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健太の日記  作者: 蔓草登上
24/111

妖艶な美の微笑 前編

2020/05/10



母の日に何もしない健太。

健太に母親は居ない。

中学に上がる前に、亡くなっているからだ。

その代わり ばあちゃんに その行事を行っていたが 今やそのばあちゃんさえも他界した。


 それを知っている寿樹は中学時代から 半分親代わりのように 健太を見守って来た。

健太は 頼りになる寿樹に 半ば甘えられる 面もあって好きだった。

残りの半分は 友達という不動の位置から動くことはなかった。


 寿樹は 朝から 健太をドライバーと称して 連れて出て行った。

行先は 近くの山の神社 廃業神社だ。

上下ジャージに手にはかまを持って。

あとは、昼飯に行衣ぎょうえ、ゴミ袋にタオルは必需品だ。

なかなかの 1日重労働だ。


 運転しながら

「寿樹は 無休だね。他の神社の掃除なんて 雇えばいいのに。」

「自分の目で見て 確かめなければならん事もある。祈祷も出来るし 私が行った方がいいのだ。」

以前も 健太をドライバーとして奉職へ向かった事がある。

だいたいが 草刈りと神社の 修復作業だ。

そんな日は 必ずといって 寿樹からご褒美がもらえるので 断った試しがない。

今日も ウキウキ気分で出かけるのだ。


 車内では寿樹の母親の話となったが 寿樹には彼女なりの母親の見方があって

母を亡くした僕には あまり語ろうとしない。

「わたしは 誰にも甘える事なく育った。」

「言ってたね。中学の頃から自分は『冷徹』(れいてつ)なんだって。あの言葉にびっくりして

 ずっと 君を追っていたよ。」

「追うって どうゆうことだ?」

「冷徹な事よりも 弦が張り詰め過ぎて いつか 飛んでしまわないか それだけ気になっただけだよ。」

「おまえには わからん。私の冷徹さが・・・。」

小さくうなずいた 健太。


車は 山道をくぐり抜け 空気が土臭い匂いに変わった。

「この先、道が崩れているかもしれないから 車はこの辺で停めておこう。」

「Uターンできなくなっちゃう事 考えたら もう停めておいた方が良いかもね。」

参道の砂利は 濡れていた。

健太が 荷物を運び出す。

寿樹が 持ってきたハサミで参道を邪魔する草刈りをしながら 先に進んでいく。

健太が 後からついて来る。

「思ったほど じゃないね。」

「そうだな、 誰か 崇敬者が いるようだ。」

ほったらかし状態の神社は 歩く山道も見えないくらい 草が生えているものだ。

ここは、誰か来て 踏み跡が 草の勢いをゆるめていた。


「蛇に気をつけろよ。」

「はい。」

ビビる健太。


 湿気は 先に進むほど強くなっている気がした。

健太は 苔むした参道を歩いている間、ずっと緊張していた。

寿樹は お金にならない 草刈りやメンテナンスの大掛かりな仕事を頼む時は その後に 身体で払ってくれる と言っていいのだろうか…

僕にとって ご褒美と解釈している。 

 そのご褒美は正直欲しいのだけれど それは間違ってるといったら 却下されかねないので 僕として寿樹を 気持ちからゲットしないといけないのに 現実叶わない虚しい状態をズルズル引きずている。

挿絵(By みてみん)

 そうこうしているうちに やしろが見えて来た。

「荒らされても いなくて良かったな。」

寿樹の突然の 言葉に ドッキッとする健太。

「う、うん。」

動揺が 隠しきれない。

 

 廃業神社は 草ボーボーで 道作りから始まって  社なんて崩壊してる挙句に ヤンキーに侵入されて 落書きされてるなんていう 先の見えない状態の所もあるからだ。

とにかく 大変な作業なので 1日では終わらない事もあり、寿樹のご褒美が何よりの目標地となるのだ。


 夏になる前の 今頃から作業をやり始めないと 草は背丈にも伸びるし 炎天下の熱中症にも気を付けなければならないから毎年この位の時期だ。


「聞いてるのか?健太。」

「え?ごめん。もう一度言って。」

明かに聞いてなかったのに 草を踏む音で 聞こえなかった振りをした。


「根や葉は その様に障害があれば それなりに共存していくのだ。」

寿樹の指した 小川横に捨てられた針金の中から たくましくも 針をぬって生える草木の姿があった。

「はぁ、僕だったら どかしたいな。」

「この根や葉、幹や茎に 手はあるか?」

「ないよ、草木には この針金は 外せない。」

人間の手でなら 直ぐに外せるものを 

かわいそうに この草はすり抜けられても 今から生える 木の幹はやがて 大きくなり 針金が身に食い込んで 最後には 枯れてしまうのだろうな・・・。


と考えていた時 寿樹がこっちを見て 言った。

「人間の世界でも 出来ぬ事は ないか?」

「!?」

いきなり 自分たちの 身の回りの 事を問いてきた。

そうだ、草木は 人間が取り除いてやれば 助かる。

でも 人間が出来ない 取り除けないものを 一体誰が 取り除いてくれるというのか?


 確かに 僕に 出来ないものが 沢山ある。

「目に見えて 手で 払えるものならば それは それでいいが・・・」

寿樹が 何か問題を 送って来る。


健太には ふつふつと出来ない問題が いくつも上がって来た。

「ある!人間は なんでも 出来るように見えるけど。 僕にとって 大きくてできない事が沢山ある。目に見えない事も 欲しくても手に入らない無形もある。」


寿樹が 近寄って来て 僕の頬にそっと 手を触れた。

「それが 運命さだめだ。」

と言った。


背筋が凍る思いがした。

なんか よくわからないけど

僕にとって 最悪で 過酷な状態を 示された気がしたからだ。

それが 運命さだめって・・・寿樹は 手を差し伸べては くれないの?


僕は我武者羅に 目の前の 針金を 取れるだけ 取ってやった。

でも

僕の心の針金は 取れる事は無かった。










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