第20話 ハルトのこと好き?
あの雑誌での騒動は、結局、約2週間ほどは世間を賑わせていた。その間、U-4は新曲の初披露をし今まで通りライブも行ったが、ファンが急激に減ったような感覚はなかった。
練習室にいるU-4の4人は、また直近でリリースする別の新曲の練習をするために集まっている。
ストレッチをするユウヤは、昨日音楽番組で放送されたU-4のパフォーマンス映像をじっと見つめた後、メンバーの顔を見渡す。
「自分で言うのもなんなんだけど、昨日の俺らのパフォーマンスも完璧だったな。皆んな、お疲れ。色々向かい風が吹いてるけど、俺ら4人なら絶対に乗り越えられる」
「せやねん。俺もそう思うわ。俺ら4人なら、絶対いける」
リュウが隣のナオトの肩を掴むと、ナオトは恥ずかしそうに小さく微笑む。
「皆んな…ほんとに、ありがとう…」
か細い声でそう話すナオトにユウヤは近寄り、ナオトの背中に手を当て優しく叩く。
「まあ、1つ変わったことといえば」
ユウヤが、僕の顔をじっと見る。
「U-4は、脱王道アイドルとなった、ってことを世間に、いや世界に知らせたってことかな。それもこれも、ハルトのおかげだ」
「いえいえ、そんな僕はただ事務所に話をしてみただけで…」
「その話をしてくれたおかげで、俺らU-4はかなり活動しやすくなったんだよ」
「そうやで、ハルトの進言があってこそやろ」
「リュウさんっ、そんな進言なんて、すごいことしたわけではないので…ただ、あの雑誌の写真が出回ったにあたって、ファン離れや性的格好を勘繰られたりするくらいならば、もういっそのこと、こちらから色々とオープンにした方がいいかな、と思っただけです」
事務所に提案したことは、U-4は想像している以上に1人1人が特徴的…僕のいた世界でいうところの、いわば「特性」がある。けれど、その部分を隠さずに、ある程度オープンにしたらいいのでは、ということだった。
「せやけど、事務所からは猛反対されたやろ?それをよう説き伏せたなあ、ほんますごいで」
トップアイドルになるためには、王道アイドルがベストなことは僕も重々承知していたが、あの雜誌が出てしまっては、王道アイドルでいくことは厳しいと悟った。
アイドルを目指していた僕の熱意と思いで力説しているうちに、結果的に事務所幹部も折れたといった形だ。
「…ハルトのおかげで、俺も伸び伸びできるようになった。ありがとう、ハルト」
アダムが大きな手のひらで僕の頭を掴むと、クシャクシャと大きく撫で回す。
すると、リュウがアダムの手を鷲掴みし僕の頭から離す。
「アダムー、伸び伸びするんはいいやけど、いい加減、起きるのは1人でなんとかしーや。毎朝ハルトがアダムの部屋に入るん、さすがに甘え過ぎなんちゃうん」
「…なんだ、リュウ。突っかかるな。どうした」
「な…べ、別に突っかかってへんし…!」
「まあまあまあ、2人とも落ち着け」
ユウヤが2人の間に割って入ると、僕をじっと見つめる。
「ハルトが記憶喪失って聞いたとき、正直、俺はこれからどうなるんかなって、大丈夫かなって心配だったけど、今のハルトは前のハルト以上に頼もしいって思うよ。これからも頼りにしてるからな」
「ユウヤさん…」
「はいはいはいは〜い!ちょっとぉ、ナオトの存在無視しないでください〜!」
ナオトが僕の前に顔を出し、ユウヤからの視線を遮る。
「ナオトは、昔のハルちんも今のハルちんのことも好きだよ。でもぉ〜、今のハルちんのことはもっと好きになっちゃったから〜。他の人は、ハルちんとナオトの間を邪魔しちゃイヤッ」
「なんやナオト、お前筋肉ムキムキがタイプだったやろ。ハルトは真逆やんけ」
「リュウはうるさいから、黙ってて〜。好みなんて変わるし、それに好きになったら好みなんて関係ないし〜」
「そんな、好きなお菓子が変わりましたー、みたいなノリで言うかぁ?だいたい、ハルトも仕事上困るやろし、変なことはやめときや。なぁ、ハルト?嫌なことは嫌や言うたほうが、ええで?」
「え…?え…?」
困惑する僕に、リュウとナオトはまだ言い合い続ける。
「リュウ、あんた、ほんまなんでそんな突っかかるん〜?リュウは、メンバーの恋には応援するタイプだったじゃあぁ〜ん。あ〜…もしかしてぇ、リュウ、あんたもまさかハルちんのこと、好きなんと違うぅ〜?」
「だーかーらー!…ほ、ほんま、お前らには付き合ってられへんわ」
「あぁ〜〜〜!はぐらかしたぁ〜!図星なんや〜!!」
「図星とかあらへん!」
「ふぅ〜〜ん、でも、だ〜めっ」
ナオトが僕の背後に立つと、僕の体に腕を絡ませ、ギュッと抱きしめる。
「ハルちんは、ナオトのものだからねっ」




