第5話 暴走
「ありがとうございます、ミラさん。ジャックさん。
見ず知らずのボクを助けていただいて。
…それに、友達だなんて」
タマは少し照れながら、小さく頭を下げた。
「ほんの少しですけど…希望が持てました」
「えへへ! 友達だもん! オタガイサマだよ!」
意味を分かって言っているのかは、怪しいところだ。
ジャックは小さく息をつき、話を切り替える。
「と、とにかく…住む場所を探さないといけないわ。
ここにいるのはみんなあなたと同じ境遇よ。
だから、心配しなくても大丈夫」
「はい…! ありがとうございます!」
「とりあえず、町に行きましょう。みんなきっと助けになってくれるわ」
タマもだいぶ回復したのか、ジャックの手を借りて立ち上がる。
⸺そのとき。
ぐうぅ〜
「…あっ」
ミラが、きょとんとした顔でお腹を押さえた。
「安心したら、お腹減っちゃった」
えへへ、と笑う。
一瞬の沈黙のあと⸺
タマが、ふっと吹き出した。
それにつられて、ジャックも小さく笑う。
張りつめていた空気が、ゆっくりとほどけていった。
「それにしても、ホントにお腹が減ったなぁ」
⸺ミラの様子が、どこかおかしい。
「うん…お腹空いた…。すっっっごく、お腹空いた」
さっきまでの和やかな空気が、すっと冷える。
ジャックの表情が強張った。
「まずい…」
タマは、まだ状況を掴めていない。
ジャックの肩が、わなわなと震えだす。
「う、うそ…そ、そんな…!
あんなにいっぱい食べさせたのに…!!」
「ねぇ、ジャックちゃん…」
ミラが、ゆっくりと顔を上げる。
「アタシ⸺お肉が食べたいなぁ?」
その瞳が、じわりと紅く染まる。
ゆらり、と。
空気ごと、揺らぐ。
⸺次の瞬間。
叩きつけられたような衝撃とともに、ミラの足元が陥没した。
圧縮された空気が、一気に解き放たれる。
「いやっ! ダメっ! ミラ! ダメよ!!
気を強く持って!! ミラーーーっ!!!」
吹き荒れる衝撃に、ジャックとタマは思わず地面にしがみつく。
砂と土が巻き上がり、視界が揺れる。
⸺さっきまでそこにいたミラはもういない。
そこにいるのは。
自我を無くし、ただ飢えた一匹の獣だった。




