第12話 ナオトの性格
U-4のステージ上での歌声、ダンス、パフォーマンスはトータル的に見れば、今までステージに立ったグループの中で断トツ1位で、抜群に良かった。
これは、僕の独断と偏見の目によるものではないはずだ、なぜならU-4のステージではフロアにいる他のグループは食事をする手が止まり、誰1人として話したり離席するものもおらず、注目度の高さが伺えたからだ。
(1つ気になることといえば…やっぱりあの衣装だよね…)
思いつきでジャケットを脱いで出たものの、やはり全身のトータルバランス、パフォーマンスをしたときの見た目の華やかさはジャケット有り無しでは全く違う。
(ゲームではジャケット着てたし、やっぱ着てた方がカッコよかったな…)
ステージを終えて満面の笑みで舞台袖にはけてくる4人を笑顔と拍手で出迎えながらも、そんな考えが頭の中から拭えない僕。
「ありがとうございました」
U-4と僕は小声でステージ裏の音楽祭関係者に頭を下げながら、ステージ下のフロアへと戻る中、最後尾を歩く僕の横にユウヤがゆっくりと後退してくる。
「なあ、ハルト。アダムの靴、どこにあったんだ?てか、誰が持ってきてくれたんだ?ハルトはずっと舞台袖にいただろ」
「あっ、そうなんです、実はそのことなんですけど、U-4の前のグループの世話役のラビーさんが、あのリュウさんが困っていたときにハンカチを貸し出してくれた、ウサギのような女の子です。彼女が持ってきてくれたんですよ。偶然見つけてくれたみたいで」
「そうなんだ。そっか、教えてくれてサンキュ。お礼伝えておいてね」
「はい!」
ユウヤは微笑みながら足早にアダムの横へと行き、アダムに真剣な顔で何やら話し始めた。
(やっぱり、ユウヤさんかっこいいな〜。気遣いできるし、よく気がつくし、よく周りを見ててくれてるし…。僕も世話役として、もっとしっかりしなきゃ!)
U-4と僕はテーブルに着くと、テーブルの上には僕らが離席していた間に配膳された料理が、たっぷりとのっていた。
「うわー、これ全部食べなあかんの?俺、さっきパフォーマンスした後で、流石にこの量はすぐには食べきれんわ〜」
ナオトが驚いた顔で、テーブルの上の料理を見渡す。
「それなら、ナオトの分も俺が食べるから。気にするな」
アダムが椅子に座り黙々と食べ始め、リュウとユウヤも着席して各々のペースで食べ始める。
「ほんま?アダムありがとう。そしたら、俺はちょっと話したい人いるから、席外すわ」
ナオトは席に座らず、1人フロアを出ていく。
僕はナオトの後ろ姿を見つめながら、円卓テーブルの隣に座るユウヤに体を寄せる。
「ユウヤさん、ナオトさんの話したい人って誰ですかね?」
「んー、さあ、誰だろうな。特に心当たりないけど…」
「今日の出演者の他のグループとかで、ナオトさんが親しい人とかはいます?」
「あー、どうだろうな。何回か会ったことはある人はいるけど…。んー、ナオトの交友関係全て把握してるわけじゃないから、なんとも言えないけど…ああ見えて、けっこうナオト人と深く関わらないんだよね」
「えっ、意外ですね…明るい性格ですし、僕にも気軽に話しかけてくれるので、勝手に社交的だと思ってました」
「そうそう、そう見えるんだよね。でもさ、あいつ意外と広く浅くな感じで、あまり人と深く付き合わないっていうか、自分を見せないっていうか」
「そうなんですか…。…あの、これ言いにくいんですけど…やっぱりあれですか、原因て…」
「原因?」
「いや、なんていうか原因ていうと言い方悪いんですけど、あの、その…」
言い淀んでいると、僕の左隣に座るリュウが小声で会話に加わる。
「あれやろ。ハルトが言いたいんは、ナオトが俺らといるときだけに出す、ほんまの本性のことやろ?つまりはあれや、オネエ——…」
「シーーーー!!」
ユウヤが唇の前に指を1本立て、必死に周りをキョロキョロと見渡した後、険しい顔でリュウを見つめる。
「リュウ!!こんなたくさんの人がいる場所で言うな!誰に聞かれるか分からないだろ!」
「それは分かってるんやけど、別にここテーブルごとに距離あるし、暗いし、常に誰かパフォーマンスしてるし、誰にも聞こえへんやろ」
「そういう問題じゃない、ナオトのそういったパーソナルな部分は、俺たちだってナオト本人に踏み込んだことないだろ。それなのに、他の人にペラペラ話すなって言ってるんだ」
「他の人って、ハルトやんけ。別にいいやろ」
「それは…まあ、そうだけど…」
気まずい雰囲気になったユウヤとリュウの間に座る僕は、申し訳なさであたふたする。
「あの、お2人ともすみませんでした。僕が変なことを言おうとしたから。これは、今ここで話すべきことではありませんでした。僕は…本当、世話役で皆さんをサポートしなければいけないのに、逆にいつも場を混乱させてますよね。すみません…」
「ハルト…」
「そんなん、気にせんでええで。俺らの世話役は大変やろしな」
「リュウさん………。優しい言葉をありがとうございます……。…で、その両手にはめてる透明のビニール手袋は、…なんですか」
「あ、これ?せやから、これはさっき見せたのと同じやつで…」
「取、っ、て、ください。言ったじゃないですか、それはここで付けたらダメだって。フロアも時々カメラに抜かれるんですよ!そんなのしてるの世間に知られて、勝手に悪い意味に捉えられたら困るじゃないですか」
「そんなの、て…俺にとっては必需品やし、命の次に…いや、次の次か…?とにかく!大事なんや」
「気持ちは分かりますが、今はやめてください」
「…分かった。ほな、ナイフとフォークは除菌シートで拭くだけにしとくわ」
背中を丸めたリュウは、しょぼんとした様子でテーブル下に置いてあるカバンの中から、除菌シートを取り出す。
(言い過ぎたかな……。でも、とりあえず今はゲームの通り大賞を取れるように、細心の注意を払わないと…!)
僕は良心が痛んだが、それを心奥底に封じ込める。
でも、このときにリュウに少し寄り添っても良かったのかもしれない、なぜなら結局、結果がああなってしまったのだから。




