表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
健太の日記  作者: 蔓草登上
100/111

健太がミキを思い出す

挿絵(By みてみん)

BGM:♪[イノサンRouge]MIKA NAKAJIMA

 早朝4:50


寿樹じゅきは体調が良い時は 各、ほこら朝拝ちょうはいへ周って開門かいもんをする。


門という門は無いのだけれど、一応 境内けいだいへ入っていいですよといった支度したくだ。




 健太は、寿樹がぐるっとほこらをめぐって朝拝ちょうはいしている姿を見守っていた。


これは、御師おんしの仕事であるが、鬼空きくうはこれをしない。


朝が起きれない理由も一つだ、後は なまけだろう、怠惰たいだだ、怠惰、怠惰、怠惰。


寿樹には、しなくていいよと言っても、止めてくれない。


だから、鬼空に怠惰たいだ拍車はくしゃがかかっている気がするのは 僕だけだろうか。




 7時きっかりの朝食に間に合えば文句も言わない。


テーブルに食事が用意されて、弦賀つるがさんと寿樹じゅきそろっているのに まだ顔を見せない鬼空きくう


僕はお節介がわかっていながらも、足は鬼空の部屋へ向かっていた。




障子しょうじを開けて


「おはよう!」


と声を掛けると、そこには上半身裸の鬼空が腕立て伏せをしていた。


奇麗な上半身に、筋肉が薄っすらのり、引き締まったボディに影を残している。




「何してるの?」


「見りゃわかるだろ?」


そりゃ分かるよ、なんでこの時間に筋トレしているのか聞きたいんだ。




「そんな時間があるなら 朝の朝拝でも行ってくればいいのに。」


「俺には、神の居ない所で 拝む流儀はない。」


まさに、怠惰だね。


「それを仕事放棄というのだよ。」


部屋に散らばった、脱いだ洋服を拾い上げる。


「これ、洗濯物?」


「あぁ。」


タオルで体を拭く鬼空。


肩がガッシリして、背中が広い。


やはり、男性化して来ているなと思う健太。


見られている事に気が付いた鬼空は眼だけ動かして僕の方を見る。


目が合ってドキッとした。


「だいぶ筋肉が戻って来たろう?」


と自分の筋肉をウットリと見つめる鬼空。


「う、うん。」


僕にとって戻って来たとは思えない。必要ない事にしか思えないからだ。


「ちょっと筋トレしただけで こうなる。」


ちょっとだけで そのスタイルになれるなら 世の中の全員がなれているハズだ。


やはり、鬼空には生まれ持っての筋肉質とそのスタイルに恵まれていると思った。


鬼空が腕に力こぶを作って力を入れると、腹部もそれに従ってキュッと細くなり、全身が逆三角形のフォルムが、美しいっと思ってしまった。


僕に無い筋肉だ。


赤城恭司郎あかぎきょうしろうと違って 細マッチョと言ったところだろうか。この家系は皆 体系までも似ているのだ。


「やっぱり、男の方がいいの?」


すると力を抜いて、衣類に手を伸ばした。


さらしを整えながら


「おまえは、女になったミキを選ばなかった。」


健太の胸に 一筋の糸が痛いほど張り詰めた。




ミキとは鬼空の事である。


僕が脳の手術をして、記憶が戻らない間だけ、僕の彼女役で看病してくれていた女性がミキである。


ミキの身体はほっといたら 寿樹と一緒で 女の体になる。


でも、今さら心までは変える事が難しく、僕が記憶が戻るまでは彼女役で訓練をしていたのかな?詳しい事情はわからなかった。


わからなかったが わからないまま放置していた。


その頃ちょうど寿樹が僕をいたわる様に告白をしてくれて、僕はそれに有頂天になっていた。


まるで、カップル気分で買い物行ったり、恋人気分を楽しんでいた。


ミキの事は すっかり忘れていたのだ。


胸が痛かった。


今の鬼空の言葉で、自分の行動に過ちを思い返した。


「ごめん。鬼空にすごくお世話になっていたみたいだね。なのに、僕はちゃんとしたお礼もまだで……。」


「いいのだ、俺は健太を助けたくてやった事だ、日頃お世話になっていたのはこっちの方だ。それに記憶も戻らない状態で礼などいらぬ。」


僕は記憶が戻っていないと皆には思われていた。


けれど、日が進むにつれて、ミキが僕にどんな介護をしていてくれたのか 思い出せるようになっていた。思い出す程、周りに言いづらくなっていた。


 鬼空、僕は君とキスをしたんだ。


ミキという彼女だと思って。記憶がないとはいえ、友人で今まで来た僕に ………… 一体どんな気持ちでいたんだろう。


 改めて、鬼空の背中が頼もしく見えた。


鬼空の為に力になりたい、鬼空のしてもらいたい事って何だろう。


「き、くぅ……。」


その時僕の言葉を遮るように 後ろから大きな声がやって来た。


「おっはよーございます!くぅさま!」


弥生やよいだ。


振り返る間もなく 横入りされた。


「鬼空さまはオレが連れて行きますので、健太さんは先に召しあがっていて下さい。」


「あぁ」


ナイーブな場面が台無しだった。


「くぅさま、さらし巻き手伝わせて下さい。いい身体してますね。」


フフンと言わんばかりの、弥生の目つきが気に喰わない。


チリっと胸の何処かが痛んだ気がした。






「あら?鬼空様を呼びに行かれたのではなかったのですか?」


弦賀が、健太を待っていた。


「鬼空は弥生くんが連れて来るって。」


「あぁ、弥生くんがね。」


何を弦賀さんは納得しているのだろう?


僕にとって、何もかもが上手くいかない嫌な気分だった。


寿樹が黙って健太の様子を見ていた。










それからというもの、鬼空は弥生がキライだったんじゃなかったのか?と疑う位いつも一緒にいる姿を見かけた。


そっかぁ、鬼空が弥生くんから逃げる為 僕と結婚をしようって言ってきたのは、アレは夢の事だったな。実際、弥生くんは鬼空の美容師だし、髪が無くったって、顔の美容と着付けも手伝える。こうも、鬼空がカリスマ御師になったら、キレイにしておかないといけないもんな。


弥生くんは鬼空のマネージャー、そう考えあらためた矢先だった。


朝が遅い二人は、みんなが食べ終わってから朝食へやって来た。


僕の心の中は 「遅い!!」と言いたい気持ちを抑えていた。


弥生くんがニヘラとして椅子に座ったので、頭に血が上った。


ミキは僕に身を捧げて看病してくれたんだ。僕を救おうとしてくれたミキの気持ちがあったんだぞ!


気がついたら 目の前のテーブルを両手でダン!!と叩いていた。


その時の二人の詳細なんて覚えていない。


僕は頭に血が上っていた。


「それ、ダメですから!!」


弥生くんがミキに好意を寄せている事に 腹立たしさを覚えた。


「御師たる人が、人の風上にも置けない!」


健太が大声を張り上げるものだから、弦賀さんが戻ってやって来た。




「どーなさったんですか?健太さん、鬼空さまの朝が遅すぎましたか?」


弦賀は鬼空の朝が遅い事しかわかっていなかった。


僕が怒っているのは、他に理由があるのは明白だった。


健太は怒りが収まらず、


「滝行で身体を清めて下さい。」


と鬼空に言ってしまった。


辺りは、シーンとする。



側近の言う事は、命令と同じだった。


やってしまった。側近という権力を、ここで使ってしまった。



弦賀が驚いた顔をしたのが、とても目に焼き付いた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ