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青い鳥をつかまえて  作者: 花南
裏切り者はこの中にいる
10/20

(10)生きる理由を忘れた十月



「アスセナを殺すように、言われた」

僕はとつとつと、ヨシュアにそう言った。

彼は少し悲しそうな顔をして、「俺はお前に苦しい思いをさせただけだったな」と言った。

「明日、アスセナをよく見かけると言われる月の都に僕は行く」

「そうか」

「僕はね、ヨシュアに感謝しているくらいだよ。真相にたどり着けた」

僕は寂しそうに彼を見て笑った。ヨシュアは申し訳なさそうな顔をする。

すべて、明日、終わる。


僕は家に帰ると買ってきた茄子とトマトでラタトゥユを作りながら、アウィス・ラーラの姿を探した。

「ラーラ、ご飯だよ?」

ラーラはすぐに姿を現し、そしてにっこり笑った。

「今日のミッチェルさんはすごく機嫌がよさそう」

「そう?」

「いいことあったの?」

「明日すべてが終わると思ったら、とても気が楽になった」

僕は制服を脱ぎ捨てると、服を着替えてからラーラに言った。

「君にひとつお願いがあるんだ」

今の僕には、ラーラの協力が必要だった。


◆◇◆◇

翌日、ミッチェルはアスセナを殺すために月の都へと向かった。

俺はこれですべてが終わるんだと胸をなでおろしながら、自分の胸のアウィスカエルレアを確かめた。

俺はまっすぐ、13番隊隊長、イヴェールを呼び出した場所へと向かう。

彼の背後からこっそりと忍び寄り、俺は銃を構えた。

さようならイヴェール、これで俺のことを知る者は誰もいない。

パン!

ところが、俺の銃の弾は銀色のオーラによって跳ね返された。イーリスオーブ、盾のルーンの魔法だ。

振り替えった俺の額に、アズッロが銃を突きつける。

「尻尾を出しやがったな。ヨシュア」

アズッロは俺のことを見てにやにや笑っている。こいつ、最初からミッチェルをけし掛けて俺が行動を起こすように仕組んでやがったのか。

「お前の正体はディスクレイト憑きだ。最初から植物園にいたのはディスクレイト憑きではなく、お前の仕込んだ大量の火薬だけだ。火の魔法で死んだと見せかけたのは正解だが、俺の鼻はどんなに希釈された火薬だって嗅ぎ分けられる」

「何のことだ? 隊長。俺は13番隊隊長が怪しいと思っている。あんただって最初はそう思ったはずだ」

「最初? 俺はいつだって言ってるはずだぜ。裏切り者が生き残るってな。イヴェールはアスセナを守るのだけで精一杯だった。彼女を匿って、ピサロの馬鹿に『彼女は死んだ』と伝えた。そうすることによって彼女を守ったんだ。お前はアスセナとイヴェールを同時に始末する必要があった。そして俺はそれを嗅ぎつけてお前に都合のよさそうな嘘をついた。騙されただろう? ヨシュア。俺はお前を裏切ったのさ」

俺は唇を噛んだ。息を吸い込むと、詠唱もなく邪の魔法を発動させる。呼び出した場所が共同墓地だったのは幸いだった。

土がめくれて、かつての仲間たち…アンデットが姿を現す。

「ちっ」

アズッロとイヴェールは即座に銃をアンデットに向けた。知能こそ低いが、これだけ召喚しておけば俺が逃げる時間くらいは稼げるはずだ。

俺は夢中で逃げた。ここから一刻も早く離れて、セレスティアを出る必要がある。大丈夫、銃士隊の格好はしていないし、いざとなったら銃で脅すでもよい。生き残ればチャンスはいくらでも――

そう考えていた瞬間、俺の後頭部に、何か衝撃が走った。

俺は何が起こったのか考える間もなく、その場に倒れる。街の中で発砲して誰も傷つけることのない腕前? そんな奴はひとりしかいない。

「なぜ……」

何故お前がここにいる。ミッチェル。月の都に行ったはずだろう。

ミッチェルは無言でもう一度銃を構えると、俺に向かって一発発砲した。


◆◇◆◇

僕はあのとき、アズッロ隊長にヨシュアを殺すように言われた。

何故、と聞こうと思ったけれども、「面倒くさい説明を理解するのはあとで十分だ」と説明を端折られ、半ばその意味がわからぬまま、作戦を言い渡された。

アズッロ隊長は僕に月の都に行くと見せかけて、太陽の都に潜伏するように言った。僕は念のため月の都に僕の姿をしたラーラに出かけてもらった。だってヨシュアだけしかディスクレイト憑きがいないとは限らないからね。部下がいたっておかしくない。

そういうわけで、僕はヨシュアを殺すことに成功したわけだ。



「お手柄だよ、ピサロくん」

アズッロ隊長は勲章をひとつ自分の胸につけながらそう言った。お手柄ってのはアズッロ隊長のね! 僕にもそのメダルひとつくらいくれたっていいのに、アズッロ隊長はぴかぴかの新しい勲章を見せびらかすためだけに僕を休日カフェに呼び出した。

「帰っていいですか?」

「お前、たまにすごく慇懃無礼だよな。まあ帰ってもいいけれど、お前は帰りたくなくなると言っておこう」

なんのことだ? と思って首をかしげていると、向こうからひとりの女性が歩いてきた。

「お久しぶり」

黒い髪の毛はベリーショートになっていたけれども、それは間違いなく、アスセナだった。

「どうだ? さいっこうのプレゼントだろ?」

もはやアズッロ隊長の声など素通りである。

僕は、心臓がばくばくして、そのまま心臓が止まるんじゃあないかと思いながら、アスセナをじっと見ていた。


生きる理由って何? 守るべきもののためとかきれいごと言ったけれども、やっぱり僕は君のために一生を捧げたいと思います。


(第二章 了)

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