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絶望の連鎖① ― 砂塵に消える絆


 イベント開始直後


 

 【砂塵の古闘場】


 う、うーん困った。まさかこんなことが起こるとか聞いてないんだが。


「さ、サソリさん……あれって」


 イベントが始まって、入ってきたプレイヤーが震えている。


 


「ねー、サンドスコーピオンさん!

 ボク、ファンなんだ!他の子なんて見ないで。ボクだけと遊んでよ」


 その体はバチバチと音を鳴らし、不安定にノイズが走る。

 と思ったら、目の前からその姿を消した。


 途端、空から広範囲に斬撃が飛び散る。

 ビリビリと電撃のようなものが俺だけでなく、他のプレイヤーにまで迫る。


「まずい」


 俺はしっぽを振り砂をフィールド全体に広げた。

 無駄に当たり判定のでかい砂利の集合体は、プレイヤーへの被害を防いだ。


 だが、


「ぐっ」


「サソリさん……!!」

 


 なぜか俺にはヒットした。



「あぁ。とぉっても強いボスが、ボクの攻撃で苦しんでいる……

 なんて、



 快・感……!」



 近くから気持ち悪い声が聞こえるのに、体が痺れて動けない。


 今度は自分がバチバチしていると。


 俺は痺れる自分の体を確認した。

 雷属性は効かないはず……

 

 もしかしてチートか?

 透明化はまだスキルとして存在はするが

 防御や耐性貫通……、いやまだあるな。


 前回はランキング1位に倒され、今回はチーターかよ。


 どうするべきか?


 クスクスと聞こえる笑い声に、痺れる体。

 困ったことにこの状況での対処法が、俺には分からない。

 

 はずだった。

 

「大丈夫ですかサソリさん!」

 

 痺れが消え、指がピクリと動く。

 俺は立ち上がり、関節を伸縮させる。


 動く……。

 振り返るとそこには、以前戦い方を教えたプレイヤーがいた。


「あの、何使えばいいかわからなくて、万能薬みたいなの使ったんですけど、動けますか?」


「お前……始めたてには貴重なものを」


「いえ!そんな――」



「はあああ?!?!お前何勝手なことしてくれてるわけ?!?!」


 前方から大きな怒声が飛んでくる。あそこにいるか。


「あーあー、もう余計なことしてくれちゃって。HP削るの大変じゃん。調節しなきゃいけないのに」


 は?調節?

 俺は急いでしっぽを振り上げた。


 しかし、腹あたりに蹴りが飛んでくる。


 その攻撃はあまりに強く、俺は遠くまで吹っ飛んだ。

 体は飛び跳ね、1本の柱にぶつかる。

 何より心配なのはそこに巻き込まれたプレイヤーはいないか。


 だが、それを確認させてくれる相手ではなかった。

 攻撃はあらゆる方向からやってきた。

 防御の体勢を取るが、ダメージは蓄積されていく。


 まるで計りで重さを図るがごとく、一度ドバっと入れて、その後調整する。


 目標を超えないように



 反撃できない


 こうなったら――


「まさか第二形態をとか思ってる?だめだめ。あれかっこよくないじゃん。一回見たけどー、今の方がイケメンだし笑」


 行ったはずの第二形態へのコマンドは実行されなかった。

 なんだよこいつ。そんなのありかよ……

 

 頭がフラフラしてくる。

 

 気づいたら、HPはもうミリとなっていた。


「もういいかな」

 また、どこかからそんなつぶやきが聞こえたその瞬間、


 俺の足元に魔法陣が現れ、結界が貼られた。

 周囲を覆うように、しかし、透明で外からも中からも見えるようになっていた。


「何のつもりかな?」


「まあまあ、ファンサービスだと思って」


 やつはふわりと姿を表した。


「ほら、みんなが見てるよ」

 

 その顔は

 

 本当に


 満足そうだ。


 

 俺はこの結界を指先で触れる。


 ザワッ


 うわ、なんだこれ。

 気持ち悪い感触、発動者があれだからか?


 まるでありとあらゆる要素が大量にごちゃごちゃ重なり合って、逆に穴が見えなくなっている。


 チートの結界か。


 俺は倒れるようにドサッと地面に座った。


 HPは削られ、外から中は見える。これは見世物にされたな。

 

 こりゃあ俺にはどうにもできん。

 育からの助けを待つしかねえ。あいつもさすがにそろそろ気づいてるだろうし


「あれ?諦めちゃうの?それでいいの?」


「んー。どうにもできなそうだし」

 結界は気持ち悪すぎてなんも出来ないし、第二形態はなぜかなれないし。


「は?つまんない。つまんないつまんないつまんない!なんかこう……ヒリヒリとした空気にならんわけ?なんでそんなにあっさりと。まじでつまんない」


 知るか。つまんない?それでよかったよ。


「あーなにかないか?なにかこいつが焦るような……なにか……」


「?」


 そう言い残し、こいつは急に黙り始めた。


 何を見てる?



 その視線の先を確認すると、


「え?なにあれ……」

「サンドスコーピオン?!なんであーなってんの?」

「サソリさん!頑張って!!」




 プレイヤーたちだった。


「お前……何する気だ?」


 そう言ってしまったのがまずかった。


 その言葉を聞いたこいつはグググとこちらを向き、歯茎を出してニヤリと笑った。


「おい!!!!」


 やつは地面を蹴ると、スピードを出し、プレイヤー達が固まる方へ飛んで行った



「おい!!やめろ!!!」


 俺が、憩いの場として作った闘技場が、やつの手によって本当の戦いの場となった。


 ダメだ……ダメだダメだダメだ。


 俺は結界を叩き、何とか出ようと試みる。しかし、第二形態どころかスキルや技すら出せなくなっていた。


 なんだよ、なんでだよ!


 あいつは、剣の振り方を教えたやつ……

 向こうのは、隙の取り方を教えて、

 あっちのは悩みの相談を受けて。


 そうして積み上げた絆を、あいつは潰していっている。


だが、ソーだけは隠れてくれたようだ。

俺の相棒で、本当のサソリのボス。


だが、彼だけだ。


 俺はフラフラと結界から離れる。

 目の前の光景が、ぐるぐると混ざりあっていく。

 

 ああ、またなのか……?

 結局俺は何も出来ない……?



「誰か、


 助けてくれ……」

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