第15話 印象最悪やろ
フロアに戻りテーブルへと近付くと、料理をたんまり食べて眠そうになっているアダム、手に消毒液を吹きかけるリュウ、パフォーマンスをじっと見つめるユウヤの3人は、何も言わず僕らが席に座るのを見つめていた。だが、座るやいなや、リュウが真っ向一番に口を開く。
「2人とも、どこ行ってたんや。もうすぐ全部のグループが出番終えるで?ナオト、お前テーブルにおらんと、どこかほっつき回っとるんなんか、主催者側の印象最悪やろ。よく考えや」
「はいはい、それは、どうもすみませんでした」
「おまっ…!ナオトなんや、その馬鹿にしたような態度は、こっちは真面目に言うとる——」
「2人とも静かにしろ!今は本番中だぞ!」
ユウヤがリュウとナオトに睨みをきかすと、2人は互いに顔を背け押し黙る。
その後も、U-4のテーブルは空気がギスギスしたままで、その様子に不安が募っていく僕は自分に言い聞かせる。
(大丈夫…賞発表になれば、グループの雰囲気も良くなる…はず、なぜなら大賞取れるから…。…だけど…)
ステージ上でジャケットを脱いでのパフォーマンス、舞台裏での他グループの体液付き騒ぎ、靴の履き忘れ、音楽祭関係者への密な接触、ゲームとは違った流れが随所随所にあることに、どうしてもぬぐいきれない不安が残る。
「どうした、ハルト。顔色良くないな」
ユウヤが僕の顔を覗き込み、俯いていた僕はハッとして顔をあげる。
「あっ、いえ、大丈夫です。心配しないでくださ…」
見つめるユウヤの顔は、僕を労わるように優しさで溢れており、僕は気持ちがふわっと和らいだ。
「それなら良かった。今日だけでも、メンバー全員が何かしらやらかしたから、ハルトも精神的に疲れたんじゃないかって思ってさ」
「いえ…そんな、僕の力不足ばかりに…」
「いや、ハルトはよく対処してるよ。ありがとう。あ、ほら、最後のグループが始まるぞ」
長時間に渡ったこの音楽祭の、最後のグループのステージが始まった。
そして全てのパフォーマンスが終わると、審議のための時間がかかる。その間は生放送は一旦途切れることになり、出演者達は放送再開になるまで、これ幸いと皆な各々伸び伸びと自由に過ごす。
「ふう……」
溜まった疲労と結果が気になり落ち着かない僕は、テーブル席に座ったまま、大きくため息をつく。
アダム、リュウ、ナオトはそれぞれテーブル近くで他のグループと話して交流をしている。
「あれ、ユウヤさんはどこだ?」
会場周辺を見渡すも、近くに姿は見当たらない。
(まあ、ユウヤさんのことだから、きっとこの広い会場全体を回って幅広く交流してるんだろうな)
「それそれそれそれ!!」
急に大きな早口の声が聞こえ、そしてその声が聞き覚えのある声色で僕は驚いて振り返る。
「よく知ってるな、実はそれがあそこに出てきてて、それがこの前空でも発見されたらしくさ、でさ、それだけじゃなくてこの前は研究でも明らかになったらしくてさ、あ、そういえば、あの話も聞いたか?昨日噂になってたんだけど、魚が飛び始めてて、それも同じ研究結果だったらしくてさ、それからさ」
他のグループメンバーに、前のめりになって話すアダム。目をキラキラさせ、捲し立てるように話すその様は、初めて見る姿だ。
「ア…アダムさん…?」
アダムの止まらない話に、相手のグループのメンバーは、若干引き始めジリジリと後退しているが、アダムはそんなことお構いなしに話し続けている。
「あー、アダムのアレが出てもうたなー」
話が一息ついたのか、リュウが僕の隣にやってきた。
「あの、アレって…?」
「興味のある分野の話を振られると、途端に話が止まらんくなるんよ。あれはもう、しばらくはあんな感じのままやで」
「あんなアダムさん、初めて見ました…」
「なんや、前もあんなアダム見たことあるやろ。初めてやないはずやで」
「実は…リュウさんにはまだ伝えられてなかったんですけど、僕、昔の記憶がなくて…」
「あ、そうなんや。そうか、そりゃ、びっくりするわな。ま、ああなったアダムは放っておいたらええわ。アダムは仲良くなりたいんやろうけど、相手の反応見る限り、あれじゃ無理やろ。まあ、いつものことで、相手が引いて距離取るまでがセットや」
「そうなんですか…」
「そそ。お、ハルト、ステージ見てみ、結果が出そうやで」
結果が出るので着席願います、との音楽関係者からの声かけに、僕は期待と不安の入り混じった気持ちでテーブルに着いた。




