
ただ、 寿樹が隣に居て 温かかった。
酷く 疲れていたせいか 知らない間に 眠ってしまった。
私の 説明が 子守歌となったのか? 健太……。




