第25話 同じ転生者同士
「依存…体質…?」
「そうや。ユウヤはな、一見まともに見えたかもしれへんけど、それはな酷いときに病院で治療してもろたのと、服薬もしてたからやねん。せやけど、もしかしたら今のこの状況からすると薬やめてるかも…しれへんな」
「…そうだな。だとしたら、まずいな。最悪な状況だ」
「はぁ〜〜〜…ユウヤ、何に依存してるんだろぉ〜??ハルちんの話からすると、女ぁ〜?全く、女なんて面倒くさいのにハマるの、やめて欲しいわぁ〜。女なんかより、ナオトが癒してあげるのに〜」
「いやいやナオト、今はそんな冗談言うてる場合ちゃうねんで。ハルトは記憶ないから分からへんかもしれへんけど、俺らのこういう性質みたいな中で、いっちゃんタチ悪いんは、実はユウヤやねん」
リュウの暗い表情に、僕は心臓が嫌な音で大きく鳴る。
(依存…薬…病院…)
そして思い出される、最後の通話での違和感。
「あの…言われてみて今思い返してみたら…なんですけど、そういえば、最後僕が話したときに、なんかいつものユウヤさんと話し方が違ってたっていうか…」
「どんな風やったん?!」
「なんか…うぃーっす、みたいな感じで、いつもの丁寧で真面目な感じがなくて、すごいラフな感じで…」
「最悪や」
リュウはそう言うと、ポケットからいつもの消毒液を出すと、大量に自分の両手に絞り出し、ビチャビチャと手に塗りたくる。
アダムは立ち上がると、練習室をあてもなくグルグルと歩き出し、ときには「あ"あ"ーーー!!」と大きな声を出す。
ナオトはというと、僕の腕に絡みつき僕の首筋に鼻をつけ甘えた声で話す。
「不安になっちゃった。けど、ハルちんにくっついてると、安心できるぅ〜」
三者三様の動揺っぷりに、逆に気持ちがスッと落ち着いた僕。スマホを取り出し、ユウヤに電話をかけるも、やはり繋がらない。
(どうする…全員がテンパってしまったらダメだ、僕がなんとかしないと…)
すると、事務所の幹部が練習室のドアを開けて顔を出した。
「おーう。練習中悪いんだけどさ、ハルトちょっといいか?」
「は…はい!」
(なんだろう…ユウヤさんのことかな…)
幹部の元へと歩いて行く僕を、不安そうに見つめる3人に気付き、僕は親指を立てて大丈夫です、と伝えてみる。伝わったかどうかは分からないが、とりあえず僕は練習室を出て幹部についていく。
「忙しいところ悪いなー。来客だ」
(え…ここは…)
そう言って幹部に連れられたのは、来客の際に使用する特別な部屋の前だった。特に、社長のお気に入りの人が来た際、この部屋に通される。
「じゃ、あとは適当によろしくな。終わったら、部屋そのままでいいから」
「え…?あの…!!」
幹部は手を上げ素早く去ってしまい、残された僕は何が何だか状況が分からず混乱する。
とりあえず、仕方なく部屋のドアに手をかけゆっくりと開けると、中のソファには小柄な女の子が座っていた。白くて耳の長い、まるでウサギと人間のハーフのような…。
「えっ!?ラビーさん…!?」
「ハルトさん、お久しぶりです。こんにちは。私のことを覚えてくださっていて、光栄です」
以前と変わらず可愛らしい声で話すラビーは、僕に向かってニコッと笑いかける。
「そりゃ、覚えてますよ…!だって、音楽祭のとき、何度となくラビーさんに助けられたんですから!あのときは、本当にありがとうございました!!」
僕はラビーのあい向かいのソファに座り、ラビーに向かって深々と頭を下げる。
「いいんです。前も言いましたが、お互い世話役ですし、協力したいなって思っただけですから…」
「ラビーさん…」
(やっぱり、ラビーさんはいい方だ!)
張り詰めていた緊張が解け、僕はリラックスしてラビーと互いの近況を話し合った。
「そうなんですよね、分かります。世話役って地味ですけれど、思ってる以上に大変ですよね。ハルトさん、本当すごいです」
会話におけるラビーの合いの手がうまく、つい僕は話していて気持ちが良くなり、気が緩んだ。
「とはいえ、U-4も今や分解寸前なんですけどね…」
「えっ、でも、U-4さん先日大賞を受賞されたばかりですし、これからではないですか…!」
「そうなんです…けど…実は…」
真剣に話を聞いてくれるラビーに、僕はついつい気を許し、U-4メンバーのそれぞれの特性などを話してしまった。
「分かります、分かります。私の所のメンバーも、皆さんすごく個性的でして。どこまで世話役がするべきなのか、関わるべきなのか、線引きが難しいですよね」
「そうなんです…でも僕のグループの方向性の変化のせいで、ユウヤさんもこんなことになってしまって…それで僕自身も色々辛くなってしまって…」
「ハルトさんは素晴らしいと思います!私よりも、ずっとずっと大変な思いをしているのに、笑顔でグループのために動いていらっしゃって、私はそんなハルトさんのこと、尊敬いたします!」
「…ラビーさんは優しいですね。ありがとうございます、グループ以外の人に話を聞いてもらえて、少し気持ちが楽になりました」
「ハルトさん…」
これら本当に心からの本心だったが、別にそれ以外のやましい気持ちなど、僕には全くなかった。だから、ラビーに両手を手で包まれたときには心底驚いて、瞬間的に手を振り払ってしまった。
「あ……ご、ごめんなさい、ラビーさん…!僕は、あの…その……」
「大丈夫です。気にしないでください。私の方こそ勝手に触ってしまって、嫌なお気持ちにさせてしまいましたね」
「いえ…」
2人の間に気まずい沈黙が流れる中、僕は話題を変えようと気になっていたことを聞くことにした。
「そういえば、ラビーさんはなぜこの事務所のこの部屋に?うちの事務所に、誰かお知り合いでも?」
「……どうしてですか?」
「どうして…って…」
ニッコリ笑ったラビーの顔は一切の隙もなく、なぜか僕は背筋の毛が逆立つ。
「…この部屋は、VIPな来客や社長の特別な人を招待した際に使用するんです。なので、ラビーさんはうちの誰かとと親しいのかと思いまして」
「社長と何回か食事をしたことがあるので、それでだと思います」
笑顔のままのラビーだったが、なぜか有無を言わさない圧があり、それ以上聞くに聞けない雰囲気だった。
「…それで、なぜ、僕を呼んだのですか…?」
「お話をしてみたかったからです。色々と共通点が多いな、と思って」
「共通点…?世話役ということと…それ以外にありましたっけ…?」
「はい、あります」
ラビーはその大きな瞳を、三日月のように細くする。
「何言ってるのですか。同じ、転生者同士じゃないですか」




