高梨ここあ、騎士団の訓練を見に行きます
帝国の軍隊は3つに別れているそうだ
一つは帝国陸軍
帝国の領土は広いため、陸軍が主力となっている
2つは帝国海軍
首都ベルンを北へ進むと湾岸都市ミュルヘンと呼ばれる場所がある
ここは帝国の心臓部とも言える貿易を支える一大拠点だ
ミュルヘン近郊にブルーメンと呼ばれる小さな町があり、そこに巨大な海軍基地が鎮座している
世界最高峰とも言える海軍戦力を保有しているようだ
そして、3つ目が帝国騎士団
帝国が誇る英雄ウォルエン・ドュークブルク率いる少数精鋭の特殊部隊だ
こちらは数百人からなる小さな部隊だが、各分野に秀でた者だけど選抜して集めた
まさに精鋭中の精鋭だ
皇帝陛下の頼みは帝国騎士団の実力を見定めて欲しいということらしい
私が以前、ギルドの以来で軍学校の講師を受け持った事があり
その時の生徒が優秀すぎて軍人の見本のように見られているらしい
まぁ私が教えた生徒達なので当然といえば当然なのですが・・・
そういう事があった為か私に以来が回ってきた次第である
後日、私達は再びお城へと向かった
今日は騎士団が各地から集合して合同訓練があるらしい
門番に冒険者カードを見せると訓練場へと向かった
訓練場はとても広く全体を見渡せる場所も用意されている
私達が訓練場に入ると、兵士達が皆私達を注視している
ペスコはどう見ても小さな女の子だし、ラプターも華奢な体だ
とても武道は剣術をやっているようには見えない
そして、私も17歳の女の子だ、とても目立ってしまう
「ラプター、ペスコ、こちらで見学しましょうか」
壁際に観客席が設けられており、そこに私達3人は腰をかけた
訓練は剣術組 魔術師組に分かれている
今日はこの場所に200人ほど集まっているらしいので圧巻だ
「ここあよ、あれはダメじゃ魔術をまるで理解しとらん」
ペスコがダメ出ししだした
「あれが本当にこの国の精鋭か?まだ魔族の子供の方が魔獣を使いこなしておるぞ」
最近忘れがちだが、ペスコは魔族だ
しかも魔族の中でも魔術はトップクラスらしい
「剣技の方も児戯に等しいですね
あれが帝国が誇る騎士団だとはとても」
ラプターの剣術は一流だ
魔術も大体使いこなせる万能タイプ
あれラプターって実は優秀?
私がジト目でラプターを見ていると私の心情を無視して会話を続けた
「数名は見込みのある者がいますが、あの程度では束になっても
先日倒したカーグーンとかいう輩に勝てないでしょうね」
確かに、二人が言うように全体的に微妙に思える
魔術は分かりませんが剣術は皆動きも鈍く、剣撃も弱い
「如何ですかな、我が騎士団は」
身長は190cmはあるだろうか、筋骨隆々のマッチョな男が声をかけてきた
翌々見ると、この前皇帝陛下の隣に立っていた人だ、片膝を付けー!とか言って剣を向けてきた人だ
「先日はすまなかった、周りの手前私が言わなければ誰かが抗議していただろうからな
私は帝国騎士団団長ウォルエン・ドュークブルクだ、ウォルエンで構わない」
私は席から立ち、右手を出した
「こちらこそ、無作法者ですみませんでした、私は冒険者のここあと申します
そしてこちらがラプター、こちらがペスコになります」
理由があったとは言え私に剣を向けた相手だからだろうか、ラプターもペスコも態度が悪い
「それで、どうかな若干17歳で2級冒険者へと上り詰め、巷では真紅の乙女と言われ恐れられる
貴方から見て我が騎士団は」
以前にもチラっと聞いたけど真紅の乙女って何なの!?
私もう厨二病っていう年じゃないよ?17歳だよ?
二つ名なんて恥ずかしいですよ
「伝説と言われるウォルエン様にそのように言われるとむず痒いのですが
率直に言ってダメダメですね、先日サルビト連邦のカーグーンと呼ばれる部隊の一人と戦ったのですが」
私は訓練中の兵士に目をやる
「彼らがカーグーンと接敵していたら全滅は免れません」
騎士団長は両目をつむり暫く沈黙になる
流石に言い過ぎた?
「ここあ殿、私の事はウォルエンで結構、貴殿に様付で言われるのは居心地悪いのでな」
「なら、私の事もここあでお願いします」
「承知した、貴殿の率直な感想感謝する
ここあ殿・・・いや、ここあの指摘の通り騎士団は弱い
名目上精鋭を集めたと言われているが実情は貴族出身の兵士達だ
騎士団は戦争になっても主に帝都の護衛だ、めったに戦に駆り出されることはない
皇帝陛下も憂いておられる」
なるほど、戦になっても戦う心配がない
帝国陸軍は大陸最強だから敗れるはずもない
そう貴族達は思っているのですね
「そう悲観する事ないですよ」
私は訓練中の兵士を指差す
「あの子とか剣筋は荒いですが磨けば光りますよ
それに他にも物になりそうな人もいます」
騎士団長はにやりと笑った
「流石皇帝陛下がお認めになった冒険者だ
あいつは見込みがあるのでな、俺が直々に教えている
どうだ奴と手合わせしてみないか?」
私は顎に手を当てて考える
「んーーー、そうだ!」
閃いた
「今の子も含めて、剣術・魔術に秀でた者各5人ずつ呼んで下さい
模擬戦と称し、私と手合せてしてみましょう」
つまり剣士、魔術師のトップ5人ずつを集めて大体の能力を見てしまおうという作戦だ
そうすれば、全体の実力を把握できます
「貴殿は本当に面白い事を考える、承知した急いで集めよう」
騎士団長は中央に向かって大声を張り上げた
何やら10人分の名前を呼んでいる
一時、訓練は中止して私との模擬戦を見学させるようだ
「さて準備が出来たようですので向かいますね
ラプター、回復魔法の準備をしておいて下さい
仮にも兵士相手なら多少の怪我は仕方ないでしょう」
私は不敵に笑い、中央へと向かった
集められた生徒たちは怪訝な顔をしてこちらを見ている
剣士は5人共男だが、魔術師は3人は女だ
ヒソヒソ声で喋っているが私には聞こえる
「何だこの女、気でも触れたのか?」
「このチビ女が俺たちの相手か?冗談だろ?」
「かわいい・・・」
等と聞こえてくる
チビ女って私の事?言った人五体満足では帰らせない
「お前たちは我らが誇る騎士団の中でも精鋭だ
その精鋭を10人集めた理由は、お前たちの目の間に居る方と模擬戦をしてもらう
俺としては1対1で進めれば良いと言ったんだが、彼女の依頼によりお前たちは手段に戦ってもらう
10対1だ、何も問題はないな?」
兵士達から怒りのような者を感じる
それはそうだ、私のような17歳の少女が自分たち精鋭たる10人を同時に相手にする
舐められてると思っても当然だ
「騎士団長!貴方ともあろうというお方が、気でも触れましたか!
軍学校の生徒ではないのですよ!我らエリート部隊の相手がこんな女ですか!」
こんな女って言われた、傷つく
「口を慎めケニー、彼女は皇帝陛下の以来でここにいらしたんだ
彼女を愚弄することは皇帝陛下を愚弄すると同じと知れ」
「え、皇帝陛下がこんな女を・・・」
文句を付けた男はケニーと言うらしい
訓練を中止して観客席で休憩させられている兵士達にも同様が走っている
皇帝陛下の以来で私みたいな少女が騎士団と模擬戦?意味がわからないだろう
本当の以来は模擬戦では無いのだが、細かい説明はめんどうなのでまそういう事にしておこう
目線を観客席に向けると、ラプターが少しキレ気味だ、早く始めたほうが良いだろう
「さて、私は冒険者のここあと申します
皆さんは実戦形式で木刀じゃなくて真剣で魔術師の皆さんは杖を持って本気で打ち込んできて下さい
この訓練場は多少の衝撃には耐える作りと聞いてます
遠慮なく私を殺すつもりで掛かってきて下さい」
空気が変わった
騎士団とは言え中身は大半が貴族らしい
プライド高い彼らは私の挑発にとても乗りやすい
「さてと、皆さん準備は整いましたね
騎士団長、開始の合図をお願いします」
「うむ、お前たち彼女の言う通り本気で掛かれ
でないとお前たちは無事では済まないぞ」
そう言うと観客席に身を引き合図をした
「模擬戦開始!」




