『抜刀の、決意』
午後二時。
ファルテン村の入口の祠の前で、ステラ・レギアの五人がシズカを待っていた。
午前中の朝靄はすっかり晴れ、秋の終わりの澄んだ青空が山の上に広がっていた。
シズカは、約束の時刻ぴったりに、山道から下りてきた。
「お待たせいたしました」
「いえ、お時間通りです」
「山小屋まで、約一刻ほど登ります。皆様、よろしいでしょうか」
「もちろんです」
シエラがぴょこんと跳ねた。
「シエラ、お山の上、楽しみ!」
シズカの目元がほんの少し和らいだ。
「山道は所々急なところがあります。気をつけて」
「うん!」
シズカは先頭を切って、山道を登り始めた。
ステラ・レギアの五人がその後ろに続いた。
山道は、村の北の麓からゆっくり高度を上げていく石の道だった。両側に紅葉の終わりかけた木々が並び、足元に落ち葉が厚く積もっていた。
シズカの歩みはゆっくりだった。シエラやルルが息を切らさないペースで、けれど、決して止まることなく、確実に上へと登っていった。
リーゼが横で穏やかに訊いた。
「四年、この山道を毎日」
「ええ」
「お一人で」
「最初の一年は寂しかった」
シズカは前を見ながら、ゆっくり答えた。
「二年目、村の人たちが私の存在に慣れてくださって、三年目、子供たちが山小屋に遊びに来るようになって、四年目の今、もう寂しくはない」
「——」
「待つだけだったのが、少しずつ暮らしになっていきました」
レオンは、シズカの背中を後ろから見ながら、その言葉を噛み締めていた。
『待つ』ことが『暮らし』に変わっていった四年間。その重さが、彼女の歩く後ろ姿から伝わってきた。
---
一刻ほど登った頃、山道の脇にぽっかりと開けた場所が現れた。
そこに、山小屋が建っていた。
古い木造の小さな一軒家。屋根は苔と落ち葉に覆われていたが、入口の前はきちんと掃き清められていた。軒下には束ねられた薬草が、いくつもぶら下がっていた。
軒の柱に、小さな三毛猫がちょこんと座って、こちらを見ていた。
「うわぁ、猫だ!」
シエラが目を輝かせた。
シズカが、ゆっくり猫に近づいて手を伸ばした。三毛猫が、ぴょこんとシズカの手のひらに頭を擦り付けた。
「この子はミヤ。三年前から私のところに居つく子です」
シエラがしゃがみこんで、そっと手を伸ばすと、ミヤはシエラの指先に頭をこつんと当てた。
「シエラのこと、好きみたい」
「ミヤは子供と私だけ信頼します」
シズカはふっと笑った。
「狭いですが、どうぞ」
シズカは、ステラ・レギアの五人を山小屋の中に招いた。
山小屋の中は、想像していたよりも整っていた。
入って正面に囲炉裏。その周りに藁の敷物。奥にシズカの寝床と衣装の入った木箱。壁際に小さな机と書物が数冊。窓際に刀の手入れ道具の並んだ板。
囲炉裏の隅に、小さな仏壇のようなものが置かれていた。
板の上に白い布。その上に、——
朱塗りの、小さな櫛が、丁寧に飾られていた。
レオンは、しばらくそれを見つめた。
「これは」
「セレナ様からお預かりしている櫛です」
シズカが、囲炉裏の火を起こしながら答えた。
「四年前、私が街を出る時、セレナ様がくださいました」
「叔母さんから」
「『これは私の母から受け継いだ櫛。あんたが、いつか、あんたの家に戻る日まで、預けるよ』、と」
シズカは、囲炉裏に炭をくべながら、続けた。
「セレナ様は、今、隣国の山の温泉郷で、隠居されています」
「叔母さん、お元気なんですね」
「半年に一度ほど、便りが届きます」
シズカは、ふっと笑った。
「先月のお便りでは、『甥のレオンが、街道で大層な働きをしたらしいねえ。私の見立ては、間違ってなかったよ』と」
「——」
「セレナ様、街の便りを、隣国でも、ちゃんと聞いておられます」
レオンはしばらく無言だった。
それから、深く頷いた。
「叔母さん、——お元気で、よかった」
「いつか、皆様で隣国にお訪ねされても、よろしいかもしれません」
「はい」
「あの方は、——きっと、喜びます」
シズカはお茶を淹れ始めた。
囲炉裏の火が、ぱちぱちと、温かい音を立て始めた。
---
囲炉裏を囲んで、五人とシズカはお茶を飲んでいた。
シエラはシズカの隣に座って、ミヤを膝に乗せていた。
シズカが、ゆっくり朱塗りの櫛の方を見た。
「セレナ様から、櫛をお預かりした時、——『あんたの家に戻る日まで』と、仰った」
「——」
「四年、外で待ちました」
「——」
「今日、皆様のお話を伺って、——ステラ・レギアが、確かに、家として、形を取り戻していることを、確かめました」
シズカは、お茶のカップを置いた。
それから、立ち上がって、朱塗りの櫛の前に跪いた。
両手を、丁寧に合わせた。
しばらくして、シズカは、櫛を白い布ごと、両手で取り上げた。
「レオンさん」
「はい」
「セレナ様から、お預かりした櫛、——古城に、お返しに、伺います」
レオンの息が、止まった。
「私の家は、ステラ・レギア」
「——」
「戻ります」
食卓を囲む五人がしんと静まった。
シエラが、ぱあっと顔を輝かせた。
「シズカお姉ちゃん!」
シエラが両手をぎゅっと組んで、ぴょこんと跳ねた。
シズカは櫛を丁寧に布で包み直して、自分の懐に収めた。
「セレナ様にも、お手紙で、ご報告したい」
「——」
「『家、ちゃんと、形を取り戻していました。私、戻ります』、と」
レオンは、深く頭を下げた。
「シズカさん、お帰りなさい」
「ありがとうございます」
シズカも深く頭を下げた。
アイリスが、横でふっと笑った。
「シズカ、出発の準備は」
「明日の朝、出発したいと思います」
「了解」
「山小屋の片付けは、当面、村の倉庫に物を預ける形で」
「ヴァースル村長は、快く引き受けてくださるでしょう」
「うん」
シズカは、ミヤを膝に乗せたシエラの方を見た。
「シエラちゃん、ミヤは、ヴァースル村長のところに、預けます」
「うん」
「時々、私たちで、村に会いに来ましょう」
「うん!」
シエラは、ミヤの背中を、優しく撫でた。
「ミヤちゃん、また会いに来るからね」
ミヤが、シエラの指に、頭を擦り付けた。
---
夕方近く。
シズカが山小屋の戸締まりを進めていた時、——
山道の下の方から、慌てた足音が、駆け上ってきた。
「シズカ様! シズカ様!」
ヴァースル村長の声だった。
ステラ・レギア一同が、入口から外を見た。
ヴァースル村長が、息を切らせて、山道を駆け上ってきた。後ろに、村の若い男が二人。
「ど、どうされましたか」
「賊が、——村の南の麓に、現れました」
「数は」
「十二、三人ほど。今、村の南門の方に、向かっているところです」
シズカの目つきが、すうっと、変わった。
「これまでで、最大の集団です」
ヴァースル村長は、息を整えながら、続けた。
「いつものように、シズカ様にお伝えするのが、——」
「分かりました」
シズカは、すでに、自分の刀を腰に差していた。
レオンが、すぐにアイリスを見た。
「アイリスさん」
「うむ」
「『鉄槌の牙』の残党、ということは」
「あり得る」
アイリスが、ふっと笑った。
「我々を、ファルテン村まで、追ってきた可能性」
「ガレッリ系の流れの中で、ステラ・レギアを恨んでいる組織、いくつかある」
リーゼが、横で頷いた。
「私が把握している限り、『天界の盾』の傘下解体後の流れで、——独立して暴れている残党が、複数います」
シズカが、しばらく一同を見ていた。
「皆様、——」
「もちろん、共闘します」
レオンは即答した。
「ステラ・レギアと、シズカさんの、初めての共闘」
「——」
「シズカさんの、最後のファルテン村の戦い」
シズカは、ふっと笑った。
「ありがとうございます」
「ヴァースル村長、村人は、避難を」
「はい、すでに、集会所に集めております」
「では、行きましょう」
ステラ・レギアの五人とシズカ、六人と踏破くんたち、零式の縮小モードが、山道を駆け下りた。
---
村の南門の前。
夕陽が、もうじき山に沈もうとしていた。
南門の外の、開けた草地に、——
黒い装束の男たち、十三人が、武器を構えて立っていた。
剣士が八人、弓兵が三人、後方に呪術系の装備を持った男が二人。
『鉄槌の牙』の残党と推定される、紋章付きの武装。
そして、先頭で大きな両手剣を担ぐ、髭面の男。
「『ステラ・レギア』の管理人とお見受けする」
髭面の男が、低く叫んだ。
「俺は『鉄槌の牙』の残党、——元・副長のヤード。バドルの兄貴の、敵討ちに、来た」
レオンは、左肩の信念の腕章を、軽く整えた。
「ヤード殿、組合の捕縛部隊が、こちらに向かっています。投降を」
「投降だと?」
ヤードが、低く笑った。
「ステラ・レギアを潰してから、——投降だ」
「分かりました」
レオンは、後ろに合図した。
「全員、配置」
シエラが、両手を組んだ。
「水の鯨さま、村の南門に、結界を!」
シエラの足元に、青色の魔法陣が広がった。柔らかな水の壁が、村の南門を、ふわっと覆った。
「呪術系、出てきても、これで防ぐ」
ルルが、零式の縮小モードを、装置で大型化させた。二メートルの銀色の巨体が、村の南門の脇に立ち上がった。
「踏破くん、左右に展開!」
ルルの指示で、十二体の踏破くんが、二手に分かれて草地に散った。
アイリスが、剣を抜いた。プロミネンスに赤い炎が灯った。
「私は、剣士組の正面を抑える」
リーゼも、細剣を抜いた。
「私は、アイリスさんの右」
レオンは、護身用の短刀を抜いた。
「僕は、肉壁として、皆さんの後ろを、——」
「いえ」
シズカが、ゆっくり、一歩前に出た。
「皆様、後ろで、見ていてください」
「シズカさん?」
「ファルテン村は、私の、四年間の家でした」
シズカの声は、低く、けれど、明確だった。
「最後の戦いは、私一人で、お務めさせていただきます」
「いや、それは——」
「皆様の力をお借りすれば、簡単に済みます。けれど、——これは、私の、ファルテン村への、四年間のご恩への、——お返しです」
「——」
「皆様には、私の四年間の総決算を、見届けていただきたい」
レオンはしばらくシズカを見ていた。
それから、ゆっくり頷いた。
「分かりました」
「ありがとうございます」
「ただし、危険があれば、すぐに、加勢します」
「もちろん」
シズカは、ゆっくり前に進み出た。
ヤードと、その十二人の前で、シズカが立ち止まった。
刀は、まだ、鞘の中にあった。
両手は、自然に下げたまま。
「『鉄槌の牙』の残党、ヤード殿」
「——」
「私はステラ・レギアのシズカ・コウサカ」
「シズカ、コウサカ、——聞いたことがある」
ヤードは、しばらく考えた。
「ファルテン村の、——流浪の女剣士、か」
「いかにも」
「お前、Eランクの新興ギルド——いや、Dランクの一員、だったのか」
「九年前から、ステラ・レギアの所属」
「——」
「これから、ステラ・レギアに、戻ります」
「——」
「ですが、その前に、——ファルテン村の、最後のご奉仕を、させていただきます」
ヤードが、ふっと、低く笑った。
「女一人で、十三人を相手に、なるのか」
「いいえ」
シズカは、ゆっくり、両手を、刀の鞘と柄に、添えた。
「一人ではない」
「——」
「四年間、私を、家族として迎えてくれた、——ファルテン村の人たちと、ともに、戦う」
「——」
「私の刀は、——この村の、四年間の、感謝の刀」
「——」
ヤードが、両手剣を、振り上げた。
「殺せ!」
十三人が、一斉に、シズカに向かって、駆け出した。
---
## 6
シズカは、動かなかった。
刀は、まだ、鞘の中。
両手は、刀の鞘と柄に、添えたまま。
ヤードの両手剣が、シズカの頭上に振り下ろされた、——その瞬間。
シズカの刀が、——鞘から、抜けた。
抜刀の音は、ほとんど、聞こえなかった。
ただ、——
一筋の、銀色の光が、ヤードと、両側の剣士四人を、——同時に、横切った。
抜刀術。
『八双、——蛍火』
ぱっ、と、五人の体の、剣を持つ腕の付け根に、——細い、光の傷が走った。
「ぐおっ」
五人の両手剣・剣が、地面に落ちた。
腕の付け根に、確実に剣神経を、切られていた。当面、剣を握ることは、できない。けれど、命に別状はない傷。
シズカは、その時には、もう、——
刀を、鞘に戻していた。
『納刀』。
抜刀から、納刀までの時間は、——たぶん、二秒も、なかった。
「な、なんだ、——」
残りの剣士三人が、ぽかんと立ち止まった。
シズカは、ゆっくり、彼らを見た。
「皆様、武器を、置いてください」
「——」
「私は、皆様を、生かして、組合の捕縛部隊に、引き渡します」
「——」
「抵抗されると、もう一度、抜きます」
剣士三人が、お互いに顔を見合わせた。
それから、ひとり、また、ひとり、と、剣を、地面に置いた。
弓兵三人も、弓を、下に降ろした。
後方の呪術師二人だけが、まだ動こうとしていた。
呪術師の一人が、両手を上げて、紫色の魔力を、シズカに向けようとした、——その瞬間。
零式が、胸の宝石を、ぼうっと光らせた。
呪術系の魔力が、空中で、しゅう、と、消えた。
「呪術、無効化」
零式の機械音声が、淡々と告げた。
呪術師二人が、絶望した顔で、地面に膝をついた。
戦闘は、——開始から、数十秒で、終わっていた。
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シズカが、刀を完全に鞘に収めて、深く息を吐いた。
ステラ・レギアの五人が、彼女に、ゆっくり近づいた。
シエラが、両手を組んで、口を、ぽかんと開けていた。
「シ、シズカお姉ちゃん、——」
「すごい、ですか」
「すごい、——めちゃくちゃ、すごい」
ルルが、ぽくぽくと頷いた。
「合理的観察結果。シズカ殿の抜刀の速度、——人体の認知限界を、超えている」
「合理的に、規格外」
「合理的に、規格外、です」
リーゼが、横で、深く頷いた。
「『天界の盾』時代、何人もの剣士を見てきましたが、——あの速度の抜刀は、初めて」
「ありがとうございます」
シズカは、わずかに頭を下げた。
「ただし、これは、相手が、剣の道を、心得ていない場合に、限ります」
「と、言うと?」
「剣の達人相手では、抜刀の一閃で、決まることは、——少ない」
「——」
「あの集団は、たぶん、——『鉄槌の牙』の中でも、二線級の戦力」
シズカは、ヤードたちを、ちらりと見た。
「バドル殿、本人なら、——たぶん、この抜刀は、防ぐ」
アイリスがふっと笑った。
「お前、規格外なのに、——謙虚すぎる」
「事実です」
「うむ」
レオンが、ヤードの方に歩み寄った。
ヤードは、地面に膝をついて、自分の腕を、押さえていた。
「ヤード殿、——」
「——」
「組合の捕縛部隊に、引き渡します」
「——」
「あなた方の傷は、命に別状はありません。きちんと治療を受けさせます」
「——」
「ご恨み、お受けします。けれど、——『鉄槌の牙』が、また、人を傷つけるのを、止めるのが、私たちの仕事です」
ヤードは、しばらくレオンを見ていた。
それから、ぽつりと言った。
「あんた、——あの五浪の管理人、か」
「はい」
「——」
「分かった。——投降する」
レオンは、深く頷いた。
ザッシュやグラントの友好ギルドのように、ヤードもまた、ステラ・レギアの方針を、理解する人間だった。
たぶん、組合の正式な手続きを経て、彼らも、——いつか、別の道を、選べる、はずだった。
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組合の捕縛部隊が到着するまで、ヴァースル村長の家で、捕縛者の応急処置と監視を、ステラ・レギアと村の若い男たちで、分担した。
夜になってから、組合の捕縛部隊が、ファルテン村に到着した。
捕縛者十三人を引き渡し、レオンが、組合への正式な報告書類を、捕縛部隊長に提出した。
報告書類には、二つの内容が記されていた。
一、『鉄槌の牙』の残党、十三人の捕縛と引き渡し。
二、シズカ・コウサカの、ステラ・レギアへの正式な復帰、並びに、ファルテン村への四年間の貢献の総括。
捕縛部隊長が、書類を読んで、深く頷いた。
「ステラ・レギア、——お見事です」
「ヴァースル村長と、ファルテン村の皆様の、ご協力のおかげです」
「シズカ・コウサカ殿、ファルテン村での、四年間のご活動、——組合の記録に、正式に記載いたします」
「ありがとうございます」
シズカは、深く頭を下げた。
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その夜遅く。
集会所の二階で、ステラ・レギアの六人は、最後の晩餐を共にしていた。
ヴァースル村長と、村の主要な人々も、——子供たちを連れて、最後の挨拶に来た。
子供たちは、シズカに、それぞれ、お別れの小さな贈り物を渡した。手作りの押し花、編み紐の腕輪、絵を描いた木の札。
シズカは、それらを、丁寧に懐に収めた。
「シズカ姉ちゃん、また、絶対、来てね!」
子供の一人が、ぎゅっと、シズカの袖を握った。
「もちろん」
シズカは、その子の頭を、優しく撫でた。
「シズカ姉ちゃんの、新しいお家で、落ち着いたら、また、皆に、会いに来る」
「約束ね!」
「約束」
シズカは、ふっと笑った。
子供たちが、ヴァースル村長に連れられて、それぞれの家に戻っていった。
集会所の二階に、ステラ・レギアの六人が、残った。
シエラが、ぽつりと言った。
「シズカお姉ちゃん、——本当に、村の人たちに、愛されてるんだね」
「四年、——皆様に、家のような場所を、いただいた」
シズカは、贈り物を入れた懐を、軽く撫でた。
「これから、ステラ・レギアで、もう一つの家を、——築かせていただきます」
レオンは、深く頷いた。
「明日の朝、——ギルドに、帰ろう」
「うん」
シエラがぴょこんと跳ねた。
「ギルドに帰ろう! エレーナお姉ちゃんが、待ってる!」
ルルがぽくぽくと頷いた。
「合理的な、家族の再集結、本日、完了」
「合理的、です」
リーゼが、穏やかに微笑んだ。
「シズカさん、——ご一緒に、ステラ・レギアへ」
「はい、リーゼさん」
アイリスが、ふっと笑った。
「シズカ、——お前の抜刀術、明日、エレーナに見せたら、——たぶん、占星台から、ワインボトル投げて、喜ぶぞ」
「アイリスさん、ワイン投げる占星術師、新しい」
シズカも、ふっと笑った。
集会所の二階に、温かい笑いが、広がった。
ステラ・レギアの六人。
シズカ・コウサカ、抜刀術士。
セレナ叔母の最後の弟子の一人が、——四年ぶりに、家族に、加わった。
明日の朝、ステラ・レギアは、——ファルテン村を発って、ルミナリアの古城に、帰る。
『ただいま』と、『おかえり』、が、もう、すぐ、そこに、待っていた。
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第二十四話 了




