吸収
「ひっ……嫌だ、来ないで――!」
クラスメイトの悲鳴も虚しく、ハルトの巨大なアサルト・バードが放った鉄の羽が、小竜型アイブの胴体を貫いた。
スパークとともにアイブが霧状のデータへと崩壊する。
すると、アサルト・バードの鋭い嘴がそのノイズを吸い込み――直後、怪鳥の翼が一回り大きく、より禍々しい黒鉄色へと変貌を遂げた。
「捕食……!? アイブが、他のアイブを取り込んでる……!?」
タケシがガタガタと震える声で叫ぶ。
ハルトのアイブは数人のアイブを瞬く間に撃破し、そのデータを取り込むたびに爪を鋭くし、翼を広げ、異形としての威容を増していく。
だが、当のハルトの瞳には歓喜も虐殺の快楽すらなかった。
虚ろな目で教壇から教室全体を見回し、何かを探すように淡々と呟く。
「不適合。……『鍵』を保持するコードではない。次――」
(鍵……? あいつ、何かを探してるのか……!?)
ユウシンは冷や汗を流しながら、腕の中で震えるマロンを強く抱きしめた。
マロンの背中には、朝現れたあの『黒い南京錠』のマークが刻まれている。
(まさか、ハルトの目的は……マロンなのか……!?)
強烈なプレッシャーと恐怖に金縛りとなり、ユウシンが呆然と立ち尽くした、その時。
バリィィィンッ!!
不気味な電子障壁で封鎖されていた教室のリアドアが、内側へ向かって派手に粉砕された。
「――そこまでよ」
煙が巻き起こる入口に立っていたのは、見覚えのない制服を着た一人の少女だった。
凛とした強い瞳をした少女――シズク。
彼女の肩から滑り降りるように姿を現したのは、鈍色の鱗を怪しく光らせる巨大な蛇型アイブだった。
「チッ……外部からの干渉者か」
ハルトが初めて眉を潜めると同時に、さらに巨大化したアサルト・バードが超音速の突きを放つ。
「行け、オロチ!」
シズクの凛然とした声に応じ、蛇型アイブ『オロチ』が疾走した。
しなやかな巨躯で鉄の羽の連撃を間一髪で滑り避け、アサルト・バードの首元へ向かって鋭い牙を突き立てる!
ドガンッ!!
衝撃波が教室の机や椅子を吹き飛ばす。
数人のアイブを取り込んで強化されたハルトの怪鳥と、シズクの蛇型アイブ。
互いの牙と爪が激しく激突し、互角の火花を散らした――!




