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青い鳥をつかまえて  作者: 花南
裏切り者はこの中にいる
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(09)狂うように笑いながら拒絶した九月



「最近ミッチェルさんは元気がない」

ラーラは出勤前の僕にそう言った。

「どうして?」

「ちょっとだけ、悲しいことがあったからだよ」

「ちょっと悲しいだけだったらそんなに苦しまないよ」

ラーラの言葉に僕は困ったように眉根を寄せて笑った。

「大丈夫、僕にはラーラがいるから」

「それって私を好きってこと?」

「うーん、微妙にニュアンス違うけれども、ラーラがいると今日も頑張らなきゃって思うんだよね。食べさせていくのが自分だけじゃあないと思うと」

守るべきものがいるということが、こんなに僕の人生を変えるとは思っていなかった。

だけどそれとは別に、僕は今すぐ世界を捨ててセレスティア大陸の外に身投げしてしまいたい気分でもあるんだ。

アスセナがディスクレイト憑きになったなんて。


仕事場では今日もアズッロ隊長がジンを飲みながら仕事をしている。

「つまみもってこい、つまみ」

「何がいいですか?」

「馬肉の燻製」

棚から馬肉の燻製を取り出し、スライスして皿にならべてからアズッロ隊長の前に出した。彼はそれをフォークで一枚ずつ食べながら、言った。

「最近元気ないのね、ピサロくん」

「ええまあ」

「そんなに強く殴ったつもりなかったのになあ」

「殴られたからじゃあないです」

僕がうつ向きながらそう言うと、彼は顔を上げることなく、こう言った。

「いいかね、ピサロくん。いつの時代も、生き残るのは臆病者と裏切り者なんだよ」

いきなり何を言い出す気だろうか。またこの後に及んで、僕のことを臆病者で裏切り者だとでも言う気だろうか。

「お前は臆病者だ。俺の顔色ばかりを見て、俺の気に入らない行動はとらないようにしている」

「そうですね」

「きっと今までの人生もそういうこそこそした生き方したんだろうな」

「はい、そのとおりです」

「俺はお前みたいな部下は出世しないと思っている」

「出世する気もありません」

「だから俺の下で、一生働け」

「イエッサー サー・アズッロ」

僕はおどけて敬礼の真似をした。僕は道化でもいいんだ。

ところが最後にアズッロ隊長はもう一度こう言った。

「一生俺の下で働けよ?」

それって……僕のこと気に入ってるってことじゃあないよね。こんなサドな隊長に気に入られても僕はマゾヒストではないのだけれども。

「できれば出世したいです」

「俺が給料上げない限り無理だな」

アズッロ隊長は笑ってまた仕事に戻った。


僕はアズッロ隊長に植物園の資料をとってくるように言われて資料室に行ったついで、こっそりその資料を覗き見した。

だけどそこにはアスセナがディスクレイト憑きになったなんて資料はどこにもなく、アズッロ隊長はこのことを上には報告していないのがわかった。

できることなら、僕だって信じたくない事実。

だけどヨシュアはアズッロ隊長がそう言ったって言った。彼の言うことは9割当たるのも事実。

「くふふふふふ…」

僕は狂ったように、何が面白いのかも分からぬまま、含み笑いをした。

世界なんて滅びちゃえばいいのに。


仕事場に戻ると、アズッロ隊長は煙草に火をつけながら、僕を見た。

「俺はお前は俺を裏切らないと信じている」

部屋には他に誰もいなかった。僕とアズッロ隊長は向き合って、そして彼はこう言った。

「ディスクレイト憑きを殺すと決めた」

「………」

「お前が殺すんだ」

なんという僥倖。僕はアスセナを殺す仕事を任されるんだ。


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