第3話 出会い
来訪者と思しき存在は、ほどなく見つかった。
海岸に打ち上げられていたのは、二人と同じくウサギの耳を持つ、小柄な少年。
ミラは彼を軽々と担ぎ上げ、葉を敷いた簡易の寝床へと寝かせる。
呼吸はある。
外傷も見当たらない。
ひとまず、命に別状はなさそうだった。
純白の絹糸のような柔らかな髪は、海水に濡れて淡く光り、
長いまつげが、その性別の輪郭を曖昧にしている。
まだ意識は戻らない。
それでも⸺美しい、と言って差し支えない顔立ちだった。
葉を集めひと仕事終えたジャックは、近くの倒木に腰を下ろす。
途中からおんぶに変えてもらったとはいえ、荒い運転に酔ってまだ体調が優れないのだ。
二人は様子を伺うように、少年の目覚めを待っていた。
ミラは落ち着きなく、そわそわと辺りをうろうろしている。
「ジャックちゃん、ジャックちゃん!
どんな子なんだろうね?」
「同じウサギ同士だし、話は通じると思うけど…どうだろうね」
⸺もっとも。
言葉が通じることと、話が通じることは別だ。
この世界では、どんな幻獣であっても、人の姿を取った時点で言葉は共有される。
だがそれでも、意思の疎通が成り立つとは限らない。
実際、凶暴化して襲ってくる例もないわけではない。
「えへへ〜! お友達になれると良いなぁ〜!」
相変わらずミラはお気楽だった。
「う、うぅん…」
少年は眩しそうに目を瞬かせる。
まだ焦点の合わない視線のまま、かすれた声を絞り出した。
「ここは…ボクは、一体…。君たちは…?」
少年は上半身を起こし、見慣れない景色を探るように周囲を見渡した。
「…まず、意識が戻ってよかったわ」
ジャックは、できるだけ落ち着いた声で言う。
「私たちは、海岸で倒れていたあなたを見つけて、ここまで運んだのよ」
「かい、がん…?」
少年の表情がわずかに曇る。
「混乱するのも無理はないけど…これが事実よ」
一度言葉を選び、続けた。
「あなたが元いた場所や、誰といたのかはわからない。
でも⸺ここは、あなたのいた世界じゃない」
「……え?」
ひと呼吸置き、彼に告げた。
「あなたは、この世界に喚ばれてしまったのよ」




