第11話 …靴履いてなくね?
「ふう…無事ステージに出られて良かった…」
僕は袖からステージ上を、こっこりと覗く。
ステージ上で歌うグループ、そして次に出番のグループは、ステージ後方で椅子に座って前のグループを見る、といった流れだ。
U-4は後方で高い椅子に腰掛け、きちんと座っていた。前の動物グループのパフォーマンスを、4人は時々体を揺らしながらノリノリで見ている。
(良かった、楽しんでいるみたいだ。少しバタバタしたから変に緊張してたら、て心配してたけど、これでうまく解消されれば……ん?」
僕はU-4の方を目を凝らして、じっと見つめる。
「あ…、え…」
目を擦った後、アダムの足元をもう一度よく見る。
「うそだろ…え…靴履いてなくない…!?」
組まれた長い足のアダムの足先は、紺色のソックスだ。
「え、いつから!?え、あの昼寝してたときか!?脱いでたんか!?マジか、気付かなかった、どうする、て、うわ!カメラ!」
生放送のカメラが、じっとU-4に迫る。
「やめてやめて、足元うつさないでー!」
幸いにもリアクションだけ撮りたかったのか、顔のアップだけで済んだ。
「どうする…さっきの場所まで見に行く…?いや、でも無事回収できたとしても、もう間に合わない…。それに、そこにある確証も無い…どうする…どうしたらいいんだ…!」
パニックになる僕は、ふとステージ上のユウヤと視線が合う。
「ユウヤさん!アダムさん、靴、履いて、ない!」
僕は口をパクパクと大きく開けながら、自分の足を指差しながらユウヤに懸命に伝えると、ユウヤに伝わったようで頷いた後にアダムの足元を見て固まっていた。
「伝わったところで…どうする…僕の靴はサイズ合わないし…ジャケットのように脱いで踊るには見た目が悪すぎるし………ん?」
ユウヤが隣に座るナオトに何やら耳打ちし、ナオトもアダムの足元を見た後に、ニヤニヤしながら俯き、次は隣にいるリュウに耳打ちする。
リュウもアダムの足元を見た後、肘でアダムを小突き、それでようやくアダム自身も靴がないことに気付いたようで、驚いた顔をして隣に座るメンバーや舞台袖にいる僕を見つめる。
「いや…気付いたところで…ね…」
すると、僕は背後からチョンチョンと肩をつつかれる。
「はい?」
振り返ると、そこには先ほどのウサギのような人間のような女の子が微笑んで立っていた。
「あの、この靴、あの男性の方のではないですか?私、さっきエントランスに行ったときに見つけたんですけど…」
「あ!!そうです!!えっ!ありがとうございます!!助かります!!」
「良かったあ。次出番ですよね、さっき偶然見つけたんですけど、私少し前にあの赤髪の方がエントランスの窓のところで寝てたのを見たので、もしかして、と思って。お力になれたのなら良かったです」
「はい、本当に助かりました!…あ!僕これをコッソリ渡さないといけないので、すみません、また後ほどお礼に伺いますので…!」
「いえ、お礼なんていいですから。お互いグループの世話役として、頑張りましょうね。あっ、私、名前はラビーといいます」
「僕はハルトです。よろしくお願いします」
「はい、ハルトさん。お互い何かとご縁があるので、きっとこれからもまた絡みがあるかもしれませんね。それでは、失礼しますね」
「はい!本当にありがとうございました!!」
ラビーから靴を受け取り、僕は手を振りながら去るラビーに深く深くお辞儀をする。
その後、音楽関係者を見つけて精一杯謝りながら事情を説明して、関係者に靴をU-4に届けてもらった。
「ふう…良かった…なんとか、出番までに間に合った…」
「何が間に合っただよ、騒いで迷惑かけやがって」
背後から低く呟く声が聞こえ、ハッとして振り返るも、背後には多くの音楽関係者、出演者がおり、誰が言ったのか分からない。
(…誰だろう…ゲーム上ではU-4は舞台関係者からも他のグループからも、軒並み印象は良かったはずなのに…)
胸がザワザワしながらも、次にU-4の歌う出番となり僕はステージの方へ向き直り集中する。




