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絶望の連鎖② ― 吊るされた餡子

◇◇◇

 

 【薄闇の大書庫】

 

 うむむ。もうちょい右……いや左?


 落ち着いたディテールに、暗めの配色。しかしあちこちに誰かが暴れたようなあとがあり、人が去り幽霊が住まう忘れ去られた屋敷。

 

 一度は漫画で見たようなこのホール、好きなやつはきっと好きだろう。

 

 そして!今僕がやってるのは壺の置く場所。

 この絶妙に部屋の雰囲気をよくしてくれるこいつをどこに置こうか。


 ペロッと舌を出し、片目で位置を整える。


「うわっ」


 その時肩に何が乗っかる。

 バサバサと翼を伸ばし、視界には無数の羽が舞った。


 もうすぐイベントなのに何やってんだと言うように爪に力が入る。

 

「ロウか。なんだよぶっ――」

 そちらの方を向くとあったのはフクロウの体。


 あっ、いいもふもふ。


 しかし話ができなくなるので、肩から下ろす。


 じろりとこちらを向くその目に少し焦る。

「僕はこういう所に力入れたいの!そういう性分なの!それにすぐ誰かがここまでこれる訳ではないじゃん」


 ナイト・ホクロウの遊び場であるこのフィールドは“ナイト・ホクロウ”を楽しませるギミックが詰め込まれている。


 エリアが入れ替わり立ち替わり、ボス部屋の周りを回るように周回する。

 運が良ければ一発で、悪ければ終わるまで僕に会えない。



 端的に言えば、暇。


「へへ、プレイヤーが来るまで推しについて語ろうか」


 胡座をかき、その上にロウをのせる。

 この最高にもふもふな質感はルナオンにしか出せねぇぜ。


 そう宙に浮き、伸びをした時。


 

 コツン


「こんにちは!」


「?!」

 

 体が驚きで数回転し、壁にぶつかる。


「は、はあ?なんでプレイヤーがいるわけ?」


 砂埃がまう中手すりから顔をひょこっとだす。


「きゃー!あなたがあのナイト・ホクロウ?めっちゃ可愛い見た目してんじゃーん」


 そこに居たのは金の髪をサイドテールに結び、装飾をあちこちに付けまくる、

 あまりに、あの……ギャルって感じの女の人。

 

 しかし、まだステージの周期的に直でここにたどり着くことはないはず。

 どういうことだ?


 僕は影でウィンドウを開き、ステージがどこにあるか確認する……が。


「なにこれ、全部ぐちゃぐちゃになってる」


 そこに映ったのは太陽系のようにボス部屋を中心に綺麗に回っていたステージ達が、

 その道筋を見失い、激しく暴れまわっている様子だった。


 するとまた下から声が投げかけられる。

「ここのフィールドすごいわ。あれだけの種類のステージを綺麗に噛み合うように回してんだもん。これ作った運営にはマジ尊敬の意って感じ」

 

 と言うと彼女はスマホのようなものを仰向けにこちらに向ける。


「瞬間移動貰っとけばよかったかなぁ。ここに来るためにあの綺麗な周期、こわしちゃったもん」


 僕は立ち上がり、顔を出す。

 

 その言葉に……色んな感情を混ぜ込められた。

「おねーさん、自分が言ってる事の意味わかってるの?」


「ええ。ナイト・ホクロウちゃん」


 ニヤリと嫌な笑みをこちらに向ける。

 

 それを見た瞬間全身が悪寒に襲われた。

 可愛いアバターであるのに、ここまで気持ち悪いと思えることがあるだろうか。


 あれが……あれがてるてるだったら。

 いや、てるてるならあんなねっとりとした声など発さない。

 てるてるなら……きっと武器をこちらに向け、挑戦的な目をするだろう。


 心の底から腹が立つ。

 

「お前、何してくれちゃってんの?」


「あは!怒らせちゃった!」


 さっさと倒そう。


 手を挙げ、手すりに思いっきり下ろす。ホール全体に響いたその音は合図。

 壁は裂け、大量の銃が顔をだす。


 しかし、それでも奴は、その笑顔を崩さなかった。


 それを憎たらしそうに目を細める。

 心のもやもやが取れない。

 ダメだな。


 今の僕は可愛い可愛いナイト・ホクロウなのに


 僕は間髪入れずに攻撃を開始した。


 壁の穴から銃弾が放たれる。狙いは一点ただ一人。

 しかしその照準は動くことがない。それは奴が動かなかったことを意味する。


 そう。動かなかった。


 普通なら、致死量の銃弾を打ち込み、攻撃を止める。

 だが、奴はまだ立っていた。

 

 それもピンピンしてね。


 ああ、わかった。こいつ、チーターかよ。


 ルナオン最初期に大量発生したチーター。

 そして、てるてるが大嫌いと言っていた、あの。


「お前、嫌い」


「嫌だなぁ。やりようはあるっしょ!例えば……」

 そういうと奴は下を指さす。


「わかってるくせに」

 そう。床に穴を開ければいい。


 だが、ダメだ。

 ステージがバラバラに暴れているから。


 今まで下にステージが無かったから下に落としていた。


 が、それぞれのステージの判定は広いから今は平気で拾われる可能性がある。


 というか、それ以前に

「床、開かないんだけど」


「クスッ。なんでだろうね?」


 カチン

 

 はあああああ。なんで僕のとこにこんな奴が来た??クソだるいんだけど???

 

「ねーもう帰ってくれない?お前と話すのものすっごい疲れる」


「ええーん。やだよ?もっとおねーさんと遊ぼ?」


 そういうと奴は仰向けにしていたスマホを指でスライドし、電撃が生まれた。


「は?」


 こっちに来る。そう思った反射で、透明になりその場から離れる。


「意味ないよ?」


 電撃は気持ち悪い角度に曲がり、


 僕の方にやってきた


「……がっ」


 その攻撃をもろに受ける。

 電撃のスタンで体が動かない。

 ダメだ。これもチートの一つだ。


 コツン


 靴の音が近づいてくる。

 倒れた僕の方へ。一歩ずつ。


「君に雷属性の体制がなくてよかった!あれもほかのやつに取られたからねー。弱体化受けて防御もペラペラ。一発でやれるとか攻撃に振りすぎっしょwww」


 僕は視線を上げた。奴はもうすぐそこにいた。

 その目だけが光り、あとは影で隠れる。


「えへへ。せっかくだし可愛くしたげる!」

 

「はーー?僕に何するつもりだよーー!




 やめろおおーーーーーー!!!!」




 そうして僕は……


 ピンクの大きなリボンに両腕ごと胴体を縛られ、天井から吊るされた。


「……ねちょっと!これどういう扱い?!」


「きゃー!めちゃかわだよ!」


 そういうと奴は手にもつスマホでぶら下がる僕をぱしゃぱしゃと取り始めた。


「へへ。もうすぐプレイヤーがなだれ込んで来るよ。楽しみだね」


 こいつ……僕を見せ物にするつもりなのか?


 ………………。



 

 どこまで、俺をコケにするんだ。


「誰か……」

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