第4話 友達になろうよ
「喚ばれた…って、どういうことですか…?」
意識もだいぶはっきりしてきたのか、少年は上半身を起こし、ジャックを見た。
「私にも分からないわ」
ジャックはわずかに視線を逸らす。
「この世界を形作る、大いなる大樹の気まぐれ⸺そうとしか言いようがないの」
少年の顔が、みるみるうちに強張っていく。
「な、なら…! 元の世界には戻れるんですよね?!」
「それは…」
言葉が続かない。
ほんの一瞬の沈黙。
⸺それだけで十分だった。
「あ…あぁ…」
少年は頭を抱える。
震える指先が、髪に食い込んでいく。
⸺この瞬間は、何度経験しても慣れない。
ジャックはそう思う。
けれど。
遅かれ早かれ、知ることになるのだ。
ならば、せめて早い方がいい。
そう自分に言い聞かせるしかなかった。
「大丈夫だよ! ここでの暮らしも楽しいよ?」
⸺場違いなほど明るい声が、空気を裂いた。
ミラだった。
「無責任なこと言わないでくださいよ…」
少年は顔を伏せたまま、かすれた声で言う。
「誰も知らないこんな世界で、どう生きていけって言うんですか…」
「えっと、じゃあね…。こんにちは!」
ミラはまるで気にした様子もなく、ぱっと顔を明るくした。
「アタシ、アルミラージのミラ! お名前は?」
「えっ…? ぼ、ボクは玉兎です。ウサギの玉兎。」
「ぎょくと…?」
「えっと、玉に兎と書いて⸺玉兎、です」
「じゃあ〜…タマちゃんね!」
ミラは満面の笑みを浮かべる。
「これからよろしく! タマちゃん!」
「は、はぁ…」
差し出された手に、反射的に応じてしまう。
「そんで、こっちはジャックちゃん! …ジャッカロープだったっけ?」
「ちょっとミラ…!」
小さく抗議しつつ、ジャックは軽く頭を下げた。
「あ、え、えっと…。ジャッカロープのジャックです。よろしく…」
「ほら!」
ミラはタマの手をぶんぶんと振る。
「これで誰も知らなくなくなったでしょ?」
「…え?」
「タマちゃんも、この世界の⸺アタシのお友達!」
にっこりと笑うミラ。
その無邪気な笑顔に、
玉兎⸺タマの表情から、ほんの少しだけ緊張がほどけた。




