表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人の姿になった幻獣達が、不思議な世界で仲良くワイワイする話  作者: 土鳩
第1章 求めよ!さらば与えられん!
13/14

第13話 お家に帰ろう


しばし、奇妙な沈黙が流れる。

その間も二人は黙々と作業を進めていた。


海の方角から流れてくる潮風だけが、静かに吹き抜け、

森の木々は、何事もなかったかのように穏やかに揺れている。


そうして二人は、腰の高さ程度に掘った穴にタマだったものを入れ、静かに土を被せた。


「まさか、こんな犯罪まがいの経験をするなんて、思ってもみなかったわ…」


一仕事終えたジャックは、シャベルに顎を乗せ、大きくため息をつく。


そのままにしておくわけにもいかず、結局、証拠隠滅のように埋めることになったのだ。

もっとも、被害者が生きているこの状況、何の証拠なのかは不明なのだが。


「まぁまぁ。穴掘りは、ボクらウサギの専売特許じゃないですか」


悪びれる様子もなく笑うタマに、ジャックは再び深いため息をついた。


気づけば、辺りはすっかり暗くなっている。


ミラは疲れ切ってしまったのか、近くの木の根元で静かに寝息を立てていた。


「…正直、もうアンタとは今後いっさい関わりたくないんだけど」


ジャックは疲れた声で続ける。


「放っておいたら何をしでかすか分からなくて怖いし…。明日、町まで案内してあげるから。住む場所と仕事、探して…」


「ホントですか! ありがとうございます! 助かります!」


タマはぱっと表情を明るくし、ぺこりと頭を下げた。


「正直、知らない世界にいきなり放り出されて、はいさようなら、はさすがに心細いですからね…」


心底ほっとしたように笑う。


⸺調子が狂う。


このウサギ、あの異常行動さえなければ、礼儀正しく真面目な少年としか思えないのだ。


「…とりあえず、今日はもう遅いし…仕方ないから泊めてあげる」


そう言ったあと、ジャックは勢いよく顔を上げた。


「けど!! ミラには絶対近づかないで! 二階にも上がらないで! 床で寝て!!」


ミラには、本当に近づいてほしくなかった。

もう一切、関わってほしくない。


確かに、暴走を止めてくれた恩はある。

けれど、それとこれとは話が別だ。


あんな光景を見せられて、平気でいられるわけがない。


とにかくもう、二人を関わらせたくない。


そんな気持ちばかりが、ジャックの胸の中で渦巻いていた。


「大丈夫です。もう、十分ご迷惑をお掛けしてますから。」


タマは落ち着いた様子で答える。


「ボクみたいな余所者、泊めていただけるだけでありがたいですよ」


そして、丁寧に頭を下げた。


「何から何まで…ありがとうございます、ジャックさん」


月明かりに照らされた純白の髪が、淡くきらきらと光る。


「この世界に来て⸺最初に会ったのが、あなたで良かった」


⸺あぁ、調子が狂う。

なんなんだ、コイツは。


ただ、多分。

彼の中で迷惑に含まれているのは、この世界に来てからの騒動だけなのだろう。


…あの惨劇の事は、綺麗さっぱり抜け落ちている気がする。


「…私、もう、疲れた…」


ジャックは感情の高低差に頭を抱えたまま、長い道のりを帰るべく、ふらふらとミラを起こしに向かった。








⸺血と土にまみれた奇妙な三人は、重い足取りで森を進む。


夜の森は、不気味なほど静かで、

響くのは、土を踏みしめる音と、荒い息遣いだけ。



一人は、疲労の中で明日を思い憂い。


一人は、微睡みの夢の中に業を宿し。


一人は、新たな世界に不安と希望を抱く。



ほんの少し欠けた月は、ただ静かに。

⸺ただ静かに、三人を照らしているのでありました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ