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健太の日記  作者: 蔓草登上
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妊婦の激痛

挿絵(By みてみん)

 健太けんた神具しんぐの片付けに作業場へ入ると、そこに弥生やよいくんと寿樹じゅきの作業姿はなくて、寿樹が小さくまるくうずくまっていた。


慌てて駆け寄る健太。


「寿樹!どーしたの?」


寿樹はとても痛そうにしている。


「救急車呼ぼうか?」


「それはいらない。痛みが止んだら部屋へ戻ろうとしているのだが、一向に痛みが良くならなくてな。」


それは、大変だ。

健太は辺りを見渡した。


「こんな冷える部屋に1人でいるからだよ、一緒に手伝ってと伝えたのに弥生くんはどこ行ったの?」


外掃除が終わったら、寿樹の作業場手伝いって伝えたのに、まだ巫女さんとお喋りを続けているらしい。


それより、あんなヤツほっといて寿樹を弦賀つるがさんにみせないと!






健太は寿樹を抱えて診察室まで送る。


寿樹のおっぱいが僕の背中にめいっぱい当たって大きくなったな……と感じる、いやいや、本当に痛いんだなって思った。


こんな時に不謹慎な!と頭の中の天使が僕の悪魔を追い払った。





「痛みが強くて、筋肉が疲れてきた?」


弦賀さんが寿樹の腹部を触って容態を聞いている。



「エコーで診た感じ特に異常はみられません。そこまで痛いのなら、薬で楽になって頂いた方が早いかもしれませんね。」



寿樹の額に冷や汗が出ていた。珍しい。

これは、かなり痛そうだ。


「どのくらい前から痛かったの?」

健太が聞いてみる。


作業場へ入る前から少しずつ痛み出していたらしい。


かなり前から痛かったのに、しかも痛みで動けなかったなんて可哀想なことをさせてしまった。


健太が気づいてやれなかった事に自分を叱咤する。



寿樹は自分の事で精一杯のようだ。


痛みに耐えながら、寿樹が弦賀さんに聞いている。


「弦賀、お産はもっと痛いのだろう?」


「さぁ、わたしは産んだ事が無いので。」



確かに、ここには参考になる人が誰1人といない……居なくない!


あっ!と巫女の望が居ることを思い出した。



「僕、望に聞いてみる。」


健太が目を輝かせて宣言しているのを、寿樹はうっすらと目を開けて見ていた。






外へ出て、受付の場所まで走った。


弥生くんはビックリして話を聞いていたが、彼を受付に残し、望を寿樹に合うよう向かわせた。




「お産も痛いですが、女性はその痛みに耐える為に前もって激痛が来るものらしいです。」


健太も弦賀も聞いていることすら耐え難いものだった。


「男性は痛みに弱いのはね、子供を産まないからなんです。」


フムフム


弦賀さんと相づちをした。



「女性のアソコから、赤ん坊の頭は出てきます。想像して下さい、その痛みです。」


「イヤイヤイヤ、想像超える痛みだよ。」


「そう、だからね。女性は痛みで気を失ってしまわないように痛みの訓練をするんです。」



弦賀さんと僕は顔を見合わせた。


思ったことは多分一緒だろう。


女に産まれなくって良かったって。




「寿樹さま、お産はもっと痛いです。耐えられますか?」


「耐えられる、耐えて見せる、この位。しかし、少し疲れた、痛みで力みすぎた、痛みを忘れて筋肉を休ませてやりたい。」



「寿樹さま、それが出来れば きっとお産は上手く行くハズでしょう。」



望が、ニコリと笑顔を見せると、寿樹の手を合わせるように握った。



何?何?


痛みが究極になると、無の境地まで出て来るの?


弦賀さんと僕が苦笑いをして、冷や汗をかいた。







 望は弥生くんに寿樹さまの見守りをするよう厳しく言った。



弥生が駆けつけて、寿樹の元へ謝罪に行く。


健太と鬼空が肩を貸して寿樹の部屋へ連れて行くところだった。


「寿樹さま、スミマセンでした。」


寿樹は気にするなと答えた。


それだけでは気が済まない弥生は、部屋まで見送った。




何度も謝りにくる弥生に、布団へ横になった寿樹は


「弥生が居ようと居まいと 結果は同じだ。だから気にするでないぞ。」


「……。」


「もう、いいてさ。さ、帰って夕飯の準備しろ!」


鬼空が弥生に言う。




「寿樹、お腹を温めるもの持って来ようか?」


健太が寿樹の看病に懸命になる。




弥生と鬼空はキッチンへ向かう。


「健太さんは自分の子供じゃないのに、寿樹さまのお腹の子に手を掛けるんですね。」


弥生が鬼空に話しかける。


「今まで、子宮外妊娠をして流産ばかりだったから、まともに育つ事が優先してんじゃないか?」


「そういう過程があったんだ。」


弥生が納得してエプロンをかける。


「それにしても、健太さんって……」


「ん?」


キッチンに居る弦賀にも聞こえる。


「優しすぎじゃありませんか?」


弥生の質問に鬼空と弦賀が同じ答えを出した。


「健太はそーいう奴なんだよ。」


「健太さんは、そういう方です。」




「み、みなさん 知ってました?」


「あぁ」


「えぇ」












健太の持ってきた湯たんぽのおかげか、痛みの意識を飛ばして少し寝ることが出来た寿樹。


気が付くとそこに健太が腰をさすっていた。


「ずっとこうしてくれていたのか?」


寿樹が問う。


「かなり疲れていたみたいだね。痛みが和らぐと同時に寝入っていた感じだったよ。」


この男なら、私が苦しい時に助けてくれると思った。


「おまえの子ではないのだぞ、そこまで熱心にしなくとも……。」


「いいんだよ。苦しい時はお互い様だよ。」


健太は笑って見せる。


寿樹は健太から目を反らした。


「寿樹が、僕と友達になってくれなかったら、僕はここに居なかった。」


「まだ、そのことを…。」


「中学の時、不良に走っていたかもしれない。」


「そんな事あるか!?健太は不良にはならない。」


「なるよ、寿樹は僕を知らないだけ。」


「健太。私はお主を道具の様にしか思っていなかった。」


「そんなの、どう想われてたって片思いに違いはない。僕は中学の時、君に恋したんだ!」


南天の葉が風に触れた。




寿樹は、僕を知らなすぎた。


僕は、醜くて汚い男だって、知ったら君は逃げてしまうから 黙り続けている。


一生懸命、君の側で手伝って、君の為に尽くして、何でもいいよと言って。


君に必要とされる存在になろうと必死で、付いてきて。


君は、僕と離れてやっと気が付くのさ、僕が必要だったって。




「さ、元気になったら 次は御飯食べに行こう!2人分は食べないといけないからね。」


寿樹は健太に手を引かれて行った。








食堂では、健太と寿樹の仲の良さが羨ましいと 弥生が言っている最中だった。


「くぅさまも子供作りますか?」


「俺、出来ないから。」


「そうですね、鬼空さまはまだ完全じゃないですね。」


もぐもぐ食べる鬼空に


「こんなによく食べるのに 赤ちゃん出来ないなんておかしいや。」


と弥生が言うので弦賀が笑った。




健太が寿樹を椅子へ座らせるのを見る弦賀が言った。


「よく考えると、カップル成立なんですかね?」


と言ったので、


「どこが!!」


と鬼空と健太が一斉に応えた。



夜、寿樹が心配で隣で一緒に寝る健太が手を繋いできた。


「今は、大丈夫?」


「すまんな、私のせいで」


「気にしなくていいよ。寿樹の身体が大事だもん。」


健太がお腹を擦る。


「ちゃんと元気に産まれて来るといいな。」


「健太、お前ってやつは、どこまでお人好しなんだ。」


「お人好しなんかじゃないよ。しっかりと寿樹が好きだからだ!」


寿樹は健太の手を握り直した。


「私はおまえに何もしてやれない。」


「居るじゃないか!今僕の目の前に。」


健太は寿樹の上に被さるように覆った。


「居るだけで充分だ。」


寿樹の白い肌が近くなる。


寿樹の淡麗な顔が近くなる。


「好きだ。寿樹。出会った時から……ずっと。」


そっと、抱きしめたハズだった。


寿樹の香りを嗅ぎたくて、首筋に顔を近付けると、寿樹が僕に手をまわしてくれた。


「健太、好きにしていいぞ。」


ズギューンと胸に突き刺さる愛の言葉のようだった。


「僕だけ好きって言ってよ。」


さらに、欲が出て清一郎になんか返したくないと強く思った。


「贅沢な注文だな。」


首筋にキスをすると、寿樹の香りともっちりと柔らかい肌が健太を虜にさせて、止まらなくなりそうだと感じた。


「駄目だよ今日具合が悪かったんだもん、ゆっくりおやすみ。」


健太は横に寝直した。


「手は繋いでおくのか?」


「うん、これは、僕がおとなしく寝る魔法なんだ。」


寿樹は笑うと、目を閉じた。


僕は、寿樹のお香のかおりと手の温もりを感じながら 心地よく眠りについた。


寿樹と隣に居るだけで こんなに幸せを感じるのに、寿樹は赤城家へ帰ってしまうなんて……。


現実って、残酷だな……。



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