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健太の日記  作者: 蔓草登上
25/111

妖艶な美の微笑 中編

続き 





 草刈り 草むしり をして 道が開けた。

崇敬者すうけいしゃはまだ 参拝に来られているようで

お地蔵さんに お団子 お社に線香とロウソクの跡がまだ 新しかった。


 神社が廃業してしまっても 崇拝者は今までの行いを止めることなく ずっと通い続けるのだろう。

なんだか 自分を見ているようで 切なくなった。

 寿樹の心に僕が居なくても 僕は君の所へ 通い続けるだろう。

それは、君がNOと言っているのに 宛が見つかるまで 今までどうりの行動をとってしまうように……。



どれくらい 無心に草むしりをしていただろう。

とっても とっても 草は永遠にあるように 思えてしまう。


(まだ 刈るの?)と顔を上げて寿樹の方を見ると。

寿樹もこちらを見て(いいよ)と合図してくれた。


二人とも声の 届かない所にいたと思うが、通じていると思う。


ゴミ袋もパンパンになって 車に積めるか?の量になっているし、あとはキリの良いところで 止めるしかなかった。



挿絵(By みてみん)



流れる透明な清流の中に キビキビと泳ぐ小魚の群れが見えた。

寿樹は 持ってきた行衣ぎょうえを羽織ると 小さな滝の水を身体に注ぎ 滝行に入って行った。

僕が それを眺めていると みそぎをしないのか?と滝の音に消されながらも そう言っているのが 聞き取れた。


今の僕に 罪や けがれを落としてしまったら いけない気がした。

「冷たそう……」

と言ってごまかして みたものの

寿樹は 滝つぼの水を手ですくい 僕にひっかけた。

「わあ!!」

「冷たいに決まっておろう。」


健太は下着も取っ払って 行衣になった。

意を決して 滝つぼに入る。


 冷たい 息が自然と 止まる。

寿樹のご褒美が消えて行きそうなくらい 浄化されていく。

いやだ いやだ いやだ……

滝の水を 背にあてて ここで 無心になる。

頭から 重みのある 滝を受け 水しぶきをまき散らす。

心まで 凍えそうだ。


寿樹は 長い髪の水を絞りながら 上がって行った。

僕も 後を追って 出る。


挿絵(By みてみん)



滴れ落ちる水を 払うかのように 早歩きで歩く寿樹。

身体に 張り付く行衣を眺めながら 後を追う健太。眺めはいい。

少し 息は切れるが 早歩きをしたら8分のところに 元宮司さんの住んでいた家があり 僕らはそこで 着替えるのである。


走ってきたので 身体は 少しは温まった。

寿樹が行衣を落とし タオルで身体を拭くので たまらず寿樹を抱きしめてしまった。

「早い」

「寿樹が誘ったような気がして……」

寿樹が 冷たい行衣の健太を嫌そうに 突き放す。 

「お前の方こそ 髪を乾かすなんぞ言って いやらしい目で見ていたではないか。」

あ、バレてた。

「あんなに テレビに夢中になってたのに……」

「おまえの事は お見通しだ。」

 

行衣を脱いで 身体を拭く。



挿絵(By みてみん)



寿樹の身体は 痩せ気味の骨張った形から 丸みをおびた女性らしい形へと変わり、乳房も一般女性と変わらない膨らみをしていた。

健太は 何となく 罪悪感に 包まれた。


「寿樹、もうやめておいた方が良いかも。」

「どうしてだ」

「その、 寿樹が 女性の身体になってきているって いうか。」

「……」


「僕は 今結婚している。寿樹を本命として正式に迎えたいんだ。」

「望と離婚したいのか?」

ゆっくりうなずく健太。


「子供がいるではないか」

「責任取って 結婚しちゃったけどね。僕にはあの結婚が腑に落ちないんだ。」


寿樹は 白衣を羽織って なにやら 重そうに頭を上げた。

「それは そうだろうよ。あの結婚は 私が加担している。」

「直ぐに 神前式を上げてくれたもんね。」

「……」


「正直、寿樹におめでとうって言われた時は ショックだった。」

寿樹は健太の顎をとって 顔を上げた。

「お前、本当に面白い奴だよな。」

寿樹の 久々の不敵な笑みが そこにはあった。


あ、また何か違うんだ。

こ―いう時って 必ず僕がヘマして 寿樹が笑っている時だ。


寿樹が僕のおでこに キスをした。

「まだ 大丈夫だ。 私は正式な 女性ではない。」

そう言って、寿樹が僕を包んでくれた。

練り香りの無い 素の寿樹の香りだ。


寿樹は また一つ健太に隠し事をした。






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