第11話 置いてけぼり
⸺炎に身を投じたウサギは、その身を焼かれ、やがて一塊の肉となりました。
それを見た老人と動物たちは、彼の自己犠牲に深く心を打たれ、涙しながら、その命を無駄にはすまいと口にします。
⸺その一部始終を、天より見つめる存在がおりました。
やがて、空より柔らかな光が降りそそぎます。
それは静かにウサギの亡骸を包み込み⸺
焼かれたその体は、まるで時を巻き戻すかのように、元の姿へと戻っていきました。
『このウサギは、自らに差し出すものが何もないと知りながら、その身をもってもてなしとした』
『かかる行いは、まことに慈悲深く、尊ぶべきものである』
⸺そうして、そのウサギは月へ登り、悠久の時を過ごす存在となったといいます。
そのウサギの名は⸺
能天気なのか、物騒なのか。
目の前で交わされる会話に、ジャックはただ口をぱくぱくとさせるしかなかった。
(なに…? なんなの、この状況…!)
死んだはずのタマが、生きている?
では⸺あそこに横たわっている、あの肉塊は何だというのか。
思考が追いつかない。
ぐらり、と視界が揺れる。
(そもそもタマは…タマは何者なの…?)
「ミラさん!あぁミラさん!
ボクは今、猛烈に感動しています!」
タマは膝をつき、まだ座り込んでいるミラの両手を取ると、興奮した様子でぶんぶんと振った。
「まさか、食べていただいた方の口から!
ボクを食べてくれたその口から!
『おいしかった』という言葉が聞けるだなんて!」
いっそう手に力がこもる。
「ボクはもう!感無量です!」
きらきらとした目で、ぐっと身を乗り出す。
「ボクの、どこが一番おいしかったですか?
レッグ? ロース? ショルダー? バラ?
それとも内蔵系ですか?レバー? キドニー?」
そう言いながら、タマは自分の身体を次々と指差していく。
「あれ?」
ミラが小さく首を傾げる。
「⸺アタシ、タマちゃんを食べたの?」
その一言で、空気がわずかに張りつめた。
⸺もっとも、そう感じたのは、ジャックだけだったのだが。
「あぁ、そっかぁ〜」
ミラは間の抜けた声で、どこか納得したように頷ずき⸺
「だから、タマちゃんが迎えに来てくれたんだね?」
ニッコリと笑った。




