第22話 事務所を移籍…!?
U-4が新曲の練習を再開して数分後、ダンスの練習中にも関わらず、ユウヤが履いているジャージのポケットからスマホを取り出して、何やら確認し始めた。
(珍しいな…ユウヤさん、練習中は滅多に携帯見ないのに)
ユウヤのその様子に違和感を覚え不審に思ったものの、すぐに頭を横に振って思い直す。
(違う違う、僕は何を考えているんだ。きっと、仕事関係の連絡か、それかU-4に関するものでも確認中だろう)
このときの違和感を、きちんとその場で口に出してユウヤに聞けば良かったと、あとで僕は激しく後悔する。
すると突然、練習室のドアが勢いよく、バーーーン!という轟音と共に開いた。全員がドアの方を見ると、以前に雑誌の件で怒鳴り込んできた事務所の幹部が、息を切らしながら立っていた。
「あっ…お疲れ様です…!」
U-4と僕は全員で挨拶をすると、幹部がニコッと笑顔になる。
「U-4は大賞受賞のままになったぞ!」
すぐに理解できず一瞬固まる僕とU-4だったが、すぐにワッと歓声をあげ抱き合って喜ぶ。
「っしゃーーー!やったな!!」
「はぁー、良かった。審議時間長かったから、もう絶対に無理だと思ってた」
「…感謝だ。関わってくれた全ての人に感謝しないと」
「ほんとに?ほんとに?剥奪されないん?良かったぁぁ〜…ナオトもう絶対無理やと思ってたからぁ〜…」
その場で泣き崩れるナオトに、他の3人が近寄り励まし合うのを、僕は少し離れた場所から見守る。
(良かった…!もう大賞受賞は、正直無理かなと思ってたけれど、無事に大賞受賞のままでいられるなんて…!なんだかんだ、ゲームのシナリオ通りに話も進んで行くってことじゃないか…!)
シナリオ通りならば、このまま大賞受賞グループとしてトップの仲間入りを果たし、人気グループとして突き進んでいくはずだ。
安堵と喜びの気持ちが溢れる僕の視界に、またもスマホをイジるユウヤの姿がうつりこむ。
(また何かの確認…?それとも、誰かと連絡…?)
またモヤモヤとしたものが胸に広がる中、ふとある疑問が浮かぶ。
(そういえば、ユウヤさんて、これといった特性ないよな…)
アダム、リュウ、ナオトは、それぞれ何かしら特徴のある人物像だが、ユウヤに至ってはこれといって何も問題も見つからず、至極まともな人に見えるからだ。
(いやいやいや、僕は何を考えてるんだ。U-4のグループ全員が、何かしらあるってわけないじゃないか。たまたま他3人が目立つ特性があるっていうだけで、ユウヤさんまでそういう目で見るなんて…世話役として最低な行為だよな!それに、何かあってもなくても、ユウヤさんはユウヤさんだし!)
事務所幹部が練習室から去った後すぐに、音楽祭でも会った、同じ人間グループのAAZが練習部屋に顔を出した。
「ちはーーっす。練習中っー?大変だね〜!」
メンバーの中から一歩前に出たルカが、馬鹿にしたような目つきで、U-4全員を見渡した後、練習室全体を見渡す。
「U-4って、こんなボロい部屋で練習してんの〜っ?なんとか大賞受賞したってのに、惨めだねえ〜」
「なっ…!それは…!」
薄ら笑いをするルカに僕は怒りが沸き、一言物申そうとすると、ユウヤが僕の体の前に腕を伸ばし制止した。
「お疲れさまっす。それで、違う事務所のAAZさんが、どうしてここにいるんですか?うちの事務所に、何か用事でもあるんですか?だとしたら、来る部屋間違えてますが?」
普段から誰に対しても丁寧なユウヤだが、なぜかこのときだけは口調に怒りを感じる。
「あ、聞いてない?俺たち、君らと同じ事務所になったの」
「は…?同じ事務所…?」
「そうそう、あー、その感じ聞いてない?うける、情報遅すぎじゃん」
「……いや、なんでそんな…同じ…?嘘だろ…」
「だからさ、俺たちここに、い・せ・き、したから。なんかさーっ、俺たちに移籍してきてくれって、ここの事務所の方からお願いしてきたらしいんだよね。君らだけじゃ、事務所も厳しいんだろーね〜?」
アハハハと声高らかに、AAZメンバー全員が顔を見合わせ笑い合う様は、確実に馬鹿にした様子だ。
「あっと、そろそろ社長との食事の時間だわ。俺たち社長に気に入られちゃってさあ〜、ほら、やっぱクリーンなイメージのアイドルが好きらしくてさ〜。まあ、俺たち雑誌に載るようなヘマはしねーし?…せいぜい這いつくばって練習して、事務所に貢献しな」
笑いながら去るAAZのメンバー達は、練習室のドアを足で蹴って閉めて行った。
「な…なんやねん、あいつら…なあ…?」
いつもは直ぐに毒付くリュウだが、今回ばかりは歯切れも悪く、顔も引き攣っている。
他のメンバーも全員言葉も出ず、ただ立ち尽くしている。
(…AAZが同じ事務所に…?どういうことだ!?そんなこと、ゲームのシナリオになかったのに…!?)




