第18話 ほんまに…ほんまに…ごめん…
「失礼しました」
幹部の部屋から出た僕は、その場から早く立ち去りたくて足早に歩いていく。
「ハルト」
声に顔を上げると、壁に寄りかかったユウヤが腕を組んでこちらを見ていた。
「ユウヤさん…」
「どうだった、話は」
「…あ、えっと…練習室へ歩きながら、話しをするのでもいいですか…」
「うん、いいよ」
「…結果から言いますと、やはりあの雑誌の影響は大きく、U-4への世間からの声は厳しく、当たり前ですがいい状況ではないとのことでした…」
「…大賞剥奪は確実か…」
「…いえ、それはまだ確定事項ではなくて、事務所の方で音楽祭主催者の方になんとか掛け合ってみると…。ただ、どうにもならない可能性が大きいと…」
「そう…か……。はぁー…ありがとな、お疲れハルト」
「いえ…」
練習室の前に着くと、足を止めて僕は深く息を吐く。すると、ユウヤが僕の肩に手を置き、無言で僕を見つめる。
僕は頷いてドアを開けると、部屋の中央にしゃがみ込んでいたアダム、リュウ、ナオトがこちらを見る。
「ハルちん…!」
ナオトが真っ先にその場で立ち上がり、僕を潤んだ瞳でじっと見つめる。
「ハルちん…ごめんな…ナオトのせいで…今更になって、ことの重大さが身に染みてきたというか…ほんまに…ほんまに、ごめん…」
「いえ…大丈夫ですよ。とりあえず、僕が聞いてきた話をお伝えしますね。まず——」
◇◇◇
話を終えると、皆、押し黙ったまま俯いていた。
「とりあえず、今U-4に出来ることは新曲を完璧な状態で披露することです。明後日、新曲の初ライブがあるので頑張りましょう」
「……」
「とりあえず、気持ちの切り替えるためにも、僕、皆さんの飲み物買ってきますね」
練習室を出た僕は、扉に寄りかかり深く息を吐く。
(僕が喋ってる間、誰も声を発さなかったな…。…これからU-4どうなっちゃうんだろ…)
練習室にすぐには戻りたくなくて、近くの自販機ではなく、あえて少し遠くの自販機まで歩く。
ピッ—ガコン—ピッ—ガコン—ピッ—ガコン—ピッ—ガコン
4人目の飲み物を、自販機から取り出すためにしゃがんでいると、
ピッ—
自販機のボタンを押す音がし、顔を上げると長い指でボタンを押すナオトだった。
「ハルちん、これ好きやろ?いつも飲んでるもんなぁ」
「あっ…はい、知っててくれたんですか」
「知ってるよ〜」
ナオトは自販機の前にしゃがむと、僕の飲み物を掴み僕へと差し出す。
「はい、これ。ナオトのおごり」
「えっ、あ、ありがとうございます」
「珍しいで〜ナオトが誰かに何か奢るとか。ハルちんは特別やで〜〜…って、自分で言うのもアレやんな」
笑顔を僕に向けるナオトだったが、その笑顔は無理やり作っていて痛々しかった。すると、ナオトの顔から笑顔がさっと引き、視線を下に落としたまま、くぐもった声で話す。
「…なあ、ハルちん…今少しだけ話してもいい…?」
「…はい」
「ありがとう」
そう言って少し顔を上げるナオトの目は、涙が浮かんでいた。




