第19話 脱退する…
「ナオトさん、大丈夫ですか…?」
「うん、大丈夫。ごめんなぁ」
そう言って自販機の前の長椅子に座るナオトは鼻をすすって笑うが、無理やり作った笑顔なのが分かり、見ていて痛々しい。
「…はぁ〜〜〜…。やっちゃったわ〜…アホやんな〜自分なぁ〜…」
「ナオトさん…」
「…ハルトも気持ち悪いと思ったやろ、舞台裏でのナオトの姿見たとき」
「そんな…!思ってないですよ…!」
「いいねん、別に。今までも色んな人にそう思われてきたん、経験してるねん。だからメンバー以外の所で見せないよう、けっこう気をつけてたんだけど、…はぁ〜……音楽祭のステージ後でなんや気分が高揚しててん、つい……。アホや自分…なんであんなことしてしまったんか、ほんま後悔しかないわ…。…何しろ、グループの皆んなに迷惑かけたんが最悪や…それが一番しんどい…」
「ナオトさん…」
「…うちのメンバー、皆んな色々と個性的やろ?せやけど、めっちゃいい奴らなんだよねぇ…。ナオトの男が好きなこのキャラも、あの3人はすんなり受け入れてん。そんな3人を巻き込んで、ほんまナオトが悪い…最悪……」
背中を丸め頭を抱えて涙を流すナオトの背中を、僕はそっと手で触れ優しく撫でる。
「…ナオトさん、まだどうなるか分からないんですから、一緒に頑張りましょう」
「…無理…ナオトなんかもうグループいない方がいい…脱退する…」
「ナオトさん…!それは違います!脱退すれば解決するわけでは、ありませんよ!」
「でも…でも…ナオトのあんな写真出たら、これからのU-4の活動に影響あるやん…」
「…それについては、僕が先ほど事務所の方に提案したことがあるので…、それを事務所が受け入れるかどうかによるかな、と個人的に思ってはいるんですが…」
「提案…?」
「そうです。頼りなく見える僕ですが、色々考えてるんですよ!色々至らない部分の多い世話係かもしれませんけど、皆さんのことをちゃんと知って、一緒に頑張りたいんです!U-4の4人で、トップを取りたいんです!だから、辞めるだなんて、もう絶対に言わないでください」
「ハルちん……」
涙で目の周りを赤くしたナオトは、ゆっくりと腕を伸ばし、ハルトを優しく抱きしめる。
「ハルちん、ありがとう…。ナオト、ハルちんがずっとグループの世話係でいてくれるなら、これからも頑張れるかも…」
「僕はU-4の大ファンでもあるんですよ。ずっと、一緒にいます!それに、絶対にナオトさんのことを見捨てません」
「ハルちん……」
ナオトはハルトの両頬に手を添えると、覗き込むようにハルトの目をじっと見つめる。
「可愛い系を、ナオト初めて好きになったかも」
「え?ごめんなさい、よく聞こえなかっ…」
「なぁ〜んでも、なぁ〜い」
クスっと笑うナオトは、長椅子からすくっと立ち上がると自販機で買った飲み物を全て腕に抱えた。
「あ!僕が持っていきますから!」
「い〜いの!ナオトが持っていってあげる!ハルちんのその細い腕じゃ、重くて待てへんやろ〜」
「な…持てますよ!それに、ナオトさんだって細いじゃないですか!」
「ふ〜ぅん。それなら、ほら、お腹触ってみ〜?」
ナオトがニヤっと笑い、片手でハルトの腕を強引に引っ張り自分のお腹に当てる。
「ナ、ナオトさん…!」
「カッチカチやろ?ナオト、細マッチョやねん〜」
ニッコリと微笑むナオトは、どこか嬉しそうな恍惚とした表情で、僕は面食らう。
「わ…分かりましたからっ。…早く練習室戻りましょう」
「はぁ〜い」
先を歩くナオトの後ろを歩く僕は、ナオトの背中を見ながら、ふとある疑問が頭に浮かぶ。
(そういえば…舞台裏で相手方と接触している写真を、誰が撮ったんだ…?あのとき、僕ら意外いなかったはずなのに…)
「ハルち〜ん!歩くの遅いよ〜ぉ!もっと足を早く動かしてえ〜」
「あっ、はい…!」
この、もやっとした疑問が解決されるのは、もう少し先に勃発するもう1つの事件のときだった。




