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健太の日記  作者: 蔓草登上
109/111

ホルモン剤をすり替えた

挿絵(By みてみん)

BGM:♪[天ノ弱feat.GUMI]164

 弦賀つるががこっそり、ホルモン剤をすり替えた。

鬼空きくうが打っていた男性ホルモンを 女性ホルモンへ変えたのだ。

あれだけあった筋肉も柔らかみをもって 胸板であった乳房が 膨らみを持ち始めていた。



 本来、女性になろうと身体は変化していっているので 女性ホルモンが入ると拍車はくしゃをかけるように 鬼空の身体は 女性へと変化していった。


その変化に鬼空は、今日になってやっと気が付いたらしい。

風呂から上がって裸で弦賀を探している。




僕は鬼空を見て ゴクリと唾を飲み込む。


引き締まった体が乳房ちぶさを付けて 歩き回っているからだ。




「弦賀!弦賀はどこ行った?」


この剣幕けんまくで 弦賀さんはとっくに 逃げた。


僕の部屋で身を隠す弦賀さんがシッと口に指を当てる。




弥生が大手を振って 鬼空の姿を喜ぶ。


「空ちゃん、胸 大きくなったね。」


「だろう!最近眠いから よく寝ていたら こうなった。」




鬼空と弥生くんの会話を聞いていて疑問に思った。


「胸は 寝ると育つのだろうか?」


「いや、男性ホルモンから 女性ホルモンへチェンジしたから 体に大きな負担がかかっています。それが、鬼空さまにとって眠気として症状が現れたのだと思います。


しかし、身体への負荷は相当大きかったハズなんです、吐き気とか・倦怠感けんたいかんとか、それをいともたやすく眠気と言われている事に 鬼空さまの鈍感どんかんさを感じます。」


「鬼空は鈍感なの?」


「多分、男性ホルモン剤を継続けいぞくして打っている方が 本人には 辛かったかもしれませんね。」


「じゃあ、女性ホルモン剤の方が 楽になったって事?」


「おそらく。」


健太には 弦賀さんの言う通り、鬼空の男性ホルモン発作が起こらない様に こっそり 食事に女性ホルモンを混ぜて提供する事に加担した。




「もう、鬼空さまは 注射器を使用しなくなります。健太さんの手料理にこっそり お願いしますね。」


「は、はい。」


これで、良いんだ。


鬼空は女性になろうとしている身体を 無理に男性ホルモン剤で抑制よくせいしていた。


ペニスの無い鬼空に精子が造られても吐き出し口がないため、それを処理するのに精神は不安定になりイラつき 我を忘れて人やものに当たり散らすのだ。


精巣をとってしまえば良い話だが、コロナで日本へ帰国された鬼空は 今は手術の仕様しようがない。




 鬼空の心にはそぐわないが、これも鬼空の身体の為なんだと 思って健太は弦賀さんのいう通りにした。




「空ちゃん、オレはそっちの方が お役に立てる気がします。」


今まで、男らしい身体に 弥生は困っていたらしい。


「何を言ってやがんだ!俺の身体が女になろうとも 俺の好みは女なんだよ!」


「じゃあ、鏡を見てればいいじゃないですか?」


健太が ぷっと笑う。


「おう、健太、弦賀を見たか?」


「弦賀さんなら とっくに 家に帰ったよ。」


「あいつ、いつも無駄に泊まっているクセに…。」


「鬼空の男らしい姿、僕は好きだよ。でも、今も奇麗だと思うよ。」


「ショートヘアーの似合う大人の女性って好きだな。」


喜んで言う弥生を見て


「不納得だ!不納得だ!!弦賀といいお前ら、俺が女になればいいと思っているだろう!くそー!くっそーーー!!!」


と鬼空が叫んだ。


「鬼空、緊急事態宣言延長したから、外へ出る事もないし、少しゆっくりしてなよ。」


寿樹が居なくなってから、男ばかりの神社も 何となくむさくるしかったのか、弥生と健太は 鬼空の女返りに何の反発も無かった。

むしろ、せめて目の保養くらいにと歓迎だったらしい。










 その晩サーという雨の音で健太は空けていた窓を閉めに行った。屋敷が古いので水分を含むと閉らなくなるからだ。


夜の空が妙に明るいのに 不気味に思いながら。


パソコンをいつものように入力していると、いつの間にか雨がザーっという音に変わり、しばらくたつと大きな音がゴロゴロゴロと鳴り響き始めたので、これは雷が来たぞと思って、パソコン作業を速めた。


すると、隣の部屋から鬼空が顔を出した。


「おい、健太。」


言っていなかったが、鬼空と僕の部屋はふすまで区切られているだけなのだ。


いつでもお互いを鑑賞かんしょう出来ると言えばそうなのだ。


「何?」


「弥生がうざい」


思わず吹き出した。


そういえば、弥生くんは大の雷キライだとは聞いていた。


「女の身体になると、奴が喜ぶからうざい。」


「追い払えばいいじゃん。」


鬼空が姿を消した。


向こうの部屋で喋り声が聞こえる。


すると、開けはなたれた障子から、布団がズルズルと運び込まれた。


「ちょ、ちょっと何やってんの」


焦る健太。


「おまえの部屋で寝かせてくれ。」


「…べ、…べつに 良いけど」


弥生くんは鬼空の部屋に居るらしいけど、どうしてこっちへ来ないんだろう?

暗闇の中、雷が鳴るたび身を縮めている様子が見えた。


「怖くて動けないの?」


「俺が殴ったんだよ!」


「えぇ!!」


もう、パソコン入力なんてどーでもよくなってきた。

保存をして電源を落とすと、間一髪で辺りが 真っ暗となった。


「停電だ!」


隣の部屋で 悲鳴が聞こえる。


「弥生くん 大丈夫?」


健太が 声を掛けると 隣辺りで鬼空の声がした。


「あいつは 大丈夫だよ。停電に怖がってるだけだ。」


「明かり、明かり。」

健太が、スマホを探そうとしていると大きなものに当たった。


「暗い時に動きまわるなよ。」

鬼空が、座っていたらしい。

腕を引っ張られて、その場へしゃがみ込む。


「目が慣れて来るから、ジッとしてろ。」

それも、そうだった。

「う、うん。」

こういう冷静なところは 寿樹とかぶるな。


「うえーん、空ちゃんどこ行ったのー!」

弥生の泣き声が聞こえる。

案の上、健太よりもテンパっているらしい。

「放っておけ。」

鬼空が、先に言うが僕は何を助けてやるつもりも無かった。


窓も閉めてしまったし、扇風機も止まっているし、熱さのガマン所だった。


「あついな。」

「うん。」


ピカっと光るのとゴロゴロうねり鳴る雷がほぼ同時になった。


目が慣れて、スマホがパソコン台の隣にあるのがわかると、電源を入れた。

「あった、スマホ。」


明かるくなった瞬間 綺麗な顔がすぐソコにある。

内心、ドキっとする。

鬼空はズルいな、寿樹とそっくりな顔をして……。


(好きだ)


何度と押し殺して来たセリフを もう消さなくていいんだと自分に言い聞かせた。


「それはライトか?」


「あ、あぁスマホのライトだよ。」


随分ずいぶんと明るいものだな。」


「その変わり、電池の消耗しょうもうも早いけどね、いざという時に役に立つでしょ?」


「俺のスマホにも付いてるかな?」


「あると思うよ、鬼空のスマホにも……。」


その時、電気が復活した。


前から突進してくるものが見えた。


「何を二人でイチャイチャしているんですか!」


とたん 鬼空にギュっと抱きつく弥生。


「健太さんには、寿樹さんがいるでしょ?空ちゃんには 手を出さないで欲しいです。」


胸に刺さった。


人ってどうして 一人だけしか愛せないって定義があるのだろう?


生きてきて 誰もがそうだと思い込む。


大事なモノって 僕には沢山ある。


友達もだけど 鬼空は 僕を精一杯助けようとしてくれた。


僕はその恩に応えたいし、それ以上に鬼空を愛したい。


でも、鬼空の心は 僕を友達以外みられないらしい。


そんな鬼空を、弥生くんに取られたくはなかった。



「あっつい!くっつくな!!」

「空ちゃん 汗かいてる!」

喜ぶ弥生。

突き放す鬼空。


ゴロゴロ雷鳴が響いては弥生が抱きついて 鬼空に殴られる。


本気で殴っているようで、鼻から血を流していた。


でも、そんなの僕は心配する値に入らなかった。


「弥生くんは部屋へ戻りなさい。」


「嫌です。」


僕のいう事は聞く事は無かった。

だから、鬼空と二人で言うのだ。


「コレは命令です。次にいう事を聞かなければ 直ぐに屋敷から出て行ってもらいます。」

御師と側近の同意見は 立派な命令になる。

いう事を聞かなければ 解雇なのだ。


スゴスゴ身を引く弥生。


鬼空が自分の部屋をそっと覗く。

まだ、弥生の姿があるらしい。

「あいつぜってー解雇。解雇。」

「雷が鳴ってるから 帰れないんじゃないの?」

「無理!俺、ここで寝るから。」

「あ、うん。」

少し嬉しい健太。いや、本当はすごく嬉しい気持ちを自分でも隠していた。


健太も布団を敷いて横になった。

「珍しく、雷が続いてるね。」

「あぁ、普通もっと夏なんだけどな。」

「そうだね、6月でこんな雷ってないね。さらに珍しい。」

横で話をしながら眠るのは 好きだった。

夜はいつも 一人で考えて あーすれば良かったとか こーすれば良かったなどと いらない考えを起こしてしまいがちだ。

僕は、昔 おばあちゃんと一緒に寝ていた夏休みの恐かった雷の話を鬼空にした。


鬼空はおとなしく耳を傾けていた。

「鬼空、寝るときは隣に居て欲しい。」

「なんだ?H話か?」

「ち、違うよ。誰かと話ながら眠れるのがこんなにもいいものかと思っただけだよ。」


「俺が隣で寝る時は 弥生が来る時だな。」

「そうか、一人で寝たいもんね。」

「一人はいいぜ。へーこいて、股かいて、鼻ほじれっから。」

「そこまで 言わなくていいよ。たまにね、たまに気が向いたら キャンプしてるみたいに 寝よう。」

「キャンプか、いいな。夜空を見ながら寝るのか。」

「それ、実際は蚊に喰われまくりの夢の話だよ。」

「そっか。」

鬼空は眠くなったらしい。

僕は、喋らなくなった。


雷は 長くは続かなかった。


二人の眠りと共に、遠のく雷の音はもはや 聞こえなくなっていた。








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