エルドリアの灰
いく人もの村人が地面に倒れていた。
血は泥や砕けた葉と混ざり合い、動かぬ身体、かすかに震える身体、かろうじて生き延びた者たちの押し殺したうめき声が広場に残っている。ほんの数分前まで日常の風景だったその場所は、いまや戦場と化していた。
エルドリアは、過ちを決して許さない。
ナラはアドリアンの腕に、痛みを感じるほど強くしがみついていた。彼を心から信じたことはなかった。別の世界では、彼が冷酷な策を巡らせる姿を見てきた。むしろ悪役だと思っていたほどだ。
だが今、この生暖かい血の匂いが漂う中で、彼だけが唯一の「確かなもの」だった。
アドリアンは何も言わない。
胸をミノタウロスの角に貫かれた男を見つめる。男も、角の主も、すでに動かない。そこに皮肉も驚きもない。ただ一つの確信だけがあった。
この世界は警告ではない。
判決だ。
やがて村長が生存者たちの間から姿を現した。長身で屈強、無数の傷を刻み、擦り切れた毛皮をまとっている。ゆっくりと歩み寄り、両手を上げて儀式のような仕草を見せた。理解できない言葉をつぶやいているが、その響きは明確だった。
――承認。
アドリアンは目を細め、すべての動きを観察する。降伏か、歓迎か、それとも共に生き延びたことを示す儀礼か。
村長は倒れた者たちを指し、次に生き残った者たちを示した。弾丸はミノタウロスを貫き、尊敬を生んだ。
だが弾は無限ではない。
ナラは深く息を吐く。言葉は分からなくとも、意図は分かった。
共に戦った。
それで十分だった。
葬り、血を洗い流し、生き続ける。
それは想像以上に困難だった。
広場は重い沈黙に包まれる。血の金属臭が煙と湿った土、乾いた汗に混ざり、肌や衣服、そして記憶に染みつく。
村人たちは悲しみを押し殺し、機械のように働く。
叫びはない。
声を上げて泣く者もいない。
ただ呼吸し、続ける。
男たちは半数近くを失っていた。
これは葬儀ではない。
日常だった。
ナラの前には三人の遺体が並ぶ。共に発掘を続けてきた考古学者たちだ。冗談を言い合い、地図を巡って議論した仲間たち。
いまは、誰も息をしていない。
その向こうには四つの軍用布に覆われた遺体。護衛たち。
七人。
その数字が、焼き印のように胸に刻まれる。
「彼らは……ここで死ぬはずじゃなかった……」
アドリアンは弾倉を見つめていた。
弾薬。
時間。
確率。
「四百発だ」とモラレスが言う。
沈黙が落ちる。
アドリアンはナラに拳銃を差し出した。
「取れ」
「使い方なんて……」
「覚えろ」
冷たくも優しくもない、ただ現実的な声。
「撃つ覚悟のない相手には、絶対に向けるな」
ナラは銃を胸に抱く。
それは救いか、呪いか分からなかった。
やがて村人たちは動き始める。
老人、女、子ども。家を解体し、荷をまとめる。
避難ではない。
継承された記憶。
村長は森を指差し、彼らにも来いと示した。
もっと来る。
それは警告ではなく、経験だった。
「一緒に移動する」とアドリアンは命じる。「密集隊形。武器確認。離れるな」
列は森へ進む。
動揺する家畜。
沈黙する子ども。
槍を構える男たち。
「別の村があるの?」とナラ。
「いや」
アドリアンは暗い森を見つめる。
「死なない場所を、いくつも知っているだけだ」
背後で村は沈黙に沈み、やがて世界に呑み込まれるのを待っていた。




