第17話 世話係の僕の責任でもありますから…
練習室に集まったU-4の4人は、ストレッチやボイトレにいそしむ。
「お、アダムちゃんと来てるやん」
「…ハルトが起こしに来てくれたから」
「おー、ハルト学んどるなー」
「はい!もう同じ間違いはおこしません!」
(4人の扱い方が分かってきたし、昨日受賞した大賞の効果でこれからは猛烈に忙しくなるし、僕ももっともっと頑張らないと…!)
バン!!
U-4の事務所の幹部の1人が、練習室のドアを思い切り開いて大股でこちらにやって来た。ただなら無い雰囲気ではあったが、僕は深々と頭を下げる。
「おはようございま…」
「おはようございますじゃねーよ!!おい!ハルト!お前世話係として、昨日アテンドしてたんだろ!?何をしてたんだ!?一体、何のために世話係を行かせたと思ってんだ!!」
バン!!
そう言って幹部が床に叩きつけたのは、1冊の雑誌のようなものだった。
「これを読め!!そのうえで、俺の部屋へ来い!!」
バン!!
部屋の扉を力一杯閉めて出て行った幹部の凄まじい怒りに、僕とU-4は互いに顔を見合わせ、僕はそっと床の雑誌を拾い表紙を見る。
「……U-4の…大賞剥奪——!?」
デカデカとそう記された文字に驚き慌てて中を開くと、そこには、またデカデカと文字が。
——大賞受賞のグループU-4の人気メンバーはゲイ!?音楽祭関係者への不適切な行為により、大賞剥奪!!——
そこには、ナオトと例の舞台裏で会っていた音楽祭関係者の男性の2人が、向き合って密着した写真が載っていた。
「あ…これ…」
「——ハルト、これどういうことか、知ってるのか」
ユウヤの冷たい声に視線を上げると、冷たい視線のユウヤと目が合う。
「…あ…えっと…これは…」
「答えられないならいい。ナオト、説明しろ」
「…こんなん隠し撮りやん。誰や撮ったん」
「それは今はどうでもいい!この写真のこれは、何してるところなんだって聞いてるんだよ!!」
「何って、…うちのグループのこと裏で色々言うてたから、言うのやめて言うただけや」
「だったら、こんなに密着する必要ないだろ!!」
「別にナオトのやり方やし、何もやましいことしてへんし」
「そんなこと言ったって、これを見た人はそう思わないだろ!現に、これを見た人達は、確実に何かあったと想像するだろ!」
「だから言うてるやん。ナオトはキスもエッチもしてないからって。あ!それなら、ハルちんもこの場にいたから証明してくれるはず、な?ハルちん」
「あ…あの…ナオトさん…キスはしちゃってましたよね…」
「え?…あ、あ〜〜…そやな、しちゃってたわ…」
「はぁーーーーーー…」
ユウヤが深くため息をついて、床にしゃがみ込む。
「でも〜!唇にはしてへん。ほっぺにちょこん、だけやで?」
ナオトが自分の頬をツンと触ると、リュウが天井を見上げる。
「あかーーーーーん…。ナオト、俺らはアイドルグループやで?しかも、女性ファンを多く抱えるゴリゴリの正統派なんやで?そのメンバーの1人が、頬にキス?しかも男性に?…あかんやろーーー…」
「そうかもしれんけど、そのキスの写真はまだ出てへんし、大丈夫なんちゃうん?」
「いやいやいや、こんな男同士密着してる写真だけで、十分アウトやて…。しかも大賞剥奪て…それはもう決定事項なんか…!?ハルト、文章にはなんて書いてある?」
「…読む限り、キスのことについての言及はありませんが、…ただ大賞については主催者側が…見直すことを検討していると…あります…ね…」
「嘘やろ…最悪や…」
頭を抱えて涙目になるリュウは、室内をぐるぐると歩き回る。
僕は文章を読めば読むほど、雑誌を持つ手が震える。
(こんなの、ゲームの流れになかった…どういうことだ…なぜ…!?)
頭の中を様々な考えが駆け巡り、そして頭のてっぺんから血の気が引く感覚に、真っ直ぐに立っていられなくなる。
「…ハルト、大丈夫か」
「アダムさん…」
アダムが僕の背中に手を当てて、僕の顔をじっと見つめる。
「…倒れそうだった。それに顔色が悪い」
「はい…すみません…」
「…気分は悪いだろうが、今はとりあえず、さっきの人の部屋に行った方がいい」
「そうですよね…僕行ってきます…」
「ハルちん!!」
練習室を出ようとする僕を、ナオトが背後から声をかける。
「ごめんね……」
「…いえ…世話係の僕の責任でもありますから…行ってきます」
幹部の部屋の前に着くと、大きく息を吸ってドアをノックする。




