第27話 ラビーの気持ち
「はん…まーた、今回のハルトへの転生者も大したことない、アホな人間だわ」
帰りの車の中で、ピンク色の棒状のものを口に入れて息を深く吸い込む。
「はあぁあぁぁ〜…」
スーーっとした爽快感の後に、脳天を直撃するような刺激的な快感。
「これは、彼もやめられないわよねえ〜」
見た目は前の世界でいうタバコに似た形状だが、物は全く違い、どちらかといえば、これは——。
「ドラッグよねえ〜」
ラビーは、もう一度深く吸うと、窓の外に目をやる。自動運転の車から見える景色は、走っている地下の灰色の世界ばかりで、色など何もない。
「私の人生と同じね…」
ラビーは元々このゲームのファンで、U-4の大ファンだ。何回もプレイをしてきたし、このゲームの派生ものが出れば、その度に購入するほどの熱心なオタクだった。だから、転生したときには心から嬉しかったし、泣いて喜んだ。——自分が、U-4と絡みのない端役だと分かっていても。
なのに、U-4の世話役として転生してきた男が、男だからという理由でU-4の側にずっといられるのは、オタクとしては我慢ならなかった。
でも、それでも、U-4が幸せになるなら、ゲームのシナリオ通りトップアイドルになるなら、と、ゲームのオタクとしてハルトを助けたら、助言をしたり協力したりして、陰ながらU-4を応援してきた。
けれど、結果、U-4のメンバー達から好かれるのは、決まってハルト役の人。ラビーの存在なんて、眼中になかった。
どんなに手伝っても、私が報われることはない…。
U-4がトップアイドルになって、ゲームのシナリオ通りに話が終えても、ハルト役の転生者はずっとそのままで、U-4のメンバーとずっとイチャイチャ仲良くしていて、溺愛されてて…。
ムカついたから、ある日ハルト役の人を呼び出して、崖から騙して突き落としたんだよね。
そしたら、見事にハルト役の人、一発で死んじゃって。
そうしたら、あら不思議。
またゲームが最初からに戻って、ハルト役には違う転生者がいたの。でも1つ違うのは、ラビー役は引き続けられたってこと。ただし、またゲームも巻き戻って、最初のハルトと同じところからスタートして。
ハルト2号には、最初から手伝ってなんかやらなかった。そうしたら、あら、最悪。2号はゲームのこと知らないみたいで、全然話が進まなくて、U-4になかなか会えない。
これじゃあダメだって、結局途中から手伝ってあげて、そしたらまた無事U-4をトップアイドルにできてクリア。でも、私へのリターンは何もなし。U-4も私のことを認識してるのかいないのか、それすらも分からない。
だから、また2号も同じ崖に呼び出して、突き落としちゃった。そうしたら、また違う転生者がハルトになって。それを、何回も繰り返しながら私は思うの。
私はずっとこのまま、ラビー役として生き続けなきゃいけないの?って。ラビー役のゴールって、一体何?
ずっとハルトを殺し続けてたら、だんだん、よく分からなくなってきちゃって。それで、思いついたの。
ハルトになれないなら、私がラビー役のままU-4に直接近付けばいい。そして、4人の中で一番近付きやすかったのは…
「ユウヤ」
車の中で、ふーーっと息を上に吐く。
ラビーは、指で持ったピンク色の棒状のものを、じっと見つめる。
「あーあ、ハルトくんも、ちゃーんと私の話を最後まで聞いてくれてたら、これのことも話せたのに…ねぇ〜」
ラビーは高笑いしながら、もう1本ピンク色の棒状のものを取り出すと、微笑んだ口元に咥えた。




