第24話 あれ…?③
次の日も次の日も、そのまた次の日になっても、ユウヤは練習室に姿を見せず、結局1週間丸々休んだ。それだけでなく、最初の2日間こそメッセージで休むことの簡易な連絡があったが、それ以降連絡すらない。
練習室の中央で円になって座る、アダム、リュウ、ナオト、そして僕の全員の顔色は優れない。
「ね〜ぇ〜、ユウヤ、やばくない…?」
ナオトが僕の髪の毛を指でクルクルと巻き付けながら、アダム、リュウ、僕の顔を見つめる。
「やばいどころちゃうで、最悪や、こんな状況。それにな、言うたらあかんかもしれんけど、ユウヤの今のこの行動も決して許されるもんではあらへん」
「…このままだと、活動休止かもな」
アダムの貧乏ゆすりが、激しさを増していき、ジャージの擦れる音が静かな室内に響く。
「でもさ、ユウヤの気持ちも分かる気がするの〜。たぶんだけどぉ、AAZが移籍してきたのが関係してるんかなぁって〜ぇ…違うかなぁ?」
「絶対そうやで。それしか考えられへん。けどな、それは俺らも同じやろ?いい気は、せーへんかったけど、それでも練習はせなあかんやん?嫌いなグループがきましたー、はい、気持ちがのらないんで練習サボりまーすは、ちゃうねん。そうやろ?」
「それは、そうなんだけどぉ〜…。でも、ユウヤがここまで沈むのは、ちょっとぉ〜…」
ナオトが何かを言いかけて口をつぐむと、溜め息をついて僕の肩に頭をのせて、もたれ掛かる。
「ハルちん〜。ナオト、めっちゃ心配だよぉ〜。せっかく大賞受賞のままになったのに、U-4が分解しちゃいそう〜……」
ナオトは、僕の体に腕を絡みつかせる。
「おーい!だから、言うとるやろ!ハルトに絡むなって!」
「なんや〜〜、そんな羨ましいんなら、リュウも同じように、ハルちんに抱きついたらいいじゃん〜。あ、できないのかぁ〜、リュウ潔癖だから、他人と抱き合えないしぃ〜」
「そ…そんなん…!やってみなきゃ、分からんやろ…!?」
「ふ〜ん、それならやってみたらぁ〜?リュウがハルちんに抱きつけたら、ナオト、ハルちんから離れてあげてもいいよぉ〜?」
「…ほんまやな?」
「ほんとだよぉ〜」
リュウが立ち上がり僕の横に来てしゃがむと、僕の顔をじっと見つめる。
「え…リュウさん、本気で…すか…?」
動揺した僕は、金魚のように口をパクパクとさせる。
「リュウさん、そんな、こんなことで無理することないですよ!それに……あ!」
リュウが腕を伸ばして僕に勢いよく近付き、僕とリュウのおでこが激しくぶつかる。
「いったーー!!」
「いたぁ…」
僕とリュウは自分の額を両手で抑えながら痛みに悶えていると、それを間近で見ていたナオトがゲラゲラと笑い出す。
「何してんね〜んっ!あははははっ!リュウ、抱くの慣れてなさすぎ〜っ!ハルちんも、おでこ、大丈夫ぅ〜?痛かったでしょ?ナオトが撫でてあげる〜ぅ、見せてみ〜?」
「あ、いえ、僕は大丈夫ですので…」
「やかましいわっ!当たり前やろ!人に抱きつくんなんて、親以外初めてやわ!距離感、バグるやろ、そりゃ!」
顔を真っ赤にしたリュウは、早口で捲し立てる。
「リュウ、顔赤すぎ〜〜ぃ!やっだぁ〜!」
「うるさいわ!ボケ!!」
リュウとナオトが2人でやり合っていると、激しい貧乏ゆすりをするアダムが、溜め息をつきボソッと呟く。
「…こんなとき、いつもはユウヤが上手いこと2人をまとめてくれてたんだけどな…」
アダムの言葉に、僕は胸がチクッと痛む。
(そうだ、いつもユウヤさんがU-4をまとめてくれてた…)
僕は手をギュッと握りしめるとその場で立ち上がり、大きく息を吸う。
「あのっ!僕は皆さんに、お話ししないといけないことがあります!」
普段、声を荒げない僕の見たことない姿に、驚いた顔で僕を見上げるアダム、リュウ、ナオト。
「僕の聞き間違いかもしれないこと、それからAAZと思しき人が話していたのを聞いた、だけなんですが…それでも良ければ聞いて欲しいです…まず———」
◇◇◇
「なるほどな。女の声に、AAZのルカの話か…。まずは、ハルト、色々背負い込んでたんやな、俺ら気付かんと、すまなかったな」
「…ごめん」
「ごめんねぇ、ハルちん」
3人は、今まで黙って情報共有しなかった僕を責めるわけでもなく、僕の気持ちを気遣ってくれた。
「いえっ、僕の方こそすぐに話せば良かったことを…すみませんでした…」
「いいんだよ、気にしないでハルちん。でも、この状況、思ってるよりヤバいかも…だよね…?」
ナオトが意味ありげな目配せを、アダムとリュウにする。だが、僕にはその目配せの理由は分からない。
「ですよね、女性関係はさすがに今のU-4には…」
「それもそうなんだけど…そこじゃないんだよ、ハルちん…」
「え…?」
「なぁ、アダムとリュウは分かってるでしょぉ…?」
ナオトの言葉に、アダムとリュウは互いに目を合わせ難しい顔をする。
「え…なんですか…?」
3人の表情に嫌な予感がした僕が恐る恐る尋ねると、リュウが背中を丸め腕組みをし深く息を吐く。
「今はそんな様子全然見えへんから、分からへんのも仕方ないんやけど、ユウヤはな、重度の依存体質やねん」




