鍵
ドガァンッ!
オロチの鋭い尻尾が教室の壁を崩し、ハルトの怪鳥と激しい衝撃波を散らす。
「ハッキングの反応を追ってきて正解だったわね。……あんた、あのテロを実行したハッカーの手先でしょ」
シズクは鋭い眼光でハルトを見据えながら、言い放つ。
しかし、数人のアイブを取り込んだ怪鳥のパワーは凄まじく、爪の一撃がオロチの鱗を削り、じわじわとシズク側を押し込み始めていた。
「無駄だ。適合率の低いアイブでは、強化された我が個体には勝てない」
無機質に言い捨てるハルトに対し、シズクはニッと不敵に唇を吊り上げた。
「適合率? ふん、笑わせないで。――見せてあげるわ、これが『鍵』の本当の使い方よ!」
シズクが右手を天に掲げると、その手のひらに眩い青白い光の粒子が集束していく。
光が収まった時、彼女の手には重厚で複雑な装飾が施された一本の実体化した【鍵】が握られていた。
「オロチ、コード・アンロック!」
シズクの呼びかけに応じ、蛇型アイブ・オロチの額に怪しく輝く【鍵穴】のシステムマークが浮かび上がる。
シズクは躊躇なくその鍵穴へと手中の鍵を突き立て、深く――カチリ、と回した。
『――AUTHENTICATION COMPLETE(認証完了)。プロテクト解錠――』
ゴオオオッ!!
オロチの体内から溢れ出す圧倒的な光と高密度のデータ波が、教室中の空気を揺らす。
鈍色だった鱗は漆黒の金剛装甲へと変わり、背からは輝く光の翼が展開されていく。ただの蛇だったアイブが、まるで神話に登場する『機甲双頭龍』のような威容へと変貌を遂げたのだ。
「な……に……!?」
呆然とするユウシンの横で、ハルトの顔色が劇的に変わった。
これまで人間味を一切捨てたように冷徹だったハルトの表情が、一瞬で激しい動揺と屈辱、そしてドロドロとした怒りに歪む。
「なぜだ……! なぜお前が『鍵』を持っている!? 僕が……僕がどれだけ探しても見つからなかった『鍵』を、なぜお前なんかが手にしているんだ!!」
教壇を激しく叩きつけ、血走った目でシズクを睨みつけるハルト。
ハルト自身もハッカーの命令で、そして何より己の欲望のためにずっと「鍵」を捜索していたのだ。目の前でいとも簡単に「鍵」を使いこなし、圧倒的な力を解放してみせたシズクに対し、抑えきれない嫉妬と憎悪が爆発する。
「お前みたいな奴が持っていい力じゃない! よこせ……その『鍵』を僕に渡せぇぇっ!!」
「必死ね。でも――覚醒(解錠)もできない偽物の鍵使いに、渡す筋合いなんてないわ!」
シズクの冷然とした一閃とともに、覚醒したオロチが残像を残すほどの超高速で疾走。
嫉妬に狂うハルトの怪鳥を、圧倒的な破壊力で一撃のもとに粉砕した――!




