第26話 家に入り浸っていますよ
「転生…者…?ラビーさんも…?!え、いつ…?え??待って、どういうことだ…?それに、なぜ僕が転生者だと知って…?」
頭の中が、ぐるぐると目まぐるしく動き出す。
「ハルトさんがメンバーの方と、記憶喪失だと話しているのを聞いたのです。過去にも、ハルトが記憶喪失になったことが何回も会って、その度に転生者だったということがありましたので、もしかすると今回のハルトさんもそうかな、と」
「え…それじゃあ、以前にも、ハルトには他の転生者が入っていたと…?それに、何回もあったって…その方達は今どこに…?」
ラビーの黒い目が一瞬暗く冷たくなった気がしたが、すぐにまた笑顔になる。
「皆さん、ゲームのシナリオ通り、世話役としてU-4をトップアイドルにしてクリアしましたよ」
「クリアして、その後、転生者の方々はどこに…?元の世界に戻ったとか…?」
「そこまでは。私は神様ではないので、分かりませんわ。けれど、クリアした途端いなくなられるので、…その後は幸せに暮らしているといいですよね」
三日月の形に目を細めて笑うラビーの笑顔に、なぜか僕はずっと気持ちが落ち着かない。
「そうですね…僕、クリアした後にどうなるか、なんて考えていなかったので、知れて良かったです。ラビーさんのおかげですよね、ありがとうございます…」
「いえいえ」
「…わざわざ、このことを知らせるために、今日来てくださったんですよね…?」
「それもあります」
「それ…も…?他にも何か…?」
「クスクスクス」
「…ラビーさん?どうし…」
僕はハッとする。ラビーの笑うその声に、聞き覚えがあったからだ。
「…ラビーさんだったんですね。ユウヤさんとの電話のときに聞こえた、女性の笑い声は」
「ふふっ。そうです」
「今、ユウヤさんはどこにいるんですか!?練習があるのに来ていなくて…僕は引きずってでも、連れ戻さないといけないんです!いる場所を知っているなら、教えてください…!」
「知っいるもなにも、私のお家に一日中ずーっと入り浸っていますよ」
「は…?ラビーさんの家…に…?」
僕は愕然とし、全身の力が一気に抜けるのが分かった。
(嘘だろ…ついこの前、ナオトの写真が雑誌に掲載され、グループ活動に暗雲が立ち込めたのに、辛い思いをしたのに、今度は自分が…しかも、ナオトより更に最悪なケース、女性の家に入り浸り…?)
「信じられない…嘘だろ…ユウヤさんが…?」
「彼って、依存体質じゃない?もう、すごいの。ずーっと私から離れないの。音楽祭のときに挨拶をしに来てくれたんだけれど、そのときに連絡先を交換したら、もうその日からずーっと連絡してくるし。毎日会いにくるし。本当、彼って…すごいの…クスクスクス、他にもね——」
「やめてください!!」
僕は大声を出して椅子から立ち上がり、歯を食いしばってラビーを上から見下ろす。
「ユウヤさんの現状を教えてくださり、ありがとうございます。ですが、今はこれ以上、ラビーさんからお話を聞く気持ちになれませんし、聞く必要もないかと思っています。すみませんが、お引き取りいただけないでしょうか」
「…あら、いいの?もう私の話を聞かなくて」
「はい。あとは、ユウヤさんの口から直接聞きます」
「…ふぅ〜ん。まあ、いいですけれど」
ラビーはゆっくりと立ち上がると、白いフサフサとした毛で覆われている手で、短いスカートを下に引っ張り綺麗に直す。
「また何か聞きたいことがあったら、遠慮なく私に連絡してください。それでは」
腰をくねらせて、まるでモデルのように歩いて部屋から出ていくラビー。
音楽祭で会ったときのラビーとの印象の違いに、僕は困惑と落胆で激しく落ち込む。
(純粋に、いい世話役の仲間が出来たと思って喜んでいたのに…しかも、同じ転生者なのに、なのに、なんで…こんな…分かり合えない感じがするんだろう…)




