第12話 黄昏来たりて
ミラとタマ。
二人のあいだに、どこか現実離れした時間が流れる。
ロマンティックとさえ言えてしまいそうなその空気。
それは運命か、奇跡か、あるいは必然か⸺
「ちょ、ちょっと待って!待って待って待って!!!!!」
その空気を壊したのは、叫び声にも似た声だった。
ずっと置いてけぼりにされていたジャックは、半ば無理やり自分を奮い立たせるように立ち上がり、
大きく息を吸ったり吐いたりしながら、二人に対して声を上げる。
「な、なんなの…なんなのなんなの!!
もう…もう!私、全ッ然分かんないんだけど!!!」
その必死の叫びに、タマは一瞬きょとんとした顔を見せた後、瞬間ぱっと表情を明るくする。
「ジャックさん!大丈夫ですよ!
安心してください!ボクはこの通り無事です!」
くるり、とタマが軽やかに一回転してみせる。
「違う!いや違くないけど!!
じゃああれ!あれは何なのよ!?」
ジャックは、切り株の上に転がる肉塊を指差した。
「ボクです!」
「ちがーーーーーーう!!!!」
もう限界といった状態のジャックは頭を抱え、ぶんぶんと首を振った。
混乱するジャックを時間を掛けて落ち着かせ、タマが裸である事に気付きまたひと悶着あった後。
薄暗い中、ジャックとタマの二人は、海辺の倉庫から拝借した大型のシャベルで地面を掘っていた。
「それじゃ、タマは月に住むウサギで、不老不死の存在だってこと?」
不老不死、と言われても、なんら驚きはしない。
この世界にはそのような存在は結構居るからだ。
同じく倉庫から拝借した布をまとったタマが答える。
「まぁ、月に住んでいた。っていうのが正しいんですけどね?ボク、追い出されちゃったんで。」
「なんでよ」
「昔、ただのウサギだった頃、老人を助けた功労で月に迎えられはしたんですけど、色々とやらかしましてねぇ」
ははは!と爽やかに笑う。
…嫌な予感がするのでそれ以上は踏み込まない事にした。
「本当は死んだあと、ボクの魂は月に登る筈なんですけど、拒絶されて落っこちちゃうんです。それはこの世界でも同じみたいですね。」
ミラはあの光の光景を思い出していた。
たしかに途中で砕けて落ちてたなぁと。
「じゃあ、今のあんたはどこから来たのよ。落ちた魂はどうなるのよ。」
「大地に落ちて新しいボクがそこから生えます」
…頭が痛くなってきた。
理解できない事を聞くのは止めよう。
「それで、食べられる事に興奮を感じる異常者、と」
「心外な!!極めて尊い行為なのに!!」
タマは信じられない、といった顔でジャックを見る。
「…言葉は通じている筈なのに、ここまで話が理解できないのは想定外だわ…」
ジャックは考えるのをやめた。




